くづ)” の例文
「へエ、それにしても、あの野郎は目を離せない野郎ですね。算盤そろばんずくで女の子を口説く野郎なんかは、男のくづみたいなもので」
これは二里ほどの山奥から海軍貯炭場へ石炭を運び出す車力の軌道であつた。道路には石炭くづがいつもこぼれ散らかつてゐた。
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
○シブガラミはあみはじめの方をきびすへあて、左右のわらを足頭あしくびへからみて作るなり。里俗わらくづのやはらかなるをシビといふ。
そして、筆は遲遲ちちとして進まず、意をたすやうな作は出來上らずに、いたづらにふえて行くのは苛苛いらいらと引き裂き捨てる原稿紙のくづばかりであつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
『さうか、だけど屹度きつとくづおなぐらゐはいつてたにちがひない』帽子屋ばうしや不平ふへいたら/″\で、『麺麭パン庖丁ナイフ其中そのなかんだナ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
天秤商人てんびんあきうどつてるのは大抵たいていくづばかりである。それでも勘次かんじやすいのをよろこんだ。かれわづかぜに幾度いくたび勘定かんぢやうしてわたした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
要するにすたれて放擲られた都會の生活のかす殘骸ざんがい………雨と風とに腐蝕ふしよくしたくづと切ツぱしとが、なほしもさびしい小汚こぎたないかげとなツて散亂ちらばツてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
見濟みすま大音だいおんあげくづはございませんか屑はございませんか/\と無闇むやみ呼習よびならつて居たりし處に近所の子供等是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ほそいけむりこそててゐるがのとしより は正直しやうじきで、それになにかをけつして無駄むだにしません。それで、パンくづ米粒こめつぶがよくすゞめらへのおあいそにもなつたのでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
惣兵衛ちやんは矢を削つてしまふと、前垂まへだれからあをい削りくづを、はらひ落しながら、ふと紙鳶に眼をとめた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
たか屋根やねは、森閑しんかんとして日中ひなか薄暗うすぐらなかに、ほの/″\とえる材木ざいもくからまたぱら/\と、ぱら/\と、其處そこともなく、のこぎりくづこぼれてちるのを、おもはずみゝましていた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といふのは、もとより、全國的代表移民の都會であるから、そのころの負けじ魂が、利かぬ氣のきつぷになつて殘つてゐるので、すべてがかんなくづのやうなものばかりではない。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
さちよなんか、もつとひどい。あの子は、もう世の中を、いちど失脚しちやつたのよ。くづよ。親孝行なんて、そんな立派なこと、とても、とても、できなくなつてしまつたの。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
「いゝえ、あとでこのけづりくづで酢をつくりますからな。」
かしはばやしの夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
たまくづ埴土はにのかたわれ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
さらさらと氷のくづ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
くわいのボロくづのやうに欄干にうづくまつて、最早息があらうとも覺えず、生命の最後の痙攣けいれんが、僅かにその四に殘るだけです。
○シブガラミはあみはじめの方をきびすへあて、左右のわらを足頭あしくびへからみて作るなり。里俗わらくづのやはらかなるをシビといふ。
『えゝ、つてゝよ』とあいちやんは小癪こしやくにもこたへて、『なかのやうなものがあるのは——それはみんくづですッて』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
買に出けれ共元來越後浪人二百石取の新藤市之丞なればくづはござい/\とよぶ事能はず何所までも無言にて緩々ゆる/\かご背負せおひ歩行事あるくことゆゑくづは少しも買得ず只侍士を見ては我身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども、或る夜は發作ほつさあへぎ迫る胸をおさへながら、私は口惜くやしさに涙ぐんだ。る日は書きつかへて机のまはりにむなしくたまつた原稿紙のくづを見詰めながら、深い疲れに呆然ばうぜんとなつてゐた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
たまくづ埴土はにのかたわれ。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
三倍五倍の利潤まうけで、金持や物好きな人間に賣り付けるのだから、拔荷扱ひは商人の風上にも置けねえ、くづのやうな人間だ
くづだなんてつては間違まちがひだ』と海龜うみがめひました、『くづみんうみなかあらながす。でも、なかにはのやうなものがある、理由わけは——』海龜うみがめあくびをして、それからつぶ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
廻りけるに或時神田紺屋町の裏長屋をまはりしが職人體しよくにんていの者五六人にて酒をのみる處へ例の通りていねいに口上をくづやで御座り升と云に職人は酒機嫌さけきげんにて屑屋さん下帶なげしかはねへか紙屑のかはりに鐵釘くぢら
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「蝋燭のくづが五、六本、あとはきりの薄板で拵へた、何んかの仕掛物と、——おや、おや? これはギヤマンの鏡の、水銀みづがねの剥げたのぢやありませんか」
「安ばくちと押借りと、女たらしを渡世とせいにして居るくづのやうな男ですが、そんな野郎に限つて男つ振りは好い」
「左樣日本の品ではない、——丁寧に扱つても、杉原紙すぎはらがみか奉書といふところだが、唐土もろこし渡來の唐紙を、くづでも何んでも惜し氣もなく使つてゐるのは不思議ぢや」
相手は四十五六の、型の如き親仁おやぢで、二布ふたの一枚に、肩にヒヨイと手拭を掛けた、女房のお虎は、平次の顏を横目でチラリと見たつきり、せつせと、くづを選つて居ります。
「人間のくづだよ、——俺の立てたすぢは先づ間違ひはあるまいと思ふ。このお調べは面白いぜ、八」
「お前は近頃どうかして居るよ、少しは言葉も愼しむが宜い、太夫の位でも入山形に二つ星でも、女第一番のくづは遊女ぢやないか、大家の嫁御寮と一緒にする奴があるものか」
清左衞門は古金買ひの金兵衞などを人間のくづのやうに思つて居る樣子です。
「車の上から拾つた、キラキラするくづだよ。これを何んだと思ふ、八」
男つ振りの好い人間から見ると醜男ぶをとこくづみたいに見えることでせう。
「面白かありません。あんなのは男のくづで」
「よく知つてゐるが、あれは人間のくづだ」
「男のくづ見たいなもので」