嫉妬やきもち)” の例文
だから堅いが堅いに立たぬのは男女の間柄、何事もありはしまいが、店の若い者がおかしく嫉妬やきもちをいうとか、出入の者がいやに難癖を
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「アア、わかった。お通さんは、あそこで武蔵様がよその女と、先刻からあんなことして話しているんで、嫉妬やきもちをやいているんだね」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねえあなたア、断わっておくけれどあたしとっても嫉妬やきもちやきなのよ、もしも浮気なんかしたら、とり殺すことよ、よくって、あなた」
ゆうれい貸屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「ハイ、今年こんねん取つて五十三歳、旦那様に三ツ上の婆アで御座います、決して新橋あたりへ行らつしやるなと嫉妬やきもちなどは焼きませんから」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「面白いな、観音様の前で夫婦の固めの盃をしよう。友吉兄哥あにいは仲人だ——観音様はまさか嫉妬やきもちなどはお焼きなさるまい」
あなた方はあまり深く人心を洞察どうさつしすぎるよ。あれは倉持がれていたのです。それにちがいはありません。そして嫉妬やきもちも男の方が焼いたのさ。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのうちでもオナリ婆さんの嫉妬やきもち振りは正気の沙汰とは思えない位で、乱暴にも一知が来た晩からマユミと同じ部屋に寝る事を絶対に許さなかった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「お前とはよく喧嘩をしたり、嫉妬やきもちを焼いたりしたもんだなア。あれっきりだんだんあんなことはなくなったねえ」
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
池上は嫉妬やきもちやきでした。そしてそのことは去年の秋の末に、池上にはじめて中洲の料亭へ連れ出されたその食事の席で、彼みずから打明けたことでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「何、旦那さん、癇癪持かんしゃくもちの、嫉妬やきもちやきで、ほうずもねえ逆気性のぼせしょうでね、おまけに、しつこい、いんしん不通だ。」
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これにてお拭きなされと介抱をなしけるに、友達の中なる嫉妬やきもちや見つけて、藤本は坊主のくせに女と話をして、嬉しさうに禮を言つたは可笑しいでは無いか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ただ彼女あれんまり嫉妬やきもちいて仕方しかたがございませんから、ツイ腹立はらだちまぎれに二つ三つあたまをどやしつけて、貴様きさまのようなやつはくたばってしまえと呶鳴どなりましたが
いえ、別に嫉妬やきもちを焼くわけではございませんが、正直のところ、まあそんな感じがないでもありません。
停車場の少女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とても持ちきれないから、と断ると、彼等のいわく、「いや、是非、之等のものを積んでラウペパ王の家の前を通って帰って下さい。屹度きっと、王が嫉妬やきもちをやくから。」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これは幾分かネーチュンその者が利益を沢山むさぼるというところから、多少嫉妬やきもち心で言う人もあるでしょうけれども、その言うところはとにかく適中して居ります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一対いっつい内裏雛だいりびなのような……と言い出すものがあると、いやそうでない、ああいう殿様に限って、奥方が醜女ぶおんな嫉妬やきもちが深くて、そのくせ、殿様の方で頭が上らなくて
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
剛情で我儘で浮気で嫉妬やきもちで其上に少々抜けてる醜面すべたを当てがつて懲らしてやるが好いのさ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
ただ、あいつが僕の所へ来た手紙の事で、嫉妬やきもちを焼いただけの事なんだ。が、その時僕はあの女の腹の底まで見えたような気がして、一度に嫌気いやきがさしてしまったじゃないか。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夫婦喧嘩は、始終の事で珍しくも無いが、殊更とりわけ此頃亭主が清元の稽古に往く師匠の延津のぶつ○とかいうひと可笑おかしいとかで盛に嫉妬やきもちを焼いては、揚句がヒステリーの発作で、痙攣ひきつける。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
ちんちろりんは随分な嫉妬やきもち焼きで雌がよその雄と談話はなしでもしてゐようものなら、いきなり相手を後脚あとあしで蹴飛ばすさうだが、薩摩者もこの点ではちんちろりんに劣らぬ道徳家である。
それも例年ならば、収穫後とりいれごの嫁取婿取の噂に、嫉妬やきもち交りの話の種は尽きぬのであるけれども、今年の様に作が悪くては、田畑が生命いのちの百姓村の悲さに、これぞと気の立つ話もない。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そう思わせて置いたらよい、———と云うのであって、彼女はその腹で彼と附合っていたのであるが、啓ちゃんが気が小さくて、嫉妬やきもちを焼くので、詰まらない誤解を受けるのも厭だから
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
国事おおやけに関する暗撃果合いや、新刀あらもの試し辻斬の類をかした土民人情の縺れから来る兇行の因に五つある。物盗ものとり、恐怖、貪慾、嫉妬やきもち、それから意趣返しと。伊兵衛の場合はあきらかに物盗ではない。
尼の嫉妬やきもちはその時代として前代未聞、宿の者もまた興をさましていた。
備前天一坊 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「私が暴れて打壊ぶちこわしたようなもんですの。あの人はまたどうして、あんなに気が多いでしょう。ちょいと何かいわれると、もう好い気になって一人で騒いでいるんですもの。その癖嫉妬やきもちやきなんですがね」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ハヽヽヽ、羨しいや、お蝶が嫉妬やきもちをやきはしないの?」
鏡地獄 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
いくかゝあ嫉妬やきもちくもんでも、あゝえもなあねえな」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あんたは嫉妬やきもちのために眼がくらんでいるのね
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それを師匠が嫉妬やきもちをやきまして、何も怪しい事も無いのにワク/\して、眼のふちへポツリと腫物できものが出来まして、それがれまして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一万二千石の大名が、たった一と目で所望したのも、奥方が必死の嫉妬やきもち陣を布いたのも、決して無理ではありません。
帰途かえりに電車の中でも、勢いその事ばかりが考えられたが、此度のお宮に就いては、悪戯いたずらじゃない嫉妬やきもちだ。洒落しゃれた唯の悪戯は長田のしそうなことではない。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
今日もチラと侍女こしもとに様子を聞くと、御方さまも、ここ四、五日新九郎さんがけえらねえため、ひどく嫉妬やきもちを起して不機嫌だそうだ。そう聞くと、こっちはひさし
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これにておきなされと介抱をなしけるに、友達の中なる嫉妬やきもちや見つけて、藤本は坊主のくせに女と話をして、うれしさうに礼を言つたは可笑をかしいでは無いか
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いえ、別に嫉妬やきもちを焼くわけではございませんが、正直のところ、まあそんな感じが無いでもありません。
だからこの時も姫草看護婦に対する疑いを、普通一般の嫉妬やきもちと混同するような気は毛頭起らなかった。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たいていはおとこ情婦おんなができて夫婦仲ふうふなかわるくなり、嫉妬やきもちのあまりその情婦おんなのろころす、とったのがおおいようで、たまにはわたくしところへもそんなのがまれることもあります。
金子かねを遣って旅籠屋はたごやを世話するとね、逗留とうりゅうをして帰らないから、旦那は不断女にかけると狂人きちがいのような嫉妬やきもちやきだし、相場師と云うのが博徒ばくちうちでね、命知らずの破落戸ならずものの子分は多し
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此反対な二人の莫迦ばか親密なかよしなのは、他の娘共から常に怪まれてゐた位で、また半分は嫉妬やきもち気味から、「那麽あんな阿婆摺あばずれと一緒にならねえ方がえす。」と、態々わざわざお定に忠告する者もあつた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「あれがそれ、駒井能登守様の奥方よ。どうだ、おれの言った通り素敵すてきなものではないか、醜婦ぶおんな嫉妬やきもちが深くて、うっかり女中にも手出しができないと言ったのは誰だ、ここへ出て来い」
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あたしは死んで仕舞ったら、この男にはよかろうが、あとに残る旦那が可哀想だという気がして来てね。どんな身の毛のよだつような男にしろ、嫉妬やきもちをあれほどかれるとあとに心が残るものさ」
老妓抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
嫉妬やきもち喧嘩の時などには、忌々いまいましげにそれが言い立てられた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
其の嫉妬やきもちの起った時結構な一首の歌がありますからお教え申します、「雲晴れぬ浅間の山の浅ましや人の心を見てこそまめ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ありゃ親分、人形同士が嫉妬やきもちを焼くんだ、その証拠には、小紫人形の側に居る男人形が、キッとやられますぜ」
妾がヤングに欺されているように思うのはソレアあんたの嫉妬やきもちよ……まあいいから黙ってお酒を飲みながら聞いていらっしゃい。あんたの気もちはよくわかっているんだから。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
羽織はをりたもとどろりてにくかりしを、あはせたる美登利みどりみかねてくれないきぬはんけちを取出とりいだし、これにておきなされと介抱かいほうをなしけるに、友達ともだちなかなる嫉妬やきもちつけて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その嫉妬やきもち喧嘩から仲間割れが出来て、おまんは全真を連れて何処へか立ち去るという。
「自信があります。その策というのは、郭汜の妻は、有名な嫉妬やきもちやきですから、その心理を用いて、彼の家庭からまず、反間の計を施すつもりです。おそらく失敗はあるまいと思います」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
優しいでの、今もそれ言う通り、あんまりあんたを可愛がるもんじゃから、わしうらやましいので、つい、それ嫉妬やきもちを焼いて、ほんに、貢さんの半分だけなと、わしを可愛がッてくれたらなと、の
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ、あんた、嫉妬やきもちやきなの」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
女房が旦那は何処かへ女か何か出来やしないかと思うと、これが嫉妬やきもちの玉子で、すると御亭主のする事なす事そう見えます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)