変遷へんせん)” の例文
旧字:變遷
さて、この立国立政府の公道を行わんとするに当り、平時にありてはしたる艱難かんなんもなしといえども、時勢じせい変遷へんせんしたがって国の盛衰せいすいなきを得ず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わずか数年の後、恋の満足をげてしまった二人の男女なんにょは、自分が質問する日本の衣服の、その後における流行の変遷へんせんさえ多くは語らなかった。
曇天 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それに反して、南宋百五十年の治世も、また元となり明と変遷へんせんし、大きな世乱はなぜかその後も同じような世転の過程をくりかえして来ている。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時代の変遷へんせんに会う毎に埋没まいぼつはいよいよ甚だしく、結句めいめいの迷いを散じもうひらくために、手近に見つかる知識をさえなくしてしまうのである。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
料理に使用される材料にしても、時代的な変遷へんせんおおいにあるであろう。今日の料理の堕落だらくは商業主義に独占されたからだと考えられる。家庭の料理は滅びる。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
それは日本の国語がまだ語格までも変るほどには変遷へんせんしていないということを指摘したにすぎなかった。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
しかし、金魚は、この喰べられもしない観賞魚は、幾分の変遷へんせんを、たった一つのか弱い美の力で切り抜けながら、どうなりこうなり自己完成の目的に近づいて来た。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
はかない、薄手うすでのさかずきが、こんなに完全かんぜん保存ほぞんされたのに、そのあいだに、このまちでも、このなかでも、いくたびか時代じだい変遷へんせんがありました。あるものは、まれました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これが種々の変遷へんせんを経て、今のようになったのですから、浅草寺寺内のお話をするだけでもなかなか容易な事ではありません。その中で私は面白い事を選んでお話しましょう。
寺内の奇人団 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
姉はそれから十五六年の変遷へんせんを経て、六人の子を生み、暮し向きもだんだん以前のように楽ではなくなり、何かと辛労が多くなって来たので、もうあの頃の精彩はないけれども
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
友人のすすめとか、時勢の変遷へんせんとか、娯楽ごらくの必要とか、生理的要求とか、ちょっときくともっともらしい名目のもとに、青年時代の溌剌はつらつたる理想に遠ざかれるを発見するであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
万法ばんぽふ流転るてんを信ずる僕といへども、目前もくぜん世態せたい変遷へんせんを見ては多少の感慨なきを得ない。
変遷その他 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そのときにはきっと大学だいがく分科ぶんか教授きょうじゅにでもなっていたのでしょう。無論むろん知識ちしきなるものは、永久えいきゅうのものではく、変遷へんせんしてくものですが、しかし生活せいかつうものは、忌々いまいましい輪索わなです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
段々だん/\追想つひさうして見ると、の九年間の硯友社けんいうしやおよ社中しやちう変遷へんせんおびたゞしいもので、書くき事も沢山たくさん有れば書かれぬ事も沢山たくさんある、なか/\面白おもしろい事も有れば、面白おもしろくない事も有る、成効せいかうあり
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
家とか位置いちとかいうことを、たがいに目安めやすにせず、いわば人と人との結婚であったならば、自分の位置いち失望的しつぼうてき変遷へんせんがあったにしろ、ともにあいあわれんで、夫婦ふうふというものの情合じょうあいによって
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
すなわち白菖はくしょうがアヤメであった時は、今日こんにちのアヤメがハナアヤメであったが、アヤメの名がショウブとなるにおよんで、ハナアヤメがアヤメとなり、時代により名称に変遷へんせんのあったことを示している。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
皆さんが疎開そかい村里むらざとにおいて、直接見ているものをならべくらべてみても、ほとんと昔からの変遷へんせんの、すべての段階を知ることができるのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「そうじゃ、今は、いまの江戸をよく見ればわかる。怖いものは、世の中の変遷へんせんじゃ。わしや、おぬしは、もう古い」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところ御維新ごゐつしんかた時勢じせい変遷へんせんで次第に家運かうんの傾いて来たをりをり火事にあつて質屋はそれなりつぶれてしまつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
京子は自分のどんな心境や身辺の変遷へんせんでも隠すところなく打ち明けて、加奈子のこころをたよって来たのに、加奈子は自分自身の運命や、こころを京子にはなした事はなかった。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しかし今日こんにちの日本人は——少くとも今日の青年は大抵たいてい長ながと顋髯あごひげをのばした西洋人を感じてゐるらしい。言葉は同じ「神」である。が、心に浮かぶ姿はこの位すでに変遷へんせんしてゐる。
文章と言葉と (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
例えていえば昔の狐の面を見ると、眼の処に穴が空いていないが、近頃のはレースで冠って見えるようになっているなども、玩具の変遷へんせんの一例でしょう。面といえば昔は色々の形があった。
外面の体裁ていさいに文野の変遷へんせんこそあるべけれ、百千年の後に至るまでも一片いっぺんの瘠我慢は立国の大本たいほんとしてこれを重んじ、いよいよますますこれを培養ばいようしてその原素の発達を助くること緊要きんようなるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今日こんにちになつて見ると、右の会員の変遷へんせんおどろもので、其内そのうち死亡しばうしたもの行方不明ゆくへふめいもの音信不通いんしんふつうものなどが有るが、知れてぶんでは、諸機械しよきかい輸入ゆにふ商会しやうくわいもの一人ひとり地方ちはう判事はんじ一人ひとり
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かくのごとき人の心には余裕がある。すなわち生木なまきのようなる弾力だんりょくがあって、世の変遷へんせんとともに進む能力を保留している。「老木ろうぼくまがらぬ」とは邪道じゃどうに迷わぬの意より弾力なきを笑うの言である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大阪と違って、田舎はそんなにはげしい変遷へんせんはなかったはずである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この書が、装幀を新たに、版をかさねて出るとなると、いつも私は過去茫々ぼうぼうの想いにたえない。じつに世のなかはその間にすら幾変いくかわりも変遷へんせんしてきた。
宮本武蔵:01 序、はしがき (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もちろん古くからある言葉ほど、変化の機会は多かったわけだが、事によるとその変遷へんせんは後々のものでなく、最初から名前沢山だくさんに生れ付いていたのかも知れない。
手一てひとツの女世帯をんなじよたいに追はれてゐる身は空が青く晴れて日が窓に射込さしこみ、斜向すぢむかうの「宮戸川みやとがは」と鰻屋うなぎや門口かどぐちやなぎが緑色の芽をふくのにやつと時候じこう変遷へんせんを知るばかり。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
それは空中を鍵形かぎがたに区切り、やいば型に刺し、その区切りの中間から見透みとおす空の色を一種の魔性ましょうに見せながら、その性全体においては茫漠ぼうばくとした虚無を示して十年の変遷へんせんのうちに根気こんきよく立っている。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
硯友社けんいうしや沿革えんかくいては、他日たじつすこぶくはしく心得こゝろえこゝにはわづか機関雑誌きくわんざつし変遷へんせん略叙りやくじよしたので、それも一向いつかう要領えうりやうませんが、お話をる用意が無かつたのですから、這麼こんなこと御免ごめんかふむります
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かれらが八百年来安住して来た特権の下に、いまもなお、時代の変遷へんせんを見くびっていた錯誤さくごも大きい。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三つほど大きな変遷へんせんが、近世になって始まったことにまず心づかれる。その一つはこの臨時の食物が甘くおいしく、かつだんだんと珍らしいものに移ってきたことである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
日々に見ている社会のまばゆい変遷へんせんが、自ら彼を懐疑の唖にしてしまったといってよいのである。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよこの運送法の変遷へんせんのために、あの古風こふうな形をやめなければならぬ時に、出あっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
国語の方面などでは、これがまだはっきりとせず、今でもたった一つの変遷へんせんを正しい道と感じ、それに付いて行かねばならぬように、我と我身を苦しめている人がまだ多い。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ただ時代に依って、それにも幾多の変遷へんせんはある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宇治川も変遷へんせんしている。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)