前面ぜんめん)” の例文
大得意だいとくい船町倉次郎ふなまちくらじらうは、さらいうして圓石まるいし取除とりのぞくと、最初さいしよ地面ぢづらより一ぢやう尺餘じやくよ前面ぜんめんおいて、ぽかりと大穴おほあな突拔つきぬけた。
左の眼が悪いときは、悪い方の眼は見えないから右の一眼いちがん前面ぜんめんを見ることになる。そのためには顔を正面に向けていたのでは、左の方が見えない。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
前面ぜんめん大手おほて彼方かなたに、城址しろあと天守てんしゆが、くもれた蒼空あをぞら群山ぐんざんいて、すつくとつ……飛騨山ひださんさやはらつたやりだけ絶頂ぜつちやうと、十里じふり遠近をちこち相対あひたいして
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにやら由井ゆいはまらしい景色けしきである……。』わたくしはそんなことをかんがえながら、格別かくべつけわしくもないその砂丘すなやまのぼりつめましたが、さてそこから前面ぜんめん見渡みわたしたとき
車上しやじやうひと肩掛かたかけふかひきあげて人目ひとめゆるは頭巾づきんいろ肩掛かたかけ派手模樣はでもやうのみ、くるま如法によほふぐるまなり母衣ほろゆきふせぐにらねば、洋傘かうもりから前面ぜんめんおほひてくこと幾町いくちやう
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こえおうじて、いへのこつてつた一團いちだん水兵すいへい一同みな部室へやからんでた。いづれも鬼神きじんひしがんばかりなるたくましきをとこが、いへ前面ぜんめん一列いちれつならんで、うやうやしく敬禮けいれいほどこした。
あめがポツ/\つてる。自分じぶんやまはうをのみた。はじめは何心なにごころなくるともなしにうちに、次第しだいいま前面ぜんめん光景くわうけいは一ぷく俳畫はいぐわとなつてあらはれてた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれは、われわすれてそのそばへかけよろうとしたが、「む、だめだ。」と、はげしくあたまをうちふって、自分じぶんでまぼろしをうちけし、じきにそのもえつくは、前面ぜんめんてきをにらんで
しらかばの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままで前面ぜんめんてゐた五月山さつきやまうらを、これからは後方うしろりかへるやうになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やがて前面ぜんめんに、やや小高こだか砂丘すなやま斜面しゃめんあらわれ、みちはその頂辺てっぺんところのぼってきます。
そして、うたがやむとともに、それらのかたちかげもどこへかぼっしてしまいました。かれが、またハーモニカで、インターナショナルをうたったときには、洋々ようようたる海原うなばら前面ぜんめんがりました。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
不図ふとがついてると、むかうのがけすこけずったところ白木造しらきづくりのおみや木葉隠このはがくれにえました。おおきさはやくけんほう屋根やねあつ杉皮葺すぎかわぶき前面ぜんめんいし階段かいだん周囲ぐるり濡椽ぬれえんになってりました。