前樣まへさま)” の例文
新字:前様
さて、三ねんまへ、……ちがひます。なれども、おな霜月しもつきさり、ちやうおないま時刻じこくわれらにもお前樣まへさまおなことがありました。……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひとひと、われは我、さやうなやからにはおかまひなく、お前樣まへさまは飽までも御先祖以來の御家風によつて……。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
其昔そのむか大部屋おほべやあるきのおひとなりしを一ねんばかりにて御出世ごしゆつせ馬車ばしやつてのお姿すがたのやうの髭武者ひげむしやだとて立派りつぱらしうえるでは御座ござんせぬか、お前樣まへさまをとこなりや
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねこ可厭いや!』とするどげきしたこゑねずみひました。『しお前樣まへさまわたしだつたらねこくの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
聞きお勇否々いや/\夫は眞實ほんたうとも存じませんが若御ことばのやうならかへつて御うらやましく存じます女の身にては見たき處が有ても見られもせずさりながら御前樣まへさまには最早もはや三十に近き御年頃としごろに見上ますが御住居を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うでありませう。お前樣まへさまこれからひにおいでなさらうとふ、をなごかたは、裾模樣すそもやうに、にしきおび緋縮緬ひぢりめん蹴出けだしでも。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
されどもれぞのあともなく、たゞうか/\とものおもふらしく或時あるときはしみ/″\といて、お前樣まへさまいつまでれだけの月給げつきうつてお出遊いであそばすおこゝろぞ、おむかやしき旦那だんなさまは
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大切の大小なれば流しては成ぬ品なり是非共受出うけいだすにより今一兩日まつて下されといふに小僧はそれでも御前樣まへさま來る度に日延ひのべばかりの御口上今日も又一兩日と仰せでは使に來た私しがこまります其度にわからない使を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ようた、お前樣まへさまおなことで、をんなにあひゞきにまゐるので、此處こゝを、さかを、矢張やはり、むかつてしたから、うか/\とあがりかけたのでありました。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
無器用ぶきようなお前樣まへさま此子このこいぢくるわけにもくまじ、おかへりにるまでわたしちゝげませうと、ありさまをかねて、となりつまいてくに、何分なにぶんたのまをしますとひながら
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たヾ一人ひとりありしいもとれと非常ひじやうなかよかりしが、いませてなにもなき、そのいもと姉樣ねえさま正寫そつくりにて、いま在世あらばとこひしさへがたく、お前樣まへさま姉樣ねえさまなればれにはいもとやうおもはれて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よしかへらずとて彼地あしこはお前樣まへさまのおやしきゆゑ、成長おほきうなりたまふまでのお留守居るすゐいまもおまうしたけれどそれこそさびしく、やにりて母樣かあさまこひしかるべし、なに柔順おとなしう成長おほきうなりたまへと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
姉樣ねえさまたちの御存ごぞんじはなきことなり、もう此話このはなしはしまするほどに、なんぞお前樣まへさま今日けふあそびて、面白おもしろおもひしおはなしがあらばかしてくだされ、今日けふ吾助ごすけがどのやうなおはなしをいたしました。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さりとてへつらひの草履ざうりとりもあまりほめたはなしではなけれど开處そこ工合ぐあいものにて、清淨せいじようなり無垢むくなり潔白けつぱくなりのお前樣まへさまなどが、みぎをむくともひだりくともくむひとはづなれどれではわたられず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)