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其処
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そこ
ふりがな文庫
“
其処
(
そこ
)” の例文
旧字:
其處
わたくしは因縁こそ実に
尊
(
とうと
)
くそれを
飽迄
(
あくまで
)
も大切にすべきものだと信じて
居
(
お
)
ります。
其処
(
そこ
)
に優しい
深切
(
しんせつ
)
な愛情が当然
起
(
おこ
)
るのであります。
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
『それでは、
俺
(
わし
)
の姪にあたるのですが、その亭主が
絵師
(
えかき
)
ですから、
其処
(
そこ
)
へ行ってお聞きなさい、ナアニ、直き向こうの小さい家です』
職業の苦痛
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
念写に到っては写真乾板の銀粒子に作用を及ぼし、
其処
(
そこ
)
に感光の
勢力
(
エネルギー
)
を残すのであるから、この後者の考え方によるより仕方がない。
千里眼その他
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
其処
(
そこ
)
からならばS湖も見えるかも知れないと思って、そこまで出て行った彼はそれらしい方向には一帯の松林をしか
見出
(
みいだ
)
さなかった。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
瀑と向い合っている対岸には恰好の段がある、少し危険ではあったが、岩から岩を伝いて漸く
其処
(
そこ
)
に攀じ登った、瀑の真正面である。
四十年前の袋田の瀑
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
どの
道
(
みち
)
余計なことだけれど、お前さんを見かけたから、つい
其処
(
そこ
)
だし、
彼処
(
あそこ
)
の
内
(
うち
)
の人だったら、ちょいと心づけて
行
(
ゆ
)
こうと思ってさ。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たった一人の婆やを使って、
其処
(
そこ
)
から、世界を驚かすような大発明を
提
(
ひっさ
)
げて出る
迄
(
まで
)
、人に顔を見せないだろうと言われて居たのです。
音波の殺人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
死ぬ少し前まで一日のうちの八時間は
其処
(
そこ
)
で
過
(
すご
)
して、悲しいことも嬉しいことも
其処
(
そこ
)
に居る時の私が最も多く感じた
処
(
ところ
)
なんですから
遺書
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
俺が今まで
其処
(
そこ
)
に思い至らなかったとは何たる愚かさであろう。清三も道子も共に通常の性的生活をしている人々ではなかったのだ。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
するから、
其処
(
そこ
)
は旨く話合いにして百両取るよ、然うしたら
私
(
わっち
)
は質から出したい着物がある、そうなるとお前さんに芝居を奢りますね
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そこには榎本君と有名な金蔵
老爺
(
じいや
)
というのが住んでいて、居士は昼間だけ
其処
(
そこ
)
に出張して、夜は本宅に寝泊まりしているのであった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もう、
其処
(
そこ
)
に何等の儀礼もなかった。それは、言葉で行われている格闘だった。青年の顔も
蒼
(
あお
)
ざめていた。勝平の顔も蒼ざめていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
風「これさ、もう好加減にしないかい。間も帰り給へ。近日是非篤と話をしたいから、何事もその節だ。さあ、僕が
其処
(
そこ
)
まで送らう」
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
彼が独りでベラベラと
喋舌
(
しゃべ
)
っている間に、お蝶は眉をよせながら、帯の間に手を差し入れて、じっと
其処
(
そこ
)
へ
屈
(
かが
)
み込んでしまっている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その仲間には私の
外
(
ほか
)
にも、私より幾つか年上の、おとなしい少年が
交
(
まじ
)
つてゐた。彼は
其処
(
そこ
)
にゐた少女たちと、
悉
(
ことごとく
)
仲好しの間がらだつた。
点心
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
これに於て悔悟する。即ち宗教家のいわゆる
悔改
(
くいあらた
)
めである。悔改めの結果は必ずまた神に救われて、
其処
(
そこ
)
に真の天国が地上に示現する。
永久平和の先決問題
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
其処
(
そこ
)
へ和上の縁談が伝はつたので
年寄
(
としより
)
仲間は皆眉を
顰
(
ひそ
)
めたが、
何
(
ど
)
う云ふ
運命
(
まはりあはせ
)
であつたか、
愈
(
いよ/\
)
呉服屋の娘の
輿入
(
こしいれ
)
があると云ふ
三日前
(
みつかまへ
)
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
其処
(
そこ
)
には
幾多
(
あまた
)
のモダン・ウィンパーが、そのルックサックに、都会の文化を一ぱいに詰め込み、肩に掛けたザイルに軽い憂鬱を漂わせ
案内人風景
(新字新仮名)
/
百瀬慎太郎
、
黒部溯郎
(著)
そのうちに席が一つ空いたから弥之助は
其処
(
そこ
)
へ割り込むと、ひょっこりその前へ現われた背広服の青年が、うやうやしくあいさつした。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しかし
其処
(
そこ
)
まで這入るときはどうしても柴折戸を開かねばならなかったので、私はしばらく考えていたが、急に柴折戸をそっとあけた。
性に眼覚める頃
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
耳を聾する銃声、もう一発! 同時に観測室でばたんと
扉
(
ドア
)
の開く音、それより
疾
(
はや
)
く、宗方博士は脱兎の如く
其処
(
そこ
)
へ踏込んで行った。
廃灯台の怪鳥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
すると
奇怪
(
きかい
)
にも、
其処
(
そこ
)
に現れた藝術品や藝術論から受ける印象は沙翁の其れにくらべると、
飛
(
と
)
んでもない相違のある事を発見した。
小僧の夢
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
森槐南
(
もりかいなん
)
、
依田学海
(
よだがっかい
)
というような顔振れも見えたが、大部分は若い女で、紅葉さん漣さんという
媚
(
なまめ
)
かしい
囁嚅
(
ささやき
)
が
其処
(
そこ
)
にも
此処
(
ここ
)
にも
洩
(
も
)
れて
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
近藤勇が、官軍の手で、越ヶ谷から板橋に送られ、
其処
(
そこ
)
で斬られたということなども、総司の死を、精神的に早めたのでもあった。
甲州鎮撫隊
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
僕の眼は、煉瓦壁の上をスルスル
匍
(
は
)
ってカフェ・ドラゴンの屋根に登っていった。すると
其処
(
そこ
)
に、大きな煉瓦積の
煙突
(
えんとつ
)
があるのだ。
西湖の屍人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其処
(
そこ
)
で貴所の一条を持出すに又とない
機会
(
おり
)
と思い既に口を切ろうとすると、意外も意外、老人の方から梅子
嬢
(
さん
)
のことを言い出した。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
監督もまさか
其処
(
そこ
)
では怒れず、顔を赤くして、何か云うと(皆が騒ぐので聞えなかった)引っ込んだ。そして活動写真が始まった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
ある日
其処
(
そこ
)
を通りかゝると、頭を
島田
(
しまた
)
に結つた十七八の女が、壺から水を
掬
(
く
)
むで
家
(
うち
)
から持つて来たらしい
硝子瓶
(
ガラスびん
)
に入れてゐるのがある。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
俺は今一人だが、俺の友達も
其処
(
そこ
)
此処
(
ここ
)
に居る。其一人は数年前に
伐
(
き
)
られて、今は
荷車
(
にぐるま
)
になって甲州街道を東京の下肥のせて歩いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
其処
(
そこ
)
までくると、彼の夢想はぐるりと一つ廻転した。——瀬川だって、何かのことで自分の妻を恋するようになるかも知れない。
愚かな一日
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
私は先日来徳川時代の書物を読んでおりますが、
其処
(
そこ
)
には右二ツのタイプがあって、学者や詩人にもこの二方面が見えるようであります。
流れ行く歴史の動力
(新字新仮名)
/
津田左右吉
(著)
それから美竹町の歯科医院をたづねたが、そのあたり一面が灰燼に帰し、大久保氏の行方も不明であつた。自分は
其処
(
そこ
)
を去つた。
三年
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
戚
(
せき
)
の地迄来ると、しかし、
其処
(
そこ
)
からは最早一歩も東へ進めないことが判った。太子の入国を拒む新衛侯の軍勢の
邀撃
(
ようげき
)
に遇ったからである。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
其処
(
そこ
)
で生徒に訊いて見ると、田辺先生は時々しか出席簿を付けないと言つた。甲田は
潜
(
ひそ
)
かに喜んだ。校長も矢張遣るなと思つた。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
で、自分は
其処
(
そこ
)
の
水際
(
みずぎわ
)
に
蹲
(
うずくま
)
って釣ったり、
其処
(
そこ
)
の
堤上
(
ていじょう
)
に寝転がって、たまたま得た何かを雑記帳に一行二行記しつけたりして毎日
楽
(
たのし
)
んだ。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その毎に身動きをしない、重苦しそうな枝の一部分だけが動いた。見渡すと五六寸ばかり頭の現われた墓石が
其処
(
そこ
)
、
此処
(
ここ
)
にある。
不思議な鳥
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
ええ、それが、なんしろ、重役の
自動車
(
くるま
)
ですから、
其処
(
そこ
)
で止まったと思うと、直ぐに私は飛出して、遮断機を上げ掛けたんです。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
其処
(
そこ
)
に折よく第三者が来て、「
彼奴
(
あいつ
)
は狐に化かされている」といって、背中をどやしてくれると即ち催眠状態が
醒
(
さ
)
めるのである。
ばけものばなし
(新字新仮名)
/
岸田劉生
(著)
小作人たちは
其処
(
そこ
)
で再び彼等独有な、祖先伝来の永遠の労苦を訴へるやうな、地を
匍
(
は
)
ふやうに響く、
陰欝
(
いんうつ
)
な、退屈な
野良唄
(
のらうた
)
を唄ひ出した。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
其処
(
そこ
)
へ
七
(
なな
)
、
八
(
や
)
ツになる子供が
喧嘩
(
けんか
)
をして
溝
(
どぶ
)
へ落ちたとやら、
衣服
(
きもの
)
を
溝泥
(
どぶどろ
)
だらけにして泣きわめきながら帰って来る。小言がその方へ移る。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「等持院寓居」というのは、召波がその等持院の一間か、あるいは
境内
(
けいだい
)
の小庵か何かを借りて、
其処
(
そこ
)
を
仮
(
か
)
り
住居
(
ずまい
)
としておったのであろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ソコで英の軍艦が二艘の船を引張て来ようと云うその時に、
乗込
(
のりこみ
)
の水夫などは
其処
(
そこ
)
から上陸させたが、船長二人だけは英艦の方に投じた。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
斯うして旅に関して筆を執っていると早やもう心のなかには
其処
(
そこ
)
等の山川草木のみずみずしい姿がはっきりと影を投げて来ているのである。
みなかみ紀行
(新字新仮名)
/
若山牧水
(著)
其処
(
そこ
)
には友達が三人来合わせて居ました。やあ、やあ、めかして
何処
(
どこ
)
へ行くのだと、既に酔っぱらっている友人達は、私をからかいました。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それは春のことであったが、
其処
(
そこ
)
の寺男が縁側で
仮睡
(
うたたね
)
をしていると、小さなみゃあみゃあと云うような変な話声が聞えて来た。
義猫の塚
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
其処
(
そこ
)
へこう陣取りまして、五六
間
(
けん
)
離れた
処
(
ところ
)
に、その女郎屋の主人が居る。
矢張
(
やは
)
り同じように
釣棹
(
つりざお
)
を沢山やって、
角行燈
(
かくあんどう
)
をつけてたそうです。
夜釣の怪
(新字新仮名)
/
池田輝方
(著)
其処
(
そこ
)
へ順序もなく坐り込んで講義を聞くのであったが、輪講の時などは
恰度
(
ちょうど
)
カルタでも取る様な
工合
(
ぐあい
)
にしてやったものである。
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其処
(
そこ
)
を船をかついで東側から西側へ越えれば容易に交通ができると考えるかもしれないが、しかし人の系統が違うとそう簡単には行かない。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あの時の氷店の跡などももうたしかに
其処
(
そこ
)
とも分らぬ。平一は過ぎた一夜の事をさながらに一幅の画のように心に描いてみる。
障子の落書
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こんな処が六十間もありましたが、
其処
(
そこ
)
を登りますと人間のやや休息するに足る場所がありましたからホッと一休みしました
越中劍岳先登記
(新字新仮名)
/
柴崎芳太郎
(著)
其
漢検準1級
部首:⼋
8画
処
常用漢字
小6
部首:⼏
5画
“其処”で始まる語句
其処此処
其処等
其処辺
其処彼処
其処許
其処々
其処中
其処迄
其処是処
其処等中