“其処:そこ” の例文
“其処:そこ”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂35
泉鏡花33
木暮理太郎30
芥川竜之介29
三遊亭円朝20
“其処:そこ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション67.2%
芸術・美術 > 演劇 > 大衆演芸61.3%
歴史 > 地理・地誌・紀行 > 日本48.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
船頭は魚を掬って、はりはずして、舟の丁度真中まんなかの処に活間いけまがありますから魚を其処そこへ入れる。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
る時にメールアイランドの近処きんじょにバレーフォーとう処があって、其処そこ和蘭オランダの医者が居る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
やどかりはうようよ数珠形じゅずなりに、其処そこら暗いところうごめいたが、声のありそうなものは形もなかった。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これなぞも誰か注意さへすれば、なんでもない事だとは云ふものの、其処そこに争はれぬ西洋人を感ずるやうな心もちがする。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、今でもおれの耳には、Invitation au Voyage の曲が、絶え絶えに其処そこからただよつて来る。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
なんでも河内山宗春の墓があるので有名なお寺だとか云うことを知っているだけで、一度も其処そこには往ったことがないそうだ。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おばあさんはそうやって私達の家に一月位ずつ泊っていては、又いつか私の知らない裡に其処そこから居なくなっているのだった。
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
信一郎は、一寸おいてきぼりを喰ったような、稍々やや不快な感情を持ちながら、しばらく其処そこ佇立ちょりつした。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
こころしずめてこちらからのぞいてますと、其処そこには二十五六のわかうつくしいおんな
まあ兎も角も明日まで待ってくれと、お菊は一寸いっすん逃れの返事をして、ようよう其処そこから逃げ出して来たのであった。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四季の何時いつと言わず、絵画の学生が此処ここ其処そこにカンヴァスをたずさえて、この自然を写しているのが絶えぬ。
冬の夜永よながなどには、よく三四人の青年が其処そこへ集つて来て、粗柔そだきながらいつまでも/\語り続けた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
『墓地の鍵を預つてる男があるはずですから、其処そこに行つて聞いて御覧なさい』と旅館の主人が教へてれた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
――そんな事を内々考えていると、其処そこへ勇ましい洋服着の主人が、スリッパアを鳴らしながら、気忙しそうにはいって来た。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
藪を潜り、木立を分け、岩角を踏み砕き、其処そこから灯までは、ほんの十町ばかり、半十郎は半分は這うようにして進みました。
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「ハッハッハッ。駄目だよ、其処そこから外へ出られるものか、三十人ぐらいかかって、三日も押したら開くかも知れないが――」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「君が協力してくれさえすれば、もっと簡単に解決する筈だと思うが――潔白な口をきいて貰い度くないというのは其処そこだよ」
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其処そこ端近はしぢかず先ずこれへとも何とも言わぬ中に母はつかつかと上って長火鉢のむこうへむずとばかり、
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
豐「本当に此のは何てえ物覚ものおぼえが悪い娘だろう、其処そこがいけないよ、此様こんなじれったい娘はないよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あ、いた! そんなひどい事をなさらなくても、其処そこの角まで参ればお放し申しますから、もう少しの間どうぞ……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
このまま、今度の帰省中ころがってる従姉いとこうちへ帰ってもいが、其処そこは今しがた出て来たばかり。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
侍「追掛けて行って、すうと一刀あびせると、ばたり前へ倒れた…化物が…拙者も疲れてどたーり其処そこへ尻餅をいた」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私の懇意な内で船場屋寿久右衛門せんばやすぐえもんと云う船宿があります、其処そこへお入来いでなされば宜しいと云う。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其処そこにはナポレオン帽をかぶつてカアキイ色の服を着けた英国の陸兵が五六人望遠鏡を手にして立番たちばんをして居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「つかんことを聞くがね、お前さんはなんじゃないかい、この、其処そこ角屋敷かどやしきうちの人じゃないかい。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山「へーえ、其の縁の下へ階梯はしごが掛って、床の下が通れるようになって、成程、で其処そこを覗くとどうなって居りました」
男は其処そこへ来るごとに直立して、硝子扉ごしの私達を見上げ莞爾かんじとしては挙手きょしゅの礼をしました。
病房にたわむ花 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
其処そこでいま、ちょっとペンを置いて、葡萄酒ぶどうしゅを一杯ひっかけ、Westminsterを二三本吹かしたところだ。
鳥料理 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
青年の身体からだは、其処そこにあった。が、彼の上半身は、半分開かれた扉から、外へはみ出しているのであった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
もなく一つのけわしいさかのぼりつめると、其処そこはやや平坦へいたん崖地がけちになっていました。
その折、お父様はK村に避暑していた外人の宣教師やなんかと共に、其処そこから二里ばかり離れたO村まで避難なさったのだった。
楡の家 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
農民は原野に境界のくいを打ち、其処そこを耕して田畑となした時、地主がふところ手して出て来て、さてうそぶいた。
心の王者 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼女は其処そこに在った長い煙管を取りあげて煙草を吸った。その人を馬鹿にしたような態度に壮助は急に苛々いらいらしてきた。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
其処そこは暗黒であるが、その向うに大きな唐銅からかねかなへがあつて、蝋燭らふそくが幾本となくともつてゐる。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
今夜の釣り場は町からよほどはなれていると見えて、これだけの話を聴き終るまでに其処そこらしい場所へは行き着かなかった。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
裏階段のあるところで、四、五人が着物を着たり身づくろいをしていた。わたしは其処そこも通りぬけて、奥まった別室へ通された。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
心安立こゝろやすだて碌々ろく/\挨拶もしないで、膝を進めたと思ふと、其処そこに居合はせた娘の伯父の手を取つた。
二人が帰つてから、寝床は二階の十畳の広間へ、母親が設けてくれて、其処そこへ寝た――ちょうど真夜中過ぎである。……
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それでその「木」へぼうを彫って、其処そこだけ特にしゅを入れたんだそうです。それきり、幽霊は出ては来なかった。
□本居士 (新字新仮名) / 本田親二(著)
あの下宿屋の若旦那わかだんなは役者よりも美くしいと其処そこじゅうの若い女が岡惚おかぼれしたという評判であった。
其処そこは暗黒であるが、その向うに大きな唐銅からかねかなえがあって、蝋燭ろうそくが幾本となくともっている。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「よしよし其処そこに隠してあると言うのか、――見せて悪いものなら、眼をつぶって受取うけとろう、どうだ、これでは?」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
これは千種ばかりではありません。其処そこに居る全部の人達の耳に入ったものと見えて、一種物々しい感歎の叫びが漏れます。
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其処そこには、二丁程距てて、この篤学とくがくの博士を捨てた、流行歌手若菜が、乱倫極まる生活を営んで居る筈だったのです。
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
自分はぎょっとして起あがろうとしたが、直ぐ其処そこに近づいて来たのでそのまま身動きもせず様子をうかがっていた。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その跫音あしおとより、鼠の駈ける音が激しく、棕櫚しゅろの骨がばさりとのぞいて、其処そこに、手絡てがらの影もない。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
信心者からの奉納物らしい目録包みの巻絹や巻紙や鳥や野菜や菓子折や紅白の餅なども其処そこらにうず高く積まれてあった。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ黙っておとなしく其処そこにうずくまっているだけのことであったが、それがたとえようもないほどに物凄ものすごかった。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これは面白ろい、彼奴きゃつを写してやろうと、自分はそのまま其処そこに腰を下して、志村その人の写生に取りかかった。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
此室ここかろうという蔵海のことばのままその室の前に立っていると、蔵海は其処そこだけ雨戸をった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
監督もまさか其処そこでは怒れず、顔を赤くして、何か云うと(皆が騒ぐので聞えなかった)引っ込んだ。そして活動写真が始まった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
下方したかたが出来る処から出入町人の亭主に心安い者があって、其処そこにいると云うが、今日こんにちは幸いな折柄で
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
白「なんだナ、誰だ、明けておはいり、履物はきもの其処そこへ置くと盗まれるといけないから持っておあがり」
成る程其処そこには、三尺四方くらいの機械油のたまりが、一度水に浸されたらしくなかばぼやけて残っている。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
彼は其処そこから見えるあらゆる樹木がすっかり若葉を出しているのにながめ入りながら、目がかゆくなるのを我慢していた。
恢復期 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
これも、旅人の気持でなく、現在其処そこにいても、「信濃路は」といっていること、前の、「信濃なる須賀の荒野に」と同じである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
近藤勇が、官軍の手で、越ヶ谷から板橋に送られ、其処そこで斬られたということなども、総司の死を、精神的に早めたのでもあった。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其処そこではじめのうちわれともなくかねきこえるのを心頼こゝろたのみにして、いまるか
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其処そこへ、彫像てうざうおぶつてはいつたんですが、西洋室せいやうまひらきけやうとして、
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
第一だいいち、おうらばかりぢやない、其処そこばあさんもえなければ、それらしいみせもない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
垂れてゐる血を辿たどつて行くと其処そこに狐が死んでゐるので、一つなどはそれでも、林の中の泉の傍まで行つてゐたさうである。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
少年は不貞腐ふてくされたような一瞥いちべつを我々に投げてから、其処そこにあった木箱に腰を下し、海の方を向いてしまった。
それにしても夫人が畳の上に投げつけたのは何だらう。仕合せと神様と茶話記者とは其処そこに居合はさなかつたので少しも知らない。
あしのとまるところにて不図ふと心付こゝろづけば其処そこ依田学海先生よだがくかいせんせい別荘べつさうなり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ほかの人形など一所いっしょに並んだ、中にまじつて、其処そこに、木彫にうまごやしを萌黄もえぎいた
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其処そこへですよ、奥深く居て顔は見せない、娘の哥鬱賢こうつけんから、こしもとが一人使者つかいで出ました……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、つと小窓をひらくと、其処そこそでれた秋風は、ふと向うへげて、鍵屋の屋根をさら/\と渡る。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其処そこから蒲田の温泉と上高地の温泉へ行く道とがあるが、それへは行かず、旗鉾を通って平湯へ行こうというのであった。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
其処そこだよ、こんな模範的な楽天家が、自殺などを企てよう筈は無い、それに、ツイ一時間前まで、あの通り元気だったのだから」
悪魔の顔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其処そこへ時々やって来るのは、あまり有名でない文士と、一向流行はやらない書家と、そして警視庁の若い刑事達でした。
笑う悪魔 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
甚「厄介な奴だ、畜生ちきしょうめ、ぜにが無くて幽霊を脊負しょって来やアがって仕様がねえ、其処そこへ寝ろ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
従来これまでもお前を世話した、後来これからも益世話をせうからなう、其処そこに免じて、お前もこの頼は聴いてくれ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しばらく其処そこでコト/\させていたが、何をしているのだろうと思っていると、卵を五つばかりゆでゝ持ってきた。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
姉の家に近づくに連れて気が付くと、姉の家の雨戸が一枚開いて居て、其処そこから光が戸外へ洩れて居るのが見えました。
ある抗議書 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
たってお前が其処そこ退かないというのなら、それも仕方はないがネ、そんな意地悪にしなくても好いだろう、根が遊びだからネ。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其処そこは雨がひどく洩るので、四方の戸を阿父おとうさんが釘附くぎづけにして自分の生れ無い前から開けぬ事に成つて居る。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
其処そこに白翁堂勇齋という人相を見る親爺おやじがいるが、今年はもう七十だが達者な老人でなア、人相は余程名人だよ
ところが其処そこで一層都合の良い事には、喜三郎と源之助の二人は、三年ぜんまで、どうだい君、天祥丸の水夫をしていたんだぜ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
主人若し打たれては残卒全からず、何十里の敵地、其処そこの川、何処のはざまで待設けられては人種ひとだねも尽きるであろう。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
裏門の方へ出ようとするかたわらに、寺のくりやがあって、其処そこで巡覧券を出すのを、車夫わかいしゅが取次いでくれる。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わがをか〓神おかみひてらしめしゆきくだけ其処そこりけむ 〔巻二・一〇四〕 藤原夫人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
其処そこへ立つと、海面うなもから吹渡る潮風が、まともにあたって、真夏の夜だというのに、ウソ寒くさえ感じられた。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「お足袋たびが泥だらけになりました、其処そこでござんすから、ちょいとおいすがせ申しましょう。おぎ遊ばせな。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京都には鼠骨そこつ君がいた。鼠骨君はその頃吉田神社前の大原という下宿にいたので余は暫く其処そこに同居していた。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
どうしても咯血がとまらぬので氷嚢ひょうのうで肺部を冷し詰めたために其処そこに凍傷を起こした。ある一人の若い医師が来て見て、
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
が、其処そこに横たわっていた藤十郎の姿を見ると、吃驚びっくりして敷居際しきいぎわに立ちすくんでしまった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
車は八重やえかさなる線路の上をガタガタと行悩んで、定めの停留場に着くと、其処そこに待っている一団の群集。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其処そこへ掛けるが宜い。その椅子いすは、由紀子も夢子も掛けた椅子だ。――それから安心のために、鍵はこの通り」
所が肉眼ならば双眼鏡で眺めるとどうにか区別される場合でも、写真では中々其処そこまで突き留め兼ねることがあります。
望岳都東京 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
又富士見峠と云うのは、其名の示す通りに其処そこから富士が望まれるからであるが、若し浅間神社が勧請してあれば浅間峠と呼ばれる。
二、三の山名について (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
麗子はテーブル抽出ひきだしを抜いて見ましたら、其処そこは綺麗に空っぽにされて、紙片かみきれ一つ残っては居りません。
向日葵の眼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其処そこまで判って居るなら、なぜ恐れ乍らとやらかさないんだ、警視庁の花房はなぶさ一郎は、君の友人じゃないか」
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
瀑と向い合っている対岸には恰好の段がある、少し危険ではあったが、岩から岩を伝いて漸く其処そこに攀じ登った、瀑の真正面である。
四十年前の袋田の瀑 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
君にこの生活を教えよう。知りたいとならば、僕の家のものほし場まで来るとよい。其処そこでこっそり教えてあげよう。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
足をばたばたやって大声を上げて泣いて、それで飽き足らず起上って其処そこらの石を拾い、四方八方に投げ付けていた。
画の悲み (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこで其処そこ釣綸つりいとを垂れ難い地ではあるが、魚は立廻ることの多い自然に岡釣おかづりの好適地である。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こんなことを言って、いきなり其処そこにある草をむしって、朋輩ほうばいの口の中へ捻込ねじこむのもあった。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つうちゃんも、可哀そうなことをしましたね」こういう言葉が其処そこにも是処ここにも交換とりかわされた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
チョイと云う事からしてまずに障わる。文三も怫然むっとはしたが、其処そこは内気だけに何とも言わなかった。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
見霽みはらしの広場になっておりますから、これから山越やまごしをなさるかたが、うっかり其処そこへござって
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)