両側りょうがわ)” の例文
旧字:兩側
まちなかとお人々ひとびとも、両側りょうがわみせもだいぶわったけれど、やはり、銀行ぎんこうは、そこにあり、そして、こうがわにたばこがありました。
街の幸福 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いよいよ野原がおしまいになって、わたしたちはてしのない長い町の中にはいった。両側りょうがわには見わたすかぎり家がてこんでいた。
町の両側りょうがわの店をのぞきながら歩いても、それらの店の人たちはみんな、朝のかざりつけにせわしそうに働いていました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
そして両側りょうがわ広々ひろびろとしたおにわには、かたちまつそのほどよくみになってり、おくはどこまであるか、ちょっと見当けんとうがつかぬくらいでございます。
それはたちまち器械の中で、きれいな黄色の穀粒こくりゅうと白い細長ほそながしんとにわかれて、器械の両側りょうがわちて来るのでした。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
の間は火のやすことをむがところのふうなれば、祖母と母との二人のみは、大なる囲炉裡いろり両側りょうがわすわり、母人ははびとかたわら炭籠すみかごを置き、おりおり炭をぎてありしに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
石炭殻せきたんがらなどを敷いた路は爪先上つまさきあがりに踏切りへ出る、——そこへ何気なにげなしに来た時だった。保吉は踏切りの両側りょうがわに人だかりのしているのを発見した。轢死れきしだなとたちまち考えもした。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あかき光を正面しょうめんにうけて、薪束まきたばのうえにこしをかけているかげこそ、まさしく伊那丸いなまるであり、その両側りょうがわにそっているのは、木隠龍太郎こがくれりゅうたろう加賀見忍剣かがみにんけん、いつも、すきなき身がまえである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このは、まちは、いつもとことなって、いろいろの夜店よみせが、大門だいもん付近ふきんから、大通おおどおりにかけて、両側りょうがわにところせまいまでならんでいました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だが目のとどかぎ両側りょうがわは雪にうずまった林であった。前はもう二、三間(四〜五メートル)先が雪でぼんやりくもっていた。
それまでにも、小さな町や村は通ったことがありましたが、これほどにぎやかな町に出たのはこれがはじめてです。町の両側りょうがわには新しい家がならんでいました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
気がついて見るとほんとうにタネリは大きな一ぴきのかにかわっていたのです。それは自分の両手りょうてをひろげて見ると両側りょうがわに八本になってびることでわかりました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
道の両側りょうがわはいつのまにか、ごみごみした町家ちょうかに変っている。塵埃ちりぼこりにまみれたかざり窓と広告のげた電柱と、——市と云う名前はついていても、都会らしい色彩はどこにも見えない。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくし自身じしんやま修行場しゅぎょうばうつるまでは、矢張やは岩屋いわやずまいをいたしましたが、しかし、ここはずっとおおがかりに出来でき岩屋いわやで、両側りょうがわ天井てんじょうもものすごいほどギザギザした荒削あらけずりのいわになってました。
まちうらは、さかになって、ほそみちがつづいていました。みち両側りょうがわはやぶになっていましたので、そこに、かえるはすんでいたのであります。
お母さんのひきがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
両側りょうがわにはしじゅうぶどう畑ばかりを見て来たのが、ふと、それはあたかも目をさえぎっていた窓かけがぱらりと落ちたように、眼界がんかいが自由に開けた。
そして何所どこに一てんちりとてもなく、またみち両側りょうがわほどよく配合あしらった大小だいしょうさまざまの植込うえこみも、じつなんとも申上もうしあげかねるほど奇麗きれい出来できり、とても現世げんせではこんな素晴すばらしい道路どうろられませぬ。
みち両側りょうがわには、ゆきえかかって、あおくさているところもありました。けれど、だんだんとすすむにしたがって、ゆきおおくなったのであります。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひろやかなとおりには、ひかりあたたかそうにあたっていました。このみちめんして、両側りょうがわには、いろいろのみせならんでいました。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、広々ひろびろとした、野中のなかとおっている、むかしながらの道筋みちすじでありました。としとったまつみち両側りょうがわっていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、また、いつまでも自分じぶん記念きねんにして、しまっておくようなものが、なにかつからないものかとおもって、まち両側りょうがわをながめながらあるいていました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
晩方ばんがたでありました。両側りょうがわには、燈火ともしびのついたころあいです。電車でんしゃ停留場ていりゅうじょうには、たくさんひとっていました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
山車だしうえのおじいさんは、両側りょうがわみせをのぞくように、そして、その繁昌はんじょういわうように、にこにこして見下みおろしました。やがて、山車だしは一けん骨董店こっとうてんまえとおりました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
幸三こうぞうは、つつみについてみなみへゆきますと、両側りょうがわに、倉庫そうこばかりのならんだところへました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう、両側りょうがわみせには、燈火あかりがついて、大空おおぞらは、紫水晶むらさきすいしょうのようにくらくなっていました。
真昼のお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)