はじめ)” の例文
第五は書のはじめに見えてゐる棕軒侯である。侯は茶山の次韻の詩を見て称讚した。「中歳抽簪為病痾」の七律とこれに附した八絶とである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
としはじめといふので有繋さすがかれいへでも相當さうたうもち饂飩うどん蕎麥そば/\のれいよつそなへられた。やはらかなもち卯平うへい齒齦はぐきには一ばん適當てきたうしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今、仮に耶蘇ヤソの教をもってこれを論ぜん。耶蘇に十誡じっかいあり。そのはじめの三条は敬神の道なり。四に曰く、父母を孝敬せよ。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
しかありて乾と坤と初めて分れて、參神造化のはじめ、陰と陽とここに開けて、二靈群品の祖となりたまひき
「夫れ太初にことばあり、万の物これに由りて創らる。」とヨハネ伝のはじめに録されたる如く、世界を支へる善・悪の法則を犯せば必ず罰がなくてはなるまい。
善くならうとする祈り (新字旧仮名) / 倉田百三(著)
父中将をはじめとして、子爵夫人、加藤子爵夫人、千鶴子、駒子、及び幾も次第にベッドをめぐりて居流れたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
江戸留守を題材にした点は同じであるが、一句の働きにおいては朱拙の朧月をはじめに推さなければなるまい。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
長篠の一戰は、實に福を惜まざるも亦甚しいものであつて、馬場山縣をはじめとし、勇將忠士は皆其の戰に死した爲、武田氏の武威は其後また振はなくなつたのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あんなにしんねりむつつりとはじめも尻尾もなく、小言を聞かされてはたまるものか、何んだつてもつとはつきりしないんだ、と思ふと彼の歯は自然ひとりでに堅く噛み合つた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
天子諸侯も農夫の耕作を勤むる故に飢を知り給ひ、さりとて、官ある人、農を業とすべきにあらざれば、年のはじめ、農に先だつて、いささかその辛苦の業を手にふれ給ふ
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すなわち尋常紙上に記載する事件のはじめにおいて次をふて我儕の所見を叙述し、以てあまねく可否を江湖の君子にとわんとし、ここにその目を掲するに左の数項の外に出でず。
初編のはじめに、人は万人みな同じ位にて生まれながら上下の別なく自由自在云々とあり。今この義を拡めて言わん。人の生まるるは天のしからしむるところにて人力にあらず。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
飄日のためにさらされず、蚊虻のために触嬈せらるるところとならずや〉、風雨やんでかの竜一年少梵志ぼんしに化し、仏を拝し法に帰した、これ畜生が仏法に入ったはじめだと見ゆ。
さればこそ北条のすえ、足利のはじめにおいては、「天皇御謀反ごむほん」の新熟語も出できたりたるなれ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
此訳稿のはじめに人物の目録を添へたのは、脚本には有つても、小説には例の無い事である。
わが買ひ得たる神曲のはじめには、ダンテが傳を刻したりき。そはいたく省略したるものなりしかど、尚わが詩材とするに堪へたれば、われはこれに據りて、此詩人の生涯を歌ひき。
この物語のはじめにちょいと噂をした事の有るお政の知己しりびと須賀町すがちょうのお浜」という婦人が、近頃に娘をさる商家へ縁付るとて、それを風聴ふいちょうかたがたその娘をれて、或日お政を尋ねて来た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
はじめしり容儀きりやうすぐれしのみならず又志操こゝろばえも人にすぐ流石さすがは武士のたねほどありて斯る擧動ふるまひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その日が暮れて夕方となれば、ユダヤ人の暦では一週のはじめの日が始まります。
此小説のはじめにはサア・トオマス・ブラウンの語を「モツトオ」にして書いてある。それから分析的精神作用と云ふものに就いて、議論らしい事が大ぶ書いてある。それを訳者は除けてしまつた。
なぞも有れば画探ゑさがしも有る、はじめはうには小説をかゝげて、口画くちゑ挿画さしゑも有る、これすべて社員の手からるので、筆耕ひつこう山田やまだわたしとで分担ぶんたんしたのです、山田やまだ細字さいじ上手じやうづに書きました、わたしのははなはきたな
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
というようなことがはじめの方に書いてある。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
およそ初雪は九月のすゑ十月のはじめにあり。
南瓜道人『俳星』のはじめに題して曰く
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
金井君はこう思い直して、静にまきはじめから読み返して見た。そして結末まで読んだときには、夜はいよいよけて、雨はいつの間にか止んでいた。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それはじめにことばあり、よろずの物これによりてつくらる」とヨハネ伝のはじめに録されたるごとく、世界を支える善、悪の法則を犯せば必ず罰がなくてはなるまい。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
崩を聞いて諸王は京に入らんとし、燕王はまさ淮安わいあんに至らんとせるに当りて、斉泰せいたいは帝にもうし、人をしてちょくもたらして国にかえらしめぬ。燕王をはじめとして諸王は皆よろこばず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『周礼』に庖人ほうじん六畜を掌り、馬その第一に位し、それから牛羊豕犬鶏てふ順次で、そのいわゆる五穀は麻をはじめとし、もちきびうるきびそれから麦と豆で、これにもちあわと稲と小麦小豆を加えて九穀という。
はじめとして並居る一同母親はゝおやのお勝もさては其の醫師は元益なりしかと計りにあきれてかほを見合せゐたりぬ忠相たゞすけぬしは呼び出せし和吉に言葉ことばはあらずして元益げんえきの方へ打向ひ其方最前さいぜんも申す通り仁術にんじゆつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
維新ののち、一異様の日を出現しきたれり。その名称いまだ一定せず、曇濁といい、損徳といい、また呑泥という。みな西音せいおん転訛てんかにして、日曜日の義なり。それ日曜は七曜しちようの一にして、毎週のはじめなり。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
すなわち初編のはじめに言える万人同じ位とはこのことなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そぞろにその詩のはじめをば小声こごゑほがらかに吟じゐたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と題し、『麗人行』のはじめには
詩人への註文 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
太田豊太郎とよたらうといふ名はいつも一級のはじめにしるされたりしに、一人子ひとりごの我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
永観元年の改元のみことのり、同二年、封事ふうじたてまつらしめらるるの詔を草したのをはじめとして、二十篇ばかりの文、往生極楽記などを遺したに過ぎないで終ったが、当時の人の心界に対して投げた此人の影は
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
はじめ四五人が先家主の方へ至り雨戸をたゝきて呼物からいらへはなきゆゑ戸へ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『周礼』に馬を六畜のはじめとしたのもこの通り貴んだのだろう。
太田豊太郎おおたとよたろうという名はいつも一級のはじめにしるされたりしに、一人子ひとりごの我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
物物而責之用ものをものとしてこれがようをせむれば用亦窮矣ようもまたきゆうす東坡とうば外傳のはじめに題せし西疇子せいちうしが言もおもはるゝは、二三の新聞の文學を視るこゝろの狹さなり。文學國を滅ぼすといふものあり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
正弘等の浦賀に派した応接掛の中には、蘭軒等の総本家の当主、此稿のはじめに載せた伊沢美作守政義みまさかのかみまさよしが加はつてゐた。一行の首席は復斎林韑ふくさいりんゐで、随員には柳浪松崎純倹りうらうまつざきじゆんけんがあつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
手紙の「用事」と題した箇条書のはじめに、巾着の註文がある。そして此巾着はわたくしに重要な事を教へる。わたくしははやく蘭軒と茶山との交通はいつ始まつたかと云ふ問を発した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)