がね)” の例文
老人ろうじんたちは、ごんごろがねわかれをしんでいた。「とうとう、ごんごろがねさまもってしまうだかや。」といっているじいさんもあった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
がねだけ見える鐘楼しゅろうの内部。撞木しゅもくは誰かの手に綱を引かれ、おもむろに鐘を鳴らしはじめる。一度、二度、三度、——鐘楼の外は松の木ばかり。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これはすこひらたいがねのようなかたちをしたもので、ちひさいものは四五寸しごすんおほきいものになると四五尺しごしやくもあり、すてきにおほきなものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ゴリラががねの様な声で云った。ギャアギャア叫ぶばかりだと思っていたら、この猛獣は人間の言葉を知っているのだ。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
まるで揶揄やゆされているような気がする。ッとした顔を雲八の耳のそばへつき出して、勝家はがねのような声でいった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしかてその方がええ」ともう一人の若者がそれに相槌あいづちを打つのを聞くと、その男は怒ったようながねのような声を出して怒鳴るのであった。
(新字新仮名) / 島木健作(著)
そうとは知らず康おじさんはがねのような声を出して喋りつづけた。あまり声が大きいので奥に寝ていた小栓は眼を覚ましてさかんに咳嗽はじめた。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
仙之助、栄三郎に真向い立ってぴったりとつけたとたん! 足もとの草むらから沸き起こったがねのような笑い声がかたわらの左膳を振りむかせた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きぬはいくらってもってもりません。がねはたたくと近江おうみ国中くにじゅうこえるほどのたかおとをたてました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
祇園精舍の鐘われがねならば、聞くものこれをいとはしとし、われがねならずばこのましとせむ。沙羅雙樹の花しほればなならば、見る人これより去り、しほれ花ならずばこれに就かむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
のみならず顔からひげえているのか髯の中に顔が同居しているのか分らない赤つらをり返して、日盛りにがねをつくような声を出して「うめろうめろ、熱い熱い」と叫ぶ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と怪人が喜びの声をあげたとき、不意に天井の方からがねのような声が鳴り響いた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
知らしめんがためか聖徳太子の吟作なりとて「照る月のなかなる物の大弓おおゆみはあぞちにたちてまとにあたらず」また和泉式部いずみしきぶが「南無仏の御舎利みしゃりいだなながねむかしもさぞな今も双調そうちょう
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、そういう範覚の耳へ、鬼火の姥のいる沼の方から、けたたましい退がねの音が聞こえ、つづいて烈しい喊声が聞こえ、やがてこっちへ大勢の者が、走って来る音が聞こえて来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
香水の表情の音色を譬へてみると、私語ささやき、口笛、草笛、銀笛、朝鮮がねの夕暮余音よいん、バイオリン、クラリネツト、バス、テノル、蝶の羽ばたき、木の葉のかすれ、雛のふくみごゑ等がある。
こんなチッポケな痩身のどこからでると思ふやうながねの声で応援団のやうに熱狂乱舞して合ひの手に胴間声にメッキのやうなツヤをかぶせて御婦人を讃美礼讃したり口説いたりする。
オモチャ箱 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
と安斉先生はわれがねのような声をたてた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
鐘供養かねくようというのは、どんなことをするのかとおもっていたら、ごんごろがねまえ線香せんこうてて庵主あんじゅさんがおきょうをあげることであった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
銅鐸どうたくはそのかたちが、がねのようでありますから、やはり樂器がつきではあるまいかといふひともありますが、さて樂器がつき使つかつたあとられませんので
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
一番がねをついた見附のすりばんに合せて、やがて遠く、両国のやぐらや鳥越あたりのお火の見でも、コーン、コーンと、冴えた二ツ鐘をひびかせてきた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がねのような声。グイと握った二つ折りの手拭で、ヒョイと鼻の頭をこすりながら、このとき膝をすすめたのは、長屋の入口に陣どっている左官さかんの伝次だ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
乞食はいいながら、小わきにかかえていた、きたならしいふろしき包みをほどくと、中から一枚のがねマントを出して、それをやぶれた着物の上から、はおりました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
藤太とうだがね三井寺みいでらおさめて、あとの二品ふたしないえにつたえていつまでもゆたかにらしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんなチッポケな痩身そうしんのどこからでると思うようながねの声で応援団のように熱狂乱舞して合いの手に胴間声にメッキのようなツヤをかぶせて御婦人を讃美礼讃したり口説いたりする。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
大江山課長ががねのような声で呶鳴った。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼくたちの学校がっこうもん鉄柵てつさくも、もうとっくに献納けんのうしたのだから、尼寺あまでらのごんごろがねだって、おくにのために献納けんのうしたっていいのだとおもっていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
揺れ返る船のみよしに立って角鍔かくつばの一刀を引ッ抱えた生不動は、がねのような声を、伝馬の中に向って叩きつけた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして家来けらいにいいつけて、おくからこめぴょうと、きぬぴきと、がねを一つさせて、それを藤太とうだおくりました。そしてこの土産みやげしな家来けらいかつがせて、龍王りゅうおう瀬田せたはしの下まで見送みおくって行きました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのとき、錯乱したがねのようなピカ一の声がとどろいた。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
れよとばかり手をたたいて、がねのような声で叫んだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
きさまは、まだ釜師根性かましこんじょうがぬけんからだめだ。そんな飯炊めしたがまがねなどばかりてくるやつがあるか。それになんだ、そのっている、あなのあいたなべは。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
と、がねのような声でこうご託宣たくせんをくだしたのである。そして彼は広間の法廷に出て、壇の中央にある知事席に腰をすえ、大真面目で、えんじゅしゃくを胸のまえに構え込んだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、がねのやうな大音声でかうと問ふた。
閑山 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
人々が立つ頃、八幡がねも明けのらせをいた。大太鼓が鳴りとどろき、施粥せがゆが始まった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がねのやうな声だつた。
がねごえでこう叫んだのを見ると、雲つくような大男が三人、大小ッこみ、侍すがた、へべれけにって熟柿じゅくしのようないきをはき、晃々こうこうたる大刀をぬきはらい、花や女子おなごの踊りにまじって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
気殺! まず気をもって対手の胆をひしがねごえ
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暁暗ぎょうあん・うつつがね
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)