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鎌首
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かまくび
ふりがな文庫
“
鎌首
(
かまくび
)” の例文
俺が
鎌首
(
かまくび
)
をあげると、その敷蒲団を若紫は手早くひょいとめくって、その下に草履を隠そうとして、ピストルが眼にはいったらしく
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
見返しますがな、極りが悪そうに
鎌首
(
かまくび
)
を垂れて、向うむきに
羞含
(
はにか
)
みますよ。憎くないもので、ははははは、やはり心がありますよ。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ガチャリと、膳へ盃が落ちてわれる——ともう、小六の脇の下から、急所を狙う
蝮
(
まむし
)
の
鎌首
(
かまくび
)
にも似た太刀の柄頭が、ピタリと向ッていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのような大事のときでも、その緊張をほぐしたい私の悪癖が、そっと
鎌首
(
かまくび
)
もたげて、ちらと地平の足もとを
覗
(
のぞ
)
いて、やられた。
喝采
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
大蛇
(
おろち
)
は人形を見ると、それを生きた人間と思ったのでしょう、いきなり大きな
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて、
恐
(
おそ
)
ろしい
勢
(
いきおい
)
で
寄
(
よ
)
ってきました。
人形使い
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
恐竜がぐいと
鎌首
(
かまくび
)
をもたげると、うなり声をあげて怒り出した。仲間の恐竜も目をさまして、びっくり半分、さわぎだした。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
山かゞしは蛇の中でも
精悍
(
せいかん
)
なやつである。蛙の
腿
(
もも
)
を啣えながら
鎌首
(
かまくび
)
をたてゝ逃げて行く。竹ぎれを取って
戻
(
もど
)
ると、
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
の畑に見えなくなった了うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
錢形平次は
鎌首
(
かまくび
)
をもたげました。相變らず日向に不景氣な植木鉢を竝べて、物の
芽
(
め
)
をなつかしんでゐたのです。
銭形平次捕物控:155 仏像の膝
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
見なければならない。と、不平やら、不満やらが、すぐに
鎌首
(
かまくび
)
を持ち上げて来る。いやだいやだ、人間はいやだ
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
鱗
(
うろこ
)
のぎらぎらした細長い胴と、
匙
(
さじ
)
の先に似た短かい頭とを我知らず比較して、胴のない
鎌首
(
かまくび
)
だから、長くなければならないはずだのに短かく切られている
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
鎌首
(
かまくび
)
を持ち上げた。山下さんは先輩という関係から、自分のことかと思ったが、斎藤さんが引き取って
嫁取婿取
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
が、それでも
春重
(
はるしげ
)
は
返事
(
へんじ
)
をしずに、そのまま
鎌首
(
かまくび
)
を
上
(
あ
)
げて、ひそかに
上
(
あが
)
りはなの
方
(
ほう
)
へ
這
(
は
)
い
寄
(
よ
)
って
行
(
い
)
った。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
その燃えるような紅い空の下で音楽の響きが更に調子を高めると、花のかげから無数の毒蛇がつながって現われて来て、楽の音につれて一度にぬっと
鎌首
(
かまくび
)
をあげた。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかし
肉漿
(
にくしょう
)
や膿血は拭ひ得てもその欲情の
難
(
くるし
)
みのしんは残つてゐる。この老いにしてなほ触るれば物を
貪
(
むさぼ
)
り恋ふるこころのたちまち
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて来るのに驚かれた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
その音に初めて気づいたように蛇は、
鱗
(
うろこ
)
に包まれた
鎌首
(
かまくび
)
をもたげた。小さなまるい眼で高倉祐吉の顔をのぞきこみ、口をあけないで赤い舌をちろちろと動かしていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
さうして、
鎌首
(
かまくび
)
をもたげながら、池の
方
(
はう
)
へ眼をやつて、まだ眠むさうに舌なめづりをした。
蛙
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼の
憤
(
いきどお
)
りと恨みとが、胸の中で煮えくり返った時だった。その憤りと恨みとの
嵐
(
あらし
)
の中に、徐々に
鎌首
(
かまくび
)
を
擡
(
もた
)
げて来た一念があった。それは、云うまでもなく、
復讐
(
ふくしゅう
)
の一念だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
まざまざとした
煩悩
(
ぼんのう
)
が
勃然
(
ぼつぜん
)
としてその歯がみした物すごい
鎌首
(
かまくび
)
をきっともたげるのだった。それもよし。近くいても看視のきかないのを利用したくば思うさま利用するがいい。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
画面の前景ににしき
蛇
(
へび
)
が写る。ジャングルのなにかの
樹
(
き
)
に
絡
(
から
)
みついていて、おとなの腕ほどもある
鎌首
(
かまくび
)
をあげ、葉の茂み越しに、向うから近づいて来る探検家夫妻を
狙
(
ねら
)
っている。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
和上の
傷
(
きづ
)
は
二月
(
ふたつき
)
で癒えたが、其の
傷痕
(
きづあと
)
を一目見て
鎌首
(
かまくび
)
を上げた
蛇
(
へび
)
の様だと身を
慄
(
ふる
)
はせたのは、
青褪
(
あをざ
)
めた
顔色
(
かほいろ
)
の奥方ばかりでは無かつた。其頃
在所
(
ざいしよ
)
の
子守唄
(
こもりうた
)
に斯う云ふのが
流行
(
はや
)
つた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
初七日
(
しょなぬか
)
の晩でございました。奥さんが線香を上げに、仏壇を
覗
(
のぞ
)
かれますと、大きな蛇のとぐろを巻いていましたのが、
鎌首
(
かまくび
)
を上げて、じっと奥さんのお顔を見たそうでございます。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
蛇は勢よく
鎌首
(
かまくび
)
を立て、赤い舌を吐いてあちこちします。その気味の悪いこと。その辺の子供たちや、通りがかりの人が立止って見ています。蛇は蛙を追い追い水を伝わって
遠退
(
とおの
)
きます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
いやわしの魂をつくっている要素、わしそのものが不幸なのだ。わしの魂は
鎌首
(
かまくび
)
をもたげていつもうろうろしている。心の
座
(
ざ
)
が定まらない。わしは失われる人間なのか。
地獄
(
じごく
)
におちる人間なのか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
うとましの
怪物
(
けもの
)
、
鎌首
(
かまくび
)
しやうりの歌
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
手でも叩かうと思ひましたが、この部屋は
母屋
(
おもや
)
から離れて居て、それも少し氣の毒、水差しくらゐは來てゐさうなものと、
鎌首
(
かまくび
)
をもたげてそつと見廻すと
銭形平次捕物控:308 秋祭りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私は自身に
鎌首
(
かまくび
)
をもたげた
蛇
(
へび
)
を意識した。敵意。それにちかい感情で、私は自分のからだを固くしたのである。
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もう少しで失恋になるからしばらく
辛抱
(
しんぼう
)
していらっしゃい。すると一分立つか立たないうちに蓋の穴から
鎌首
(
かまくび
)
がひょいと一つ出ましたのには驚ろきましたよ。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その時はまず人助けにずるずると尾を引いて、向うで
鎌首
(
かまくび
)
を上げたと思うと草をさらさらと渡った。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
単にそれだけならば別に子細もないのであるが、その唐蜀黍のあいだから一匹の青い蛇が
鎌首
(
かまくび
)
をもたげたので、他の乗客はおどろいて飛びあがった。女たちは悲鳴をあげて騒いだ。
深見夫人の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
病室からながめられる生理学教室の三階の窓、密閉された
部屋
(
へや
)
、しごき帯、……なんでもかでもが自分の肉を
喰
(
は
)
む
毒蛇
(
どくじゃ
)
のごとく
鎌首
(
かまくび
)
を立てて自分を待ち伏せしているように思えた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
阿賀妻は
茫漠
(
ぼうばく
)
とした顔でその話を聞いていた。高机にのせた自分の腕を斜め前のところに置き、両手の指をからませてぴくりぴくりと動かしている。
拇指
(
おやゆび
)
が蛇の
鎌首
(
かまくび
)
のように突っ立つ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
「あッ——」と、つかんですてると、それは小さな
白蛇
(
しろへび
)
である。こんどはたおれている竹童の胸へのって、かれのふところへ
鎌首
(
かまくび
)
を入れ、スルスルと
襟首
(
えりくび
)
へ、
銀環
(
ぎんかん
)
のように巻きついた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてその蔓草の先が、蛇のように
鎌首
(
かまくび
)
をあげてヒトミの肩へはいあがった。
ふしぎ国探検
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と野崎君が
鎌首
(
かまくび
)
を
擡
(
もた
)
げた。
凡人伝
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
鎌首
(
かまくび
)
はかぼそくしびれ
しやうりの歌
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
呼吸を計らんでひやかせばかえって自分が
放
(
ほう
)
り出されるばかりである。彼らは蛇のごとく
鎌首
(
かまくび
)
を持ち上げて待構えている。道也先生の眼中には道の一字がある。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
兼吉が聲を掛けると、床を敷いて横になつてゐたらしい、柿の市は、ムクムクと
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて
銭形平次捕物控:318 敵の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
其時
(
そのとき
)
は
先
(
ま
)
づ
人助
(
ひとたす
)
けにずる/″\と
尾
(
を
)
を
引
(
ひ
)
いて
向
(
むか
)
ふで
鎌首
(
かまくび
)
を
上
(
あ
)
げたと
思
(
おも
)
ふと
草
(
くさ
)
をさら/\と
渡
(
わた
)
つた。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
とおい
動揺
(
どよ
)
みが、失神の耳にも通じたものか、そのとき
竹童
(
ちくどう
)
は、ピクリと
鳩尾
(
みぞおち
)
をうごかして、すこし顔を横にふった。その
唇
(
くちびる
)
へ、
白蛇
(
しろへび
)
は銀の
鎌首
(
かまくび
)
をむけて、
緋撫子
(
ひなでしこ
)
のような
舌
(
した
)
をペロリと
吐
(
は
)
く。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四頭の恐竜が、
鎌首
(
かまくび
)
をもたげて、じろりと、こっちを見た。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その
癖
(
くせ
)
恐
(
こわ
)
いもの見たさに
立留
(
たちど
)
まって見ていると、
何
(
なん
)
じゃないか、やがて半分ばかり垣根へ入って、尾を水の中へばたりと落して、
鎌首
(
かまくび
)
を、あの
羽目板
(
はめいた
)
へ入れたろうじゃないか。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
同時に
鎌首
(
かまくび
)
は草の中に消えた。叔父さんは
蒼
(
あお
)
い顔をして、
蛇
(
へび
)
を投げた所を見ている。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
臍
(
へそ
)
の上へ
鎌首
(
かまくび
)
をヒヨイともたげて、赤い
焔
(
ほのほ
)
のやうな舌を
吐
(
は
)
いて居る蛇の
文身
(
ほりもの
)
。
銭形平次捕物控:007 お珊文身調べ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
講釋師
(
かうしやくし
)
の
言
(
い
)
ふ、
槍
(
やり
)
のつかひてに
呪
(
のろ
)
はれたやうだがと、ふと
見
(
み
)
ると、
赤煉蛇
(
やまかゞし
)
であらう、たそがれに
薄赤
(
うすあか
)
い、
凡
(
およ
)
そ
一間
(
いつけん
)
、
六尺
(
ろくしやく
)
に
餘
(
あま
)
る
長蟲
(
ながむし
)
が、
崖
(
がけ
)
に
沿
(
そ
)
つた
納屋
(
なや
)
に
尾
(
を
)
をかくして、
鎌首
(
かまくび
)
が
鷄
(
とり
)
に
迫
(
せま
)
る
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それが暗い雨のふりしきる中に、重たい
縄
(
なわ
)
のような曲線を描いて、向うの土手の上に落ちた。と思うと、草の中からむくりと
鎌首
(
かまくび
)
を一尺ばかり持上げた。そうして持上げたまま
屹
(
きっ
)
と二人を見た。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
大
(
おほき
)
な
蛇
(
へび
)
がのたりと
寐
(
ね
)
て、
私
(
わたし
)
の
方
(
はう
)
へ
鎌首
(
かまくび
)
を
擡
(
もた
)
げた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
鎌
常用漢字
中学
部首:⾦
18画
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
“鎌”で始まる語句
鎌
鎌倉
鎌鼬
鎌足
鎌倉河岸
鎌倉殿
鎌髭
鎌田
鎌入
鎌子