かな)” の例文
そこらの角丸太かくまるたかなづち、切れ物などを、手当り次第に持つと、あわや一かたまりの旋風つむじになって、あとを追いかけようとした。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もつとも、加州かしう金石かないはから——蓮如上人れんによしやうにん縁起えんぎのうち、よめおどしの道場だうぢやう吉崎よしざきみなと小女郎こぢよらう三國みくにつて、かなさきかよ百噸ひやくとん以下いか汽船きせんはあつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
耳は少し遠いようだが、かなツンボというわけではないから、お松がそばにいてあしらってくれればけっこう話の用には立つ。そこで駒井は
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところどころに娘をみつけた父母がかがんでなにかを飲ませてい、枕もとのかなダライに梅干をうかべたうすい粥が、蠅のたまり場となっている。
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
それからかなだらいを出して顔をぶるぶる洗うと、戸棚とだなから冷たいごはんと味噌みそをだして、まるで夢中でざくざく食べました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
子供こどもは、教師きょうし仕打しうちをうらめしくおもいました。そして、たる地上ちじょうに、かなだらいをってちながらかんがえました。
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アメリカの Santa Fe 鉄道の社長エドワアド・ペイスン・リプレイ氏が、ある時かなつんぼの男を自分の会社に雇ひ入れたことがあつた。
蝶々の類に属するもの、うんか、かまきり、かなぶんぶんなどはおときの顔にぶつかったり、髪にとまる事もあった。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
三人の少年は、その糸のような目でにらまれると、まるでかなしばりにでもあったように、じっと立ちすくんだまま、身動きもできなくなってしまいました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お母さんのいらしたとき、自動車が急停車して、私の手首にかけていた傘のかなものの柄が殆ど直角ぐらい曲ってしまったこと、きっとかきませんでしたろうね。
金のふちなしめがねのかな具が、みじかい、上品な曲線をもつ鼻のつけねにくいこんでいる。口は大きく、時にゆるんでいるが、時に突然ほそくなって——ひきしまる。
ですから、せっかく用意よういしてきたかなあんどんや、ちょうちんなどは、はずかしくてだせません。また、たくさんの白米はくまいも、すっかりじゃまものになってしまいました。
近藤相模守は、どこまでもかなつんぼをよそおって、両手を耳のうしろへ立てて、せかせかと膝を進めた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
天井の張ってない湯殿ゆどのはり、看護婦室に薄赤い色をしてかなだらいにたたえられた昇汞水しょうこうすい、腐敗した牛乳、剃刀かみそりはさみ、夜ふけなどに上野うえののほうから聞こえて来る汽車の音
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
火鉢ばかりの店もあればかなだらいや手水鉢ちょうずばちが主な店もあり、ふすま引手ひきてやその他細かいものの上等品ばかりの店もあり、笹屋という刃物ばかりのとても大きな問屋もあった。
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
伯父さんは聾耳つんぼである。つんぼもつんぼもかなつんぼだ。唯話をしたって通じない。お前は馬鹿だよと言っても笑っている。喇叭ラッパのようなものを耳に当てがって、大きな声を出さなければ聞えない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうちに楽隊の音は、のき下からのぞけば見えそうなところまで近づいて来ました。が、こんなとき、うっかりのぞいたりしようものなら、親方のかなづちがこつんと向こうずねにぶつかって来ます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ある金持かねもちは、かなづちをこしにさして、やまかけてゆきました。そして、やまなかに、あたましているいしを、コチン! とっては、いてみました。
「はしごだ。だれか、はしごを持ってこい。それから、長いかなてこを持ってくるんだ。そして、はしごにのぼって、屋根への出入り口を、たたきこわすんだ。」
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
文学的技術は完全ではないが、そう片言でもないので、生活の内容をかなしきとすれば、正しい力の平均でしっかり鎚がうちおろされていなかったからであると思う。
こうは四十にんたらずでしたが、外国がいこくでは、たべものが不自由ふじゆうだろうというので、白米はくまい何日なんにちぶんもふねにつみこんだり、宿やどがくらくてはこまるとおもい、ろうかにつけるかなあんどんや
そのうえ、途々では、のべつ敵の奇襲にあい、河野通縄みちなわ得能通言とくのうみちことらが、数百の兵と共に全滅のやくうなど、さんたる憂き目をなめながら、月の中旬、やっと越前かなさき城へたどりついた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うウむ!——と、鉄より強いじょうかなしばりだ。神尾喬之助のうなり声を耳にすると、台所の片すみにうずくまって、さっきからこの問答を聞いていたお妙が、このとき、わッ! としたのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かなダライにとぶ蠅の羽音だけ
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
「どういうものか、あいつはきらいでな。ひどいめにあわせてくれなけりゃ。」と、叔父おじは、かなづちをにぎって、きたらげつける身構みがまえをしていました。
花の咲く前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
源三郎、かな縛りにあったようにそのままの姿勢です。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
或いは惚れている騎手の名をかなきり声でさけんだ。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女中は湯を「かなだらい」にあけながら
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その物覚ものおぼえのわる子供こどもに、かなだらいにみずれてそれをたせてそとたせることにしました。
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
与吉のやつ、走りながらかな切り声でどなっている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
かなぼとけ
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清吉せいきちは、おのれの欠点けってんと、良心りょうしんくるしめなければならぬ病所びょうしょづいたとき、これからすぐにもかなづちをたずさえて、さっきの場所ばしょへでかけていって、鉄棒てつぼうあたまちからいっぱい
考えこじき (新字新仮名) / 小川未明(著)
これをおもしたが、おとうさんが、よるおそくかえってらしって、歯医者はいしゃいえまえをおとおりになると、往来おうらいめんしたまどに、あかりがついていて、コツ、コツとかなづちをつかっている
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あれは、かみや、かなくずや、こわれたびんのようなものをけているのさ。」
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
シャツなどをひろげたのや、バナナをげて、パン、パンとだいをたたいているのや、小間物こまものならべたのや、そうかとおもうと、かなだらいのなか金魚きんぎょおよがしているのや、いろいろでありましたが
ある夜の姉と弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つばめはんできてかなだらいにまっていいました。
教師と子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)