連中れんじゅう)” の例文
けて働く面々も、すぐり抜きたる連中れんじゅうが腕によりたすきを懸けて、車輪になりて立廻るは、ここ二番目の世話舞台、三階総出そうで大出来なり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、龍睡丸の連中れんじゅうが、酒と絶交している事実を見せていたのだ。外国人は、このことに、まったくびっくりしてしまったのである。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
いったん存在が許されるや、神に氏子、仏に信者、そういうものができるように、取り巻きの連中れんじゅうが現われる。ひどい奴になると利用する。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「しかし靴とはまた考えたものですね。——おい、もうその連中れんじゅうには着物を着せてやれ。——こんな間牒かんちょうは始めてです。」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
隣の連中れんじゅうはよほど世間が広い男たちとみえて、左右を顧みて、あすこにはだれがいる。ここにはだれがいるとしきりに知名の人の名を口にする。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大抵は皆成ろう事ならうちに寝ていたい連中れんじゅうであるけれど、それでも善くしたもので、所謂いわゆる決死連の己達おれたちと同じように従軍して、山をえ川を
先刻さっきから三人四人と絶えず上って来る見物人で大向おおむこうはかなり雑沓ざっとうして来た。前の幕から居残っている連中れんじゅうには待ちくたびれて手をならすものもある。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
というので、気のはやい連中れんじゅうが十七もん松明たいまつをふりたて、そのばんのうちからドンドンドンドン御岳みたけの山へかかってゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吾々われわれ花見連中れんじゅうは何も大阪の火事に利害を感ずることはないから、焼けても焼けぬでも構わないけれども、長与ながよいって居る。しや長与が焼死やけじにはせぬか。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
中には内々ない/\張子連はりこれんなどと申しまして、師匠がどうかしてお世辞の一言ひとことも云うと、それに附込んで口説落くどきおとそうなどと云う連中れんじゅう経師屋きょうじや連だの、あるいは狼連などと云う
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あとは皆小官吏や下級の会社員ばかりで、皆朝から弁当を持って出懸けて、午後は四時過でなければ帰って来ぬ連中れんじゅうだから昼のうちは家内が寂然しんとする程静かだった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
十二月にると急に寒気が増して霜柱は立つ、氷は張る、東京の郊外は突然だしぬけに冬の特色を発揮して、流行の郊外生活にかぶれて初て郊外に住んだ連中れんじゅう喫驚びっくりさした。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あの唱歌会の連中れんじゅうがこの汽車に乗っているだろうか。おれ草臥くたびれてはいるが、病気なようではない。この列車には己よりひどい病気になっているものが幾らもいるだろう。ああ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
それへ持って来て河岸かしや兜町の客筋、新聞記者や文士、新橋柳橋芳町から手伝いに来た連中れんじゅうだけだってすさまじいものだった。——とにかく『矢の倉』の売出すさかりだったんだ。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
皆近所の子で、先夜主人あるじが「ミゼラーブル」の話を聞いて息をのんだ連中れんじゅうである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この連中れんじゅうをまんぞくさせることは、この世の中でおよそむずかしいことでしたから、これはたいしたことでした。つまり、さよなきどりは、ほんとうに、うまくやってのけたわけでした。
そんな連中れんじゅうのなかにお島をおくことの危険なことが、今夜の事実と照合てりあわせて、一層明白はっきりして来るように思えた父親は、いよいよお島を引取ることに、決心したのであったが、迎いが来たことが知れると
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
けれども、そこに立っている、おやといスイス兵の鼻いきは、ぷんとお酒くさいし、ぽおっと赤いほほをしているのを見ても、この連中れんじゅうは、みんな眠っているのだということが、すぐ分かりました。
眠る森のお姫さま (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
一座いちざ連中れんじゅう一晩ひとばんどんなふうにごしたか知りたかったからである。
「とうとう恐ろしい連中れんじゅうの事が発表になっちまったね。」
食堂 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かかりあっていてはろくなことがないとかんがえる連中れんじゅう
すずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどもかたの事だから川よりは平穏だから、万一まさかの事もあるまい、と好事ものずき連中れんじゅうは乗ッていたが、げた者も四五人はッたよ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
悲憤慷慨こうがい気焔きえんを吐く者が多いから、わずと知れた加藤等もその連中れんじゅうで、慶喜さんにお逢いを願う者に違いない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
徳川家とくがわけからでる和田呂宋兵衛わだるそんべえがきのう箱根はこねをとおった。お小姓こしょうとんぼぐみ連中れんじゅうがうつくしい行列ぎょうれつりこんでいった。菊池半助きくちはんすけがいった。やれだれがとおった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船の中の連中れんじゅうは、皆、驚いた。一番、驚いたのは、あたまの上へ落ちられた清元のお師匠さんである。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おい天麩羅を持ってこいと大きな声を出した。するとこの時まですみの方に三人かたまって、何かつるつる、ちゅうちゅう食ってた連中れんじゅうが、ひとしくおれの方を見た。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五人の人数にんずを要する上に、一度かいを揃えて漕出せば、疲れたからとて一人勝手にめる訳には行かないので、横着おうちゃく我儘わがまま連中れんじゅうは、ずっと気楽で旧式な荷足舟にたりぶねの方を選んだ。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
火の燃え付きそうなあたまをして居るものも有り、大小を差した者も有り、大髷おおたぶさ連中れんじゅうがそろ/\花見に出る者もあるが、金がないのでかれないのを残念に思いまして、少しばかり散財ざんざいを仕ようと
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしは連中れんじゅうれてへさきのほうへ退しりぞいた。
金で酒を買い、金でめかけを買い、金で邸宅、朋友ほうゆう従五位じゅごいまで買った連中れんじゅうは金さえあれば何でも出来るさと金庫を横目ににらんでたかくくった鼻先を虚空こくうはるかにえす。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
清長の好んで描く所は浄瑠璃所作事じょうるりしょさごとの図にして役者のうしろ出語でがたり連中れんじゅうを合せ描きたり。この時代の出語を見るに富本常磐津とみもとときわず太夫たゆうにはかみしもを着けず荒きしまの羽織を着たるものあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのほかお小姓こしょうとんぼの連中れんじゅうまでが、総立そうだちになって、裏手うらてへまわってきそうなぶり。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また旧弊な連中れんじゅうは、戦争で人が多く死んだから、生れるのが早い、と云ったそうです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いわんやかの天才と称する連中れんじゅうになると、まず精神病者との間に、全然差別がないと云っても差支えありません。その差別のない点を指摘したのが、御承知の通りロムブロゾオの功績です。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
明石より上陸う不愉快な船中で、如何どうやらうやら十五日目に播州明石あかしついた。朝五ツ時、今の八時頃、明旦あした順風になれば船が出ると云う、けれどもコンナ連中れんじゅうのお供をしては際限がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ハハハハまたあせる。いいじゃないか、さっきの商人見たような連中れんじゅうもいるんだから」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
緑軒の連中れんじゅうじゃあないかな——俺も此処ははじめてだ。乗った電車から戻り気味に、逆に踏切を一つ越すッてこッたで、構わずその方角へやっつけよう。……半分寝ている煙草屋なんぞで道を
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「奥さん、月並と云うのはね、まず年は二八か二九からぬと言わず語らず物思いのあいだに寝転んでいて、この日や天気晴朗とくると必ず一瓢を携えて墨堤に遊ぶ連中れんじゅうを云うんです」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
和蘭陀オランダのは騒がなかつたが、蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん酋長しゅうちょうは、帯を手繰たぐつて、長剣のつかへ手を掛けました。……此のお夥間なかまです……人の売買うりかいをする連中れんじゅうは……まあね、槍は給仕が、此もあわてて受取つたつて。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
細君もほとんど何にも買わないといってよかった。彼の兄、彼の姉、細君の父、どれを見ても、買えるような余裕のあるものは一人もなかった。みんな年を越すのに苦しんでいる連中れんじゅうばかりであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
野々宮君は愉快そうに、この連中れんじゅうを見ている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あの連中れんじゅうは世の中を何と思ってるだろう」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)