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躊躇
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ためら
ふりがな文庫
“
躊躇
(
ためら
)” の例文
しかもそれを眺めながらもまだ
躊躇
(
ためら
)
っている私を見ると、この世慣れた探偵はもうそれ以上、私のために余計な口数は弄さなかった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
行かぬといへば何となく済まぬ様なりて、少しく
躊躇
(
ためら
)
つて居ると、母も出て参り升たから、母に頼んで諦めて
貰
(
も
)
らはうと思ひつき升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
しばらく
躊躇
(
ためら
)
ったけれど、本当のことをいってしまう以外に、私の驚きの意味を、この男に呑込ませることは出来まいと思った。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
木剣を木綿袋に入れて通う辰雄は、ひとなみの剣舞師の習得で少しも
躊躇
(
ためら
)
わないで、袴の股立ちを取って剣の舞いを演じていた。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「今日」と、お宮は
嬉
(
うれ
)
しさを包みきれぬように
微笑
(
わら
)
い徴笑い「これから?
遅
(
おそ
)
かなくって?」行きとうもあるし、
躊躇
(
ためら
)
うようにもいった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
▼ もっと見る
渋沢の熱心には
衝
(
う
)
たれながら、露八の頭には、お菊ちゃんだの、お喜代だの、お蔦だの、女たちの影が
映
(
さ
)
して決意を
躊躇
(
ためら
)
わせた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
躊躇
(
ためら
)
つてゐたらしい静子が、信一郎の顔を見ると、艶然と笑つて、はち切れさうな嬉しさを抑へて、いそ/\と駈け降りて来るのであつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
餘り氣にかゝるので、竹丸は納戸の前まで忍び足で行つて、幾度か
躊躇
(
ためら
)
ひつゝ、青地に金粉で
龍
(
りよう
)
の丸をおいた襖を細目に開けて内を
覗
(
のぞ
)
いた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
阿母さんも居ない
留守
(
るす
)
に兄を
逃
(
にが
)
して遣つては、
何
(
ど
)
んなに阿父さんから
叱
(
しか
)
られるかも知れぬ。貢さんは
躊躇
(
ためら
)
つて
鼻洟
(
はなみづ
)
を
啜
(
すヽ
)
つた。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
十分間、私は、心をどきつかせながら、
躊躇
(
ためら
)
つて立つてゐた。朝食堂のけたゝましい
呼鈴
(
ベル
)
の音が、私を決心さした。もう這入るより仕方がない。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
せっかくの思に、
袖
(
そで
)
振り交わして、
長閑
(
のどか
)
な
歩
(
あゆみ
)
を、春の
宵
(
よい
)
に
併
(
なら
)
んで移す当人は、依然として近寄れない。小夜子は何と返事をしていいか
躊躇
(
ためら
)
った。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
なにかしばらく
躊躇
(
ためら
)
っていたが、やがて、逃げるように出てゆくと、たちまち街路のむこうへ見えなくなってしまった。
金狼
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
何の御用と問はれて稍〻、
躊躇
(
ためら
)
ひしが、『
今宵
(
こよひ
)
の御宴の
終
(
はて
)
に春鶯囀を舞はれし
女子
(
をなご
)
は、何れ中宮の
御内
(
みうち
)
ならんと見受けしが、名は何と言はるゝや』
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
唐義浄訳『
根本説一切有部毘奈耶破僧事
(
こんぽんせついっさいうぶびなやはそうじ
)
』巻十五に昔
波羅痆斯
(
はらなし
)
城の貧人山林に樵して一
大虫
(
とら
)
に逢い大樹に上ると樹上に熊がいたので
怕
(
おそ
)
れて
躊躇
(
ためら
)
う。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
火柱がしばらく
躊躇
(
ためら
)
っていた。だが、ユラユラと左右へ揺れた。東に向かって歩き出した。武田
左典厩
(
さてんきゅう
)
の屋敷の方へ、辻を曲がって行くらしかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しばらく
躊躇
(
ためら
)
っていたが、君子に、お前はしばらくここに待っているのだよ、お母さんはすぐに出てくるから、と言っていやがる君子をそこに待たせて
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
いや、
取止
(
とりと
)
めて何も考えてなんかいなかったようです。唯、悠々と
躊躇
(
ためら
)
わずに、玄関の
呼鈴
(
ベル
)
を鳴らすと、やがて門が開きました。
瓦斯
(
ガス
)
は消えていました。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
そこにはもはや技術への
躊躇
(
ためら
)
いがなく、意識への患いがないのです。この繰り返しこそは、すべての凡人をして、熟達の域にまで高めしめる力なのです。
民芸とは何か
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
座蒲団火鉢茶菓それから手を突てお肴はと尋ねるに、袂の巻烟草を出しかけて、さて何と
云
(
いっ
)
たものかと
躊躇
(
ためら
)
って居ると、見繕いましょうかと
云
(
いわ
)
れたので
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
洗
(
あら
)
ひて
上
(
あが
)
りくれよとは
扨
(
さて
)
も
意外
(
いぐわい
)
わからぬといへば
是
(
こ
)
れ
程
(
ほど
)
わからぬ
話
(
はなし
)
はなし
何
(
なん
)
とせば
宜
(
よ
)
からんかと
佇立
(
たゝづみ
)
たるまゝ
躊躇
(
ためら
)
へば
樓婢
(
ろうひ
)
はもどかしげに
急
(
いそ
)
がしたてゝ
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
藻西太郎に
逢
(
あっ
)
て見んとは
素
(
もと
)
より余の願う所ろ何かは以て
躊躇
(
ためら
)
う
可
(
べ
)
き、早速目科に従いて又もや此家を走り
出
(
いで
)
たり
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
伊助の潔癖は登勢の白い手さえ汚いと
躊躇
(
ためら
)
うほどであり、新婚の甘さはなかったが、いつか登勢にはほくろのない顔なぞ男の顔としてはもうつまらなかった。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
もウ棄ててはおかれぬ、そッと隣座敷まで往ッてはいろうか、はいるまいか、と
躊躇
(
ためら
)
いながら客座敷の様子を伺うと、娘は面白そうにしきりに何か話していた。
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
些
(
すこ
)
し
躊躇
(
ためら
)
ッていて、「チョッ言ッてしまおう」と
独言
(
ひとりごと
)
を言いながら、
急足
(
あしばや
)
に二階を降りて
奥坐舗
(
おくざしき
)
へ立入る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
私達はその柵の中へはいろうとしかけながら、誰からともなしに少し
躊躇
(
ためら
)
い出していた。そうして三人でちょっと顔を見合せて、困ったような薄笑いをうかべた。
木の十字架
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
彼は、畫室を出ることを定めて了つて、入口の
扉
(
ドーア
)
に手まで掛けたが、さて其の手を引つ込めて
躊躇
(
ためら
)
つた。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
むら消えの雪間に咲きこぼれた
白山小桜
(
はくさんこざくら
)
の花が、若草の野に立って歌を謡っている少女の頬のように美しい。私は
躊躇
(
ためら
)
いながら其一片を摘んでそっと口にあてた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
志津は「机は次手に頂いて行きます」と口先迄言葉が出かかり乍ら
躊躇
(
ためら
)
った。気軽く云って仕舞へば何んでもなささうに思ひ乍ら圧されるやうで云ひ出せなかった。
夏蚕時
(新字旧仮名)
/
金田千鶴
(著)
だが、おれはまだ參内を
躊躇
(
ためら
)
つてゐる——今だに西班牙から使節がやつて來ないのだ。使節も從へないでは體裁が惡い。第一、おれの身分にいつかう威嚴が添はぬ。
狂人日記
(旧字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
真の恋は
躊躇
(
ためら
)
い、怖れるかと申しまして、
私
(
わたくし
)
も確とした意見も言わず、あやふやに過して参りました。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
……又四郎はちょっと
躊躇
(
ためら
)
いを感じたが、思いきって案内を乞うと、
妖婆
(
ようば
)
のような女が顔を出して
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
不思議の力ありて彼を前より招き
後
(
あと
)
より
推
(
お
)
し
忽
(
たちま
)
ち彼を走らしめつ、彼は
躊躇
(
ためら
)
うことなく門を入った。
富岡先生
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
とこう想い浮べましたら、
遽
(
にわか
)
に身の毛が
弥起
(
よだ
)
って、手も足も烈しく震えました。ふらふらとして其処へ
仆
(
たお
)
れそうにもなる。とても
躊躇
(
ためら
)
わずにはいられませんのでした。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私
(
わたくし
)
がいささか
躊躇
(
ためら
)
って
居
(
お
)
りますと、
指導役
(
しどうやく
)
のお
爺
(
じい
)
さんが
直
(
ただ
)
ちに
側
(
そば
)
から
引
(
ひ
)
きとって
言
(
い
)
われました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
われは
函嶺
(
かんれい
)
の東、山水の威霊少なからぬところに
産
(
うま
)
れたれば、我が故郷はと問はゞそこと答ふるに
躊躇
(
ためら
)
はねども、往時の産業は破れ、知己親縁の風流雲散せざるはなく
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
新三郎は一度は
唸
(
うな
)
って
躊躇
(
ためら
)
いましたが、次の瞬間には、障子に手を掛けるとサッと引開けました。
銭形平次捕物控:006 復讐鬼の姿
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
靜子は妙に
躊躇
(
ためら
)
つた上で、急いで又
離室
(
はなれ
)
に來た。一枚殘した雨戸から、丁度吉野が上るところ。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
言葉にも物腰にも
深窓
(
しんそう
)
育ちが
窺
(
うかが
)
われ、いまも
躊躇
(
ためら
)
ったような
初心初心
(
うぶうぶ
)
しい言いかたをする。
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と
謂
(
い
)
うに任せ、
渠
(
かれ
)
は少しも
躊躇
(
ためら
)
わで、静々と歩を廊下に運びて、やがて寝室に伴われぬ。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
陽子はちょっと
気後
(
きおく
)
れがしたように
躊躇
(
ためら
)
っていたが、兄を顧みて口早に云うのだった。
梟の眼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
さうだとすれば、昨日の晩も、一昨日の晩も、夜な/\此の二階の窓の近くへ忍び寄つて、入れて貰はうかどうしようかと
躊躇
(
ためら
)
ひながら、中の様子を
窺
(
うか
)
がつてゐたのかも知れない。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
乳母
(
おも
)
も、
子古
(
こふる
)
も、凡は無駄な伺ひだと思つては居た。ところが、郎女の返事はこだまかへしの様に、
躊躇
(
ためら
)
ふことなしにあつた。其上此ほど、はつきりとした答へはないと思はれた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
彼女は何物が天より
降
(
ふ
)
り来りしとように驚きつつ、拾いとりてまた
暫
(
しば
)
し
躊躇
(
ためら
)
いたり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私の名前を呟くことによつて自分の心を空虚の中から探し出さうとするやうに、そして又、おどおどと怯えきつた様をして、私の気勢を怖れるやうに
躊躇
(
ためら
)
ひ乍ら、長く佇むのであつた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
やがて男は名残惜し気に
幾度
(
いくたび
)
か
躊躇
(
ためら
)
いつつも漸くに気を取直し地に落ちた手拭に再び顔をかくして立上ると、女も同じく落ちたる
櫛
(
くし
)
に
心付
(
こころづき
)
ながら乱れた姿を恥らう色もなく
少時
(
しばし
)
寄添い
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
偖
(
さて
)
其次席に
列
(
つら
)
なれる山木梅子が例の質素の
容子
(
ようす
)
を見て、
暫
(
しば
)
し
躊躇
(
ためら
)
ひつ「山木様は独立で、婦人社会の為に
御働
(
おはたらき
)
なさらうと云ふ御志願で、
特
(
こと
)
に
阿父
(
おとつさん
)
は屈指の紳商で
在
(
いら
)
つしやるのですから」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
のぶちゃんも不安と期待に眼を輝かせたが、ちょっと
躊躇
(
ためら
)
うように
桜林
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
木之助は店にはいって行って、ちょっと
躊躇
(
ためら
)
いながら、いった。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
わたしの魂よ、
躊躇
(
ためら
)
はずに答へるがよい、お前の決心。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
セエラは答える前に、ちょっと
躊躇
(
ためら
)
いました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
“躊躇”の意味
《名詞》
躊 躇(ちゅうちょ)
決心がつかず、迷うこと。
《動詞》
躊 躇 する(ちゅうちょ-する)
決心がつかず、迷う。
(出典:Wiktionary)
躊
漢検1級
部首:⾜
21画
躇
漢検1級
部首:⾜
19画
“躊躇”で始まる語句
躊躇逡巡