おどり)” の例文
雌鳥めんどりを前にあらゆる工夫と努力を傾け尽して、求愛のおどりを踊り続ける雄鳥おんどりのように真に精根を傾け尽して、精根限り喋って居たのです。
ここは麦屋節むぎやぶしとそのおどりとでも名をなしますが、用いる品々も特色があり、竹細工や桜皮の編物なども忘れ難いものであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
障子しょうじを取り払ったその広間の中を見上げると、角帯かくおびめた若い人達が大勢おおぜいいて、そのうちの一人が手拭てぬぐいを肩へかけておどりかなにかおどっていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この言葉のうち、神楽かぐらの面々、おどりの手をめ、従って囃子はやし静まる。一連皆素朴そぼくなる山家人やまがびと装束しょうぞくをつけず、めんのみなり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甚「そりゃアおめえおどりの衣裳だろう、御殿の狂言の衣裳の上に坊主のかつらが載ってるんだ、それをおめえが押えたんだアナ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
松江しょうこうはそういいながら、きゃしゃな身体からだをひねって、おどりのようなかたちをしながら、ふたたかがみのおもてにびかけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その性根で用意したまつりおどりに行く時の一張羅いっちょうらを二人はひっぱって来た。白いものも洗濯したてを奮発ふんぱつして来た。
売春婦リゼット (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
麦藁帽子をかぶらせたら頂上てっぺんおどりを踊りそうなビリケンあたまが入っていて、これも一分苅ではない一分生えの髪に、厚皮あつかわらしい赭いが透いて見えた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
甲谷は宮子に追いついて二人で組むと、おどりの群れの中へ流れていった。宮子は甲谷の肩に口をあててささやいた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
村の鎮守ちんじゅ草相撲くさずもうぼんおどりなどもみなそれで、だから児童はこれを自分たちの遊びと思い、のちにはそのために、いよいよ成人が後へ退いてしまうのである。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
乱暴な男声の合唱がそれに交って聞えて来る。尻が揺れ、腰にまとった布片がざわざわと揺れる。おどりから少し離れた老人たちの中心に、酋長しゅうちょうらしい男が胡坐あぐらをかいている。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
義元死後も朝比奈兵衛大夫のほか立派な家老も四五人は居るのであるが、氏真、少しも崇敬せずして、三浦右衛門義元と云う柔弱にゅうじゃくの士のみを用いて、おどり酒宴に明け暮れした。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
しゆまじはればといふことはなのお師匠ししようくせにしてせどもほんにあれはうそならぬことむかしはのやうに口先くちさきかたならで、今日けふ何處开處どこそこ藝者げいしやをあげて、此樣このやう不思議ふしぎおどりたのと
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
う詩が出来ました。これを見ると私が変人のようにあるが、実は鳴物なりものはなはだ好きで、女の子には娘にも孫にも琴、三味線を初め、又運動半分におどりの稽古もさせて老余唯一の楽みにして居ます。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
柏の木はみんなおどりのままの形で残念そうに横眼で清作を見送りました。
かしわばやしの夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その祝言ほぎごとも、ただ口で目出たい事を述べるだけでは不十分でありますから、節を付けて面白く歌うとか、それを楽器に合わすとか、手振り・身振りを加えて所謂おどりをするとか、人形をまわすとか
踊りたい程おおどりなさい。それから御馳走を
四五人に月落ちかゝるおどりかな
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
あしべおどり
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
おどり
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
……その弁慶が、もう一つ変ると、赤い顱巻はちまきをしめたたこになって、おどりを踊るのですが、これには別に、そうした仕掛しかけも、からくりもないようです。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これに反しておどりにはりがあり、また際限もなくくり返されて、だんだんと印象を成長させる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その他芝居やおどりや音楽は日々行われ、それが地方的なものであるだけ、また古い歴史を持つだけ、大切なものであるのはいうまでもありません。まして美しいのでありますから。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
芸を仕込めば物覚えが悪く、其の上感所かんどころが悪いもんだから、ばちのせいじりで私は幾つったか知れません、おどりを習わせれば棒を呑んだ化物ばけものを見たように突立つッたッてゝしょうが無かったのを
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これはまた、うどんをねているようなおどりの隙から、楽手たちの自棄糞やけくそなトランペットが振り廻されて光っていた。すると突然、山口は踊りの中の一人の典雅な支那婦人を見付けて囁いた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「さあ買ってお呉れ。買わなかったらおどりをやるぜ。」
あるお方とはすばしこくおおどりだったし
それが、見世もののおどりを済まして、寝しなに町の湯へ入る時は、風呂のふちへ両手を掛けて、横に両脚りょうあしでドブンとつかる。そして湯の中でぶくぶくと泳ぐと聞いた。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
翌十五日には、ここで飯をき、村の若者連のおどり芝居しばいをする組に送る例になっている。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……おどりもよほしとへば、園遊會ゑんいうくわいかなんぞで、灰色はひいろ黄色きいろ樺色かばいろの、いたちきつねたぬきなかにはくまのやうなのもまじつた大勢おほぜいに、引𢌞ひきまはされ、掴立つかみたてられ
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
現代の島人たちに、最も印象のいのは八月おどりであるが、是には始めからまった日はなく、むしろ他の色々の行事の少ない日を拾って、この月中は何度でも踊ったようである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
銀六も健かに演劇しばい真似まねして、われはあわれなる鞠唄うたいつつ、しのぶとおどりなどしたりし折なり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おどりその他の色々の催しをとものうて、力の入れかたが格別であった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この芸妓げいしゃは、昨夜ゆうべ宴会えんかい余興よきょうにとて、もよおしのあった熊野ゆやおどりに、朝顔にふんした美人である。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
俊徳丸しゅんとくまるの物語のつゞき、それから手拭てぬぐいやぶへ引いて行つた、おどりをするさんといふ猫の話、それもこれも寝てからといふのであつたに、つまらない、さびしい、心細い、私は帰らうと思つた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「芸妓が化けたんだ、そんな姿でおどりでも踊っていたろう。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何じゃ、骸骨が、おどりを踊る。」
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)