記念きねん)” の例文
歴史的れきしてきにいろ/\な記念きねんのあるこの春日野かすがので、自分じぶん若菜わかなんでゐると、むかしひとも、かうして若菜わかなんでゐたのだから、うっかりすると
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
宗助そうすけしもんで、この記念きねんおほ横手よこてときかれ細長ほそなが路次ろじ一點いつてんちた。さうしてかれかよはないさむさのなかにはたとまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もとより些細ささいのことながら萬事ばんじしてくのごとけむ、向後かうご我身わがみつゝしみのため、此上このうへ記念きねんとして、鳥籠とりかごとこゑ、なぐさみとなすべきぞ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ちょうど、いのきちのまれたあさ、おじいさんが、うらの谷で大きなイノシシをうちとめたので、その記念きねんに、いのきちという名をつけられたのだという。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
そして、また、いつまでも自分じぶん記念きねんにして、しまっておくようなものが、なにかつからないものかとおもって、まち両側りょうがわをながめながらあるいていました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先生はよろこんで、記念きねんの写真をとろうといい、近所きんじょの写真屋さんをたのんで、一本松まで出かけた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「わたしたちはこれまで、知らないよその人のためにばかり音楽をやっていた。さあこの記念きねん席上せきじょうでわたしたちのあいする人びとのために音楽をやろうじやないか」
見物人けんぶつにん容易たやすくこれをけて記念きねんにもし、また後日こうじつおもいとぐちにもなるようになつてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
但右の養蚕家入門中、桑を切るとて大きな桑切庖丁を左のてのひら拇指おやゆびの根にざっくり切り込んだ其疵痕きずあとは、彼が養蚕家としての試みの記念きねんとして今も三日月形に残って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さうだ! わたし看護婦さんにリボンもらつたんだけれど おわかれの記念きねんにあげるものないわ
へびかへる蟲類むしるゐ假死かし状態じやうたいあひだ彼等かれら目前もくぜんせまつて未來みらいくるしみをまねために、過去くわこくるしかつた記念きねんである缺乏けつばふしたこめむぎごと消耗せうまうしてくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ことに旧政府時代の外交がいこうは内治に関係かんけいすることもっとも重大じゅうだいにして、我国人の記念きねんそんすべきものもっとも多きにもかかわらず、今日すでにその事実じじつを失うは識者の常に遺憾いかんとするところなりしに
二人ふたり苦労くろうを一つにしてきたのに、おまえは自分じぶん一人ひとり幸福こうふくのために、たいせつな記念きねんうしなっていいのか?
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
雪難之碑せつなんのひ記念きねんださうであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
子供こどもたちは、おとうさんが、ちいさな時分じぶん、この野原のはらけまわって、あそんだ姿すがたなどをいろいろに想像そうぞうしました。そして、いい記念きねんにと、すずらんのはなってかえったのでした。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
むすめは、あかいろうそくを、自分じぶんかなしいおも記念きねんに、二、三ぼんのこしていったのであります。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むすめは、だまって、それをていましたが、この人形にんぎょうこそ自分じぶんってかえって、ながあいだわすれがたい記念きねんにしようとおもいました。そこで、彼女かのじょ店先みせさきけて、なかはいりました。
気まぐれの人形師 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「こうして、自分じぶんにはいったのだから、てずに、記念きねんとしてってゆこうか。」
トム吉と宝石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうさんからも、先生せんせいからも、とめられて、ついみんなが、やめてしまったが、ただ記念きねんにしようとおもって、これだけすてずに、かみつつんで、しまっておいたことを、おもしました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
そののちのことでありました。息子むすこは、よるとこなかにはいってから、れたくさや、ってきたいしのことをおもしました。せめてあのいしなりと大事だいじにして、記念きねんにしておこうとおもいました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このかがみのかけらをつけて、ひろいあげると、おりからそらにあらわれたあかくもがうつって、わたしは、おねえさんのすがたをおもいだしたので、記念きねんにしようとポケットにれたが、かんがえれば
はたらく二少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)