船出ふなで)” の例文
わたしが、お約束やくそくをいたします。いさましい、とお船出ふなでから、あなたのおかえりなさるを、氏神かみさまにご無事ぶじいのって、おちしています。」
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩も水も真白な日当ひあたりの中を、あのわたしを渡って見ると、二十年の昔に変らず、船着ふなつきの岩も、船出ふなでの松も、たしかに覚えがありました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
河内かふち」は、河からめぐらされている土地をいう。既に人麿の歌に、「たぎつ河内かふち船出ふなでするかも」(巻一・三九)がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
どう今日きょう船出ふなで寿ことほったのもほんのつか、やや一ばかりもおかはなれたとおぼしきころから、天候てんこうにわかに不穏ふおん模様もようかわってしまいました。
三位卿は膝もくずさず、時々、うしろの自鳴鐘とけいをふりかえっていた。眼のさえた啓之助の頭には、船出ふなでのことと一緒に、お米の姿が描かれてくる……。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俺は、それお特得はこの、「親々おやおやいざなはれ、難波なにわうら船出ふなでして、身を尽したる、憂きおもひ、泣いてチチチチあかしのチントン風待かぜまちにテチンチンツン……」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
咸臨丸かんりんまるは、万延まんえんがん(一八六〇)ねんがつ十九にち使節しせつたちをのせたふねよりも一足ひとあしさきに浦賀うらが船出ふなでしました。
第二番だいにばんに、車持皇子くらもちのみこは、蓬莱ほうらいたまえだりにくといひふらして船出ふなでをするにはしましたが、じつ三日目みつかめにこっそりとかへつて、かね/″\たくんでいたとほり、上手じようず玉職人たましよくにんおほせて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
せめて船出ふなでのその日には、涙ながして、おくりませう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
みなみしま船出ふなでせし
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
羅馬ロオマ船出ふなでせし
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
いもうとは、にいさんといっしょになって、船出ふなでゆるしをおじいさんにたのんだものの、あにうえあんじられてしかたがありませんでした。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみだはらつて——唯今たゞいま鸚鵡あうむこゑは、わたくし日本につぽん吹流ふきながされて、うしたります、船出ふなで夜中よなかに、歴然あり/\きました……十二一重じふにひとへはかまさせられた
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
山川やまかはもよりてつかふるかむながらたぎつ河内かふち船出ふなでするかも 〔巻一・三九〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
おじいさんは、まごがいよいよ船出ふなでをするというので、よるもおそくまできていて、ふねっていました。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
れば平日ひごろまでに臆病おくびやうならざるはいも、船出ふなでさいかく縁起えんぎいはひ、御幣ごへいかつぐもおほかり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もし、ひとらないしま発見はっけんしたいというようなおかんがえをもたれたら、一外国がいこくわたって、学問がくもんをして、それから、とおい、とおい、船出ふなでをしなければなりません……。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
可悲かなしい、可恐おそろしい、滅亡めつばう運命うんめいが、ひとたちのに、暴風雨あらしつて、天地てんちとともに崩掛くづれかゝらうとするまへよる、……かぜはよし、なぎはよし……船出ふなでいはひに酒盛さかもりしたあと、船中せんちうのこらず
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろが、できがって、それがふねられたのです。そして、あるあさ若者わかものは、いもうとや、おじいさんに見送みおくられて、この海岸かいがんからおきをさして船出ふなでしたのであります。
一本の銀の針 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「こんど、とお船出ふなでをして、かえってきたら、結婚けっこんをしようとおもっているが、だれか、約束やくそくをしてくれるおんなはないだろうか。」と、若者わかものがいいました。彼女かのじょは、もとよりおどろきました。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)