目前まのあたり)” の例文
……次第しだいちか此処こゝせまやまやまみねみねとのなかつないで蒼空あをぞらしろいとの、とほきはくも、やがてかすみ目前まのあたりなるは陽炎かげらふである。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
打惑うちまどひてりかねたる彼の目前まのあたりに、可疑うたがはしき女客もいまそむけたるおもてめぐらさず、細雨さいうしづか庭樹ていじゆちてしたたみどりは内を照せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼の聴水が所業しわざなること、目前まのあたり見て知りしかば、いかにも無念さやるせなく。ことにはかれは黄金丸が、倶不戴天ぐふたいてんあだなれば、意恨はかの事のみにあらず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
目前まのあたり見ての憂ひよりは想像おもひやりにこそ苦はまされ、別條ことなることなきよしを知らせて、其さまざまに走しる想像の苦を安めたし
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
帳場へ飛び込むと提灯を借り、火を灯もすと駈けだしたが、奇怪な活劇を目前まのあたりに見ようとは想像しなかったろう。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さるを君と我とを遠ざくべき大いなる不幸の、忽ち目前まのあたりに現れたるを見て、我胸はふさがり我舌は結ぼれ、私は面を手負てをひの衣に隱しゝひまに、君は見えずなり給ひぬ。
それを知らない健三ではなかったが、目前まのあたりこの猛烈な咳嗽せきと消え入るような呼息遣いきづかいとを見ていると、病気にかかった当人よりも自分の方がかえって不安で堪らなくなった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五年振で此市に來て目前まのあたり觀察した種々の變遷と、それを見た自分の感想とを叙べ、又此市と自分との關係から、盛岡は美しい日本の都會の一つである事、此美しい都會が
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
目前まのあたり鯉魚りぎょ神異しんいを見た、怪しき僧の暗示と讖言しんげんを信じたのであるから、今にも一片の雲は法衣のそでのやうに白山のまゆひるがえるであらうと信じて、須叟しばしを待つ
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たふとく優くも、高くうるはしくも、又は、まつたくも大いなる者在るを信ぜざらんと為るばかりに、一度ひとたび目前まのあたりるを得て、その倒懸の苦をゆるうせん、と心くが如く望みたりしを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
五年振でこのに来て目前まのあたり観察した種々の変遷と、それを見た自分の感想とを叙べ、又このと自分との関係から、盛岡は美しい日本の都会の一つである事、此美しい都会が
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし今目前まのあたり見たその人は、あまり裕福な境遇にいるとは誰が見ても決して思えなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
目前まのあたりお蘭さまと物いふにつけて、分らぬ思ひは同じ處を行めぐり行めぐり、夢に見たりし女菩薩をお蘭さまとれば、今見るお蘭さまは御人かはりて、我れに無情つれなしとなけれど一重隔ての中垣や
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
許多あまた聖者しやうじや獻身者の像にして、下より望み見るべからざるものは、新に我目前まのあたりに露呈し來れり。われは絶頂なる救世主の巨像の下に到りぬ。ミラノ全都の人烟は螺紋らもんの如く我脚底に畫かれたり。
かつはこのほどより乳房れて、常ならぬ身にしあれば、おっと非業ひごう最期さいごをば、目前まのあたり見ながらも、たすくることさへ成りがたく、ひとり心をもだへつつ、いとも哀れなる声張上げて、しきりにえ立つるにぞ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
「その百姓の凄じさ、わしは目前まのあたり今はじめて見た。……牧野殿」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
目前まのあたり鯉魚りぎょの神異を見た、怪しき僧の暗示と讖言しんげんを信じたのであるから、今にも一片の雲は法衣の袖のように白山の眉に飜るであろうと信じて、しばしを待つ
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恐くは我が至誠のかがみは父が未然を宛然さながら映しいだしてあやまらざるにあらざるかと、事の目前まのあたりの真にあらざるを知りつつも、余りの浅ましさに我を忘れてつとほとばし哭声なきごゑは、咬緊くひしむる歯をさへ漏れて出づるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
昨夜ゆうべの事の不思議より、今目前まのあたりの光景を、かえって夢かと思うよう、恍惚うっとりとなったも道理。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ながむれば、幼い時のその光景ありさま目前まのあたりに見るようでもあるし、また夢らしくもあれば、前世がうさぎであった時、木賊とくさの中から、ひょいとのぞいた景色かも分らぬ。待て、こいねがわくは兎でありたい。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お若が目前まのあたりに湯を取りに来たことも、しかもまくり手して重そうに持って湯殿のかたへ行ったことも、知っていたが、これよりさき朦朧もうろうとして雪ぢらしの部屋着をた、品のい、脊の高い
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恐らく我国の薬種やくしゅで無からう、天竺てんじく伝来か、蘭方らんぽうか、近くは朝鮮、琉球りゅうきゅうあたりの妙薬に相違ない。へば房々ふさふさとある髪は、なんと、物語にこそ謂へ目前まのあたりいたらすそなびくであらう。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こうがいを質に入れたなどと話していると、はるかに東のかたよりむら立つ雲もなく、虚空こくうを渡るがごとく、車の駆来る音して、しばらくの間に目前まのあたりへ近づいたのを見ると、あら、可恐おそろし、素裸すはだ荒漢あらおとこ、三人
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わずかに解いた唇に、艶々つやつや鉄漿かねを含んでいる、幻はかえって目前まのあたり
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
老爺ぢいは、さすがに、まだ気丈きじやうで、対手あひてまでに、口汚くちぎたなののしあざける、新弟子しんでしさく如何いかなるかを、はじめて目前まのあたりためすらしく、よこつてじつて、よわつたとひそかたで、少時しばらくものもはなんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかし目前まのあたり歴然ありありとその二人を見たのは、何時いつになっても忘れぬ。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし目前まのあたり歴然あり/\二人ふたりたのは、何時いつつてもわすれぬ。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)