“皎々:こうこう” の例文
“皎々:こうこう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治9
泉鏡花5
海野十三5
宮本百合子3
永井荷風3
“皎々:こうこう”を含む作品のジャンル比率
歴史 > 地理・地誌・紀行 > アジア50.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
始終薄暗かったランプがいつも皎々こうこうと明るくともされて、長火鉢も鼠不入ねずみいらずも、テラテラ光っている。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
或年の除夜翌朝父の墓前に捧ぐべき蝋梅ろうばいの枝をろうとわたしは寒月皎々こうこうたる深夜の庭に立った。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
小綺麗で絶品という感じはしたが、この屋敷には、皎々こうこうたる陰気さとでもいうような雰囲気がみなぎっていた。
衣打つらんきぬたの声、かすかにきこえて、雁音かりがねも、遠く雲井に鳴交わし、風すこし打吹きたるに、月皎々こうこうと照りながら
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
医院はまだ宵の口なので、大きなラムプが部屋にりさげられてあって光は皎々こうこうと輝いていた。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
八重は夜具を敷く前、塵を掃出すために縁側えんがわの雨戸を一枚あけると、皎々こうこうと照りわたる月の光に、樹の影が障子しょうじへうつる。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これが闇の夜ならばとにかく、皎々こうこうたる満眼の月夜であるだけに、お雪は物凄いと思いました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし何しろ秋の夜の空はぬぐった様に晴れ渡って、月は天心てんしん皎々こうこうと冴えているので、四隣あたりはまるで昼間のように明るい。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
おさな心に残っているのは皎々こうこうたるらんぷと、杉の葉と、白いテーブルクロースだった。
月は皎々こうこう と寒天に輝いて自分の野宿して居る前を流れて居る川にうつっているです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
皎々こうこうたる月の光の下に、白い梅の花が咲いているという、見るからに寒い感じの句である。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
畑のむこうの杉林の梢のところが黒々と瀧子の白地に朝顔を出した浴衣の肩のあたりを横切ってうつっていて、その上の空に月が皎々こうこうと輝きながら泛んでいる。
鏡の中の月 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その時はもう雪も止んで、十四日の月が皎々こうこうとして中天ちゅうてんに懸っていた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
大隅学士は、皎々こうこうと照りわたる月のおもてを仰いで誰に云うともなく呟いた。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
皎々こうこうたる寒月の下、船を押す人の姿が沙上に黒々とうつっているような気がする。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
月は絶えず彼の鼻の上にぶらさがったまま皎々こうこうとして彼の視線を放さなかった。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
二人は不思議に思って蚊帳かやを抜け出した。鷹の巣山の真上に皎々こうこうたる月がある。木剣の音は拝殿の前、二人はその床下の蔭に添ってそッと広前をさしのぞいた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城の石垣に大きな電灯がついていて、後ろの木々に皎々こうこうと照っている。その前の木々は反対に黒ぐろとしたかげになっている。その方で蝉がジッジジッジと鳴いた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
夜の広い畳の上に、明るさ、皆の口をつぐんだ沈黙が、皎々こうこうと漲った。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
数秒後に、皎々こうこうと電燈がついた。しかし下座の奥手には誰の姿もなかった。
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
三十年の体験にもなかった苦闘の熱地に立たせ、塙家はなわけの幸福を、暴風的にくつがえした大悪魔は、この夜、皎々こうこうえた名月のちまたに、初めて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐瀬の宅は築地橋つきじばしに近い河岸沿いの宅で、通されたのは西洋館の広々とした応接室、飾のついた電燈が皎々こうこうと、四辺あたりの贅沢な調度品を照らして居た。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
皎々こうこうとして、夏も覚えぬ。夜ふけのつゝみを、一行は舟を捨てて、なまずと、ぼらとが、寺詣てらまいりをするさまに、しよぼ/\と辿たどつて帰つた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
折敷おしきには乾肴ほしざかな、鶴くびの一壺には冷酒。あれこれのぜいはなくても陣中の小閑を楽しむには充分である。——まして皎々こうこう一輪の月は頭上にある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先の者がここの焚き火を見て見当をつけて来るように、日本左衛門もやおら立ち上がッて、皎々こうこうたる月光に、それが待つ者であることを遠くから読んでいたようであります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
氷のような月が皎々こうこうえながら、山気が霧に凝って包みます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのときは——そうです、満月まんげつ皎々こうこうと照っていました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
また、皎々こうこうとしたつき下界げかいらしていました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
寒月は皎々こうこうとして、泗水しすいの流れを鏡の如く照り返している。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皎々こうこうの月も更け、夜気はきわだって冷々ひえびえとしてきた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただ、ただ今も失わないのは、皎々こうこうぺんの赤心のみ。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つむぎの座蒲団は少し斜めになって、その下に敷いた茣蓙ござは、水へ二三寸落ちかけておりますが、皎々こうこうと照らされた材木の上にも、敷物にも血の痕などは一つもありません。
で、ちょうど十日ばかりここに逗留とうりゅうし、夜分などは実に素晴らしい雪と氷の夜景さえ眼を楽しましむるその中に、碧空あおぞらには明月が皎々こうこうえ切って居るです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
伸子は冷静なような、また、非常に動揺しているような気持で、夜の庭の夏草が室内から溢れる皎々こうこうとした電燈に照し出されて、不自然にくっきりと粉っぽいように見えているのを眺めた。
二つの庭 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
部屋の中は皎々こうこうと輝いた。今まで見えなかった様々の物が——壁画や聖像やがん厨子ずしが、松明の光で見渡された。それはいずれも言うもはばかり多い怪しき物のみであった。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここへ来た時分には、月が皎々こうこうと上っていました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
月は皎々こうこうと明るく、海の上は一面に光っている。
海亀 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日頃と変らない沈着の中に、関羽の武勇は疲れを知らなかった。けれど、山峡やまあいのあいだに、皎々こうこうとして半月の冴える頃、こだまする人々の声を聞いては、さすがの彼も戦う力を失った。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぼっとなって、辻に立って、前夜の雨をうらめしく、空をあおぐ、と皎々こうこうとして澄渡すみわたって、銀河一帯、近い山のからたまの橋を町家まちやの屋根へ投げ懸ける。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかでわが皎々こうこうたる天上の月照に及ばんや
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は声を合わせてミドリの名を呼びながら、小屋の戸を開いて外へ出てみた。外は真昼のように明るかった。八月十五日の名月が、いま中天ちゅうてん皎々こうこうたる光を放って輝いているのだった。……
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この夜の九時頃から空が明るくなって、十一時頃には片雲も止めぬ快晴となり、皎々こうこうたる満月に照されて、近き上河内岳の巨体は、深沈な大気の中にすき透るような蛍光を放っているかのように想われた。
大井川奥山の話 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
皎々こうこうたる水銀灯の光の下で仕事をする人々は、技師といわず、職工といわず、場内の一隅いちぐうに据えられた、高さ五十尺の太い熔融炉キューポラ周囲まわりを取巻いて、一斉に上を見上げていた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
月は皎々こうこうと照り輝いていました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
疲れると帰帆の檣上しょうじょうにならんで止って翼を休め、顔を見合わせて微笑ほほえみ、やがて日が暮れると洞庭秋月皎々こうこうたるを賞しながら飄然ひょうぜんねぐらに帰り、互に羽をすり寄せて眠り
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
興津に下りて次第に同村の方に近寄り見るに、村内の若者がおよそ二、三十人も真っ裸になって、いずれも潮水に身体をきよめ、石段の両側に百余の提灯ちょうちんをつるし、社前には皎々こうこうたる篝火かがりびをたき
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かれはふいに耳をたって、四、五けんばかりかけだしてながめると、いましも、ひとりの兇漢きょうかんが、皎々こうこうたる白刃はくじんをふりかぶって、ッぽけな小僧こぞうをまッ二つと斬りかけている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いぶかりつつも主水之介は、さッと片肌はねてのけると、おもむろに手にしたは飾り重籐、颯爽さっそうとしたその英姿! 凛然りんぜんとしたその弓姿ゆんすがた! 土壇のあたり、皎々こうこうとしてまばゆく照り栄え
蕭条しょうじょうたる冬木立を眺めて溜息ためいきをつき、夜は早く寝て風が雨戸をゆり動かすのを、もしや家から親御さまのお迎えかなど、らちも無い空頼みしていそいで雨戸をあけると寒月皎々こうこうと中空にかか
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
外は皎々こうこうたる満月。
当時まだ電燈は発明されておりませんでしたから、いく本かの美しい装飾そうしょくをほどこした銀色の燭台しょくだいが、テーブルの上に立て並べられ、皎々こうこうたる光のもとにいとも静粛せいしゅくに、食事がすまされました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
そうして、見るともなしに見あげると、澄んだ大空には月のひかりが皎々こうこうと冴えて、見渡すかぎりの広い田畑も薄黒い森も、そのあいだにまばらに見える人家の低い屋根も、霜の光りとでもいいそうな銀色のもやの下に包まれていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人の心づかいは、ちょっと天上に向って転向しましたけれども、そうかといって、その雲行きも天候の激変を暗示するほどの危険性はないが、今までのように皎々こうこうたる月光が、雲を破って現われることは、ちょっと覚束おぼつかなくなりました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「もういちど見直すがいい。玉枝はおまえの情婦ではないか。いくらふだん、他人に似るように、作り化粧をさせているにせよ、情婦の顔を見違えるたわけがあるか。めい皎々こうこうたる名月の光をもって、よく、きもひとみをすえて見るがよかろうぞ!」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう、網代の大荘屋を出た時から、途中松風と浪ばかり、みちに落ちたあかい木の葉も動かない、月は皎々こうこう昭々しょうしょうとして、磯際の巌も一つ一つ紫水晶のように見えて山際の雑樹ぞうきが青い、穿いた下駄の古鼻緒も霜を置くかと白く冴えた。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早くもかれは、明皎々こうこうとさえ渡りたること玻璃はりきょうのごとき心の面に、糸屋の主人が独身であったという一条と、女の客が多すぎたという一条との二つに不審をおぼえたものでしたから、一瞬のうちにかれ一流の方法を案出いたしまして、突然伝六の意表をつきました。
いや、そうではない。あいつは暗闇のなかで、眼が見えるくらいだから、忍術も使うかも知れん。だって、考えてみろ。いつかの晩だって、電気が消えたと思ったら、そのとたんあいつの声が四馬頭目しばとうもくのうしろで聞えたじゃないか。それまで皎々こうこうと電気がついていたんだ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
つるぎのひじりでございます。剣の神様でございます。先生にじっとつけられました時、これまでかつて感じたことのない、畏敬の心が湧きました。そうして先生のお姿も、また鉄扇もなんにも見えず、ただ先生のお眼ばかりが、二つの鏡を懸けたように、わっちの眼前で皎々こうこうと、輝いたものでございます。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もしそれ明月皎々こうこうたる夜、牛込神楽坂うしごめかぐらざか浄瑠璃坂じょうるりざか左内坂さないざかまた逢坂おうさかなぞのほとりにたたずんで御濠おほりの土手のつづく限り老松の婆娑ばさたる影静なる水に映ずるさまを眺めなば、誰しも東京中にかくの如き絶景あるかと驚かざるを得まい。
みきった天心に、皎々こうこうたる銀盤ぎんばんが一つ、ぽかッとうかび、水波渺茫すいはびょうぼうかすんでいるあたりから、すぐ眼の前までの一帯の海が、限りない縮緬皺ちりめんじわをよせ、洋上一面に、金光が、ちろッちろッと走っているさまは、まことに、ものすさまじいばかりの景色でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)