)” の例文
「一寸お待ちなせエ、戸締のい家たア随分不用心なものだ、れ程貧乏なのか知らねいが」と彼の剽軽へうきんなる都々逸どゝいつの名人は冷罵れいば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
何うもたった一人者でも雇婆やといばアさんの給金も払うなにがえんで、勘定というものは何処にも有るもんでげすが、暮はいけませんねえ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かろやかに肩に懸け、「ほい、水気がえから素敵に軽い。」「まるで苧殻おがらだ、」「お精霊様の、おむかえおむかえ。」とつッぱしる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このなかに印度の言葉がわかる奴ははばかりながらこの道庵のほかにはえ、なあに、楽屋のやつらだって印度の言葉がわかるものか。
そして、今夜にも火事が打始ぶつぱじまらねえ者でもえといふので、若い者がひるから学校へ寄りつて、喞筒の稽古をて居るんでごわす。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「ぢや聞きねえ。おれもその鼠小僧ぢや、とんだ御茶番を見た事があつての、今でも思ひ出すたんびに、腹の皮がよれてならえのよ。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「意気地のえ野郎共さ。耕吉も平六も。あいつらに貴様ほどの度胸があったら、今頃はみんながこんな難儀をしなくて済んだのに……」
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「手前が、御丁寧にも麻布からうまを引いて來たんだよ。御用聞が人に後をけられて知らずに居るなんざ、あんまり褒めたことぢやえぜ」
何しろ修身のえ学校の生徒さんでゲスから油断も隙もあれあしません。コンナ手を矢鱈やたらに使われちゃやり切れませんや。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そりゃアもう無理もえことです、官員さまだって人間だ、女けが無くちゃアやって行けますまい、それは何だ、かあいい奥方は郷里くにに残して
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
しかも「柔和おとなしい馬を村中探したがえから」と、探すに事を欠いて「ようやっと小松川から盲目馬を一匹牽いてきやした」
らいつそものなんざはうがえゝ、さうでせえなけりやてえたおもはねえから」おつぎはつく/″\つぶやくことがあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けんど、岩佐様さあやるぜにえで去年の麦と蕎麦粉を売りやしたで、もう口あけた米一俵しか有りましねえで……
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
心配する事アえ、先生。齡ア四十一だべえが、村一番の醜婦みたくなし巨女おほをなごだア、加之それにハア、酒を飮めば一升も飮むし、甚麽どんな男も手餘てやましにするくれえ惡醉語堀ごんぼうほりだで。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「たった今、いくらでも酒は買ってあるから安心して飲めとかしやがって、もうえとは、なんのいい草だ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬鹿あかせ、三銭のうらみ執念しゅうねんをひく亡者もうじゃ女房かかあじゃあてめえだってちと役不足だろうじゃあえか、ハハハハ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ちっとも、よかあえじゃないか。これでお前の男も、すたった。どだい、君、亭主のある女と、……」
女類 (新字新仮名) / 太宰治(著)
老船頭 え。八、九年前だったか、ばくち打ちの奴が、いやあこれはご免なせえよ。ツイ口が、すべった。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「これまでわずらったことがあっても今度のように元気のないことはえが、矢張やっぱり長くないしるしであるらしい」
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「お前のは何だつけ。蓮と菎蒻に。今日はもうおこうこはえんだよ。」と丼を一つ取出して渡した。
勲章 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「人を誤魔化さうつたつて駄目なことよ! それだつて、おいら達より他にやあ、からつきし持ちこんだ者あえでねえか。」さう、縞の寛袴シャロワールイを穿いた男が反駁した。
しゅはずんで、糠袋ぬかぶくろせてもらうどじはあるめえぜ。——おめえいまなんてッた。おせんのゆきのはだからった、天下てんかに二つと代物しろものおがませてやるからと。——
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「そうだろう。近ごろ、泥棒はえし、火つけは無えし、引廻しなら、あの位のもんだ」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
まけたとて大敗軍もねへもんだ其樣な少量けちな事を聞みゝへ此馬鹿八めとのゝしるにぞ目玉の八は負腹まけばらにて心地宜らぬ折柄をりから故大いにいかりナニ馬鹿八だと此拔作め口の横にさけまゝに餘り大造を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いや、こいつも駄目だ……して見ると真正ほんとうの幸福ってものはえもんだなア」
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「心細いな。小作人の本当の気持が分っていてくれる人えんだものよ……。」
不在地主 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
「どうで御座りやすか。——そんな事えで御座りやせう」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「先生を悪人が殺すようなことは、ぇでしょうか」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いつ迄待つても金の借りやうがえちふ事だよ。
こんな上天気じやうてんきはこのじやうしまにも滅多めつたえ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
如何ちやあん、えんが、やあたい。」
奥間巡査 (新字旧仮名) / 池宮城積宝(著)
「どうするっちたって、どうもこうもあるもんか。——えものは無え、有るものは有る、横からでも縦からでも調べた方がいいやな。こちとらのような足りねえ者には、政府の方で心配して、何俵でも廻してよこすんだっペからよ。」
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
もがいても喰う米もいんだ
母の手紙 (新字新仮名) / 中野鈴子(著)
血の絶えたことの
夜明の集会 (新字新仮名) / 波立一(著)
えんですよ。」
どうせ己はえ命だ……あゝ是まで母親おふくろには腹一杯はらいっぺい痩せる程苦労を掛けて置いたから、手前てめえ己の無えあとは二人めえの孝行を尽してくれ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「塩山つていふ村は、昔からえらく変り者を出す所でナア、それが為めに身代しんだいこしらへる者はえではねいだが、困つた人間も随分出るだア」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「穿かねえでさ、下駄は穿くにきまったもんだ。誰がまあ頂く奴があるもんか。だが、それ懐へ入れる奴はえとも限らねえ、なあ、源坊。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母子おやこぢやいよ、老婆ばゝあの方は月の初めから居るが、別嬪の方はツイ此頃だ、何でも新橋あたりの芸妓げいしやあがりだツてことだ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ところで、男というものは、一片の鉄をきたえるにしてからが、人と違った働きをしてみせなけりゃあ、生甲斐いきがいえのだ。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「チャアチャア。このバッグの中には銭なんか一文もえや。若い男の写真ばっかりだ。ウワア……変な写真が在ライ」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「俺どこの、豊作の野郎め、東京さ逃げだべって話でね。そんで、停車場さ行って見だのしゃ。もし昨日、上野まで切符買った奴あるがえが……」
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
マ、マ、然うは言ふもんでアえでばサ。前々から決めておいた事は決めて置いた事として、茲はまア村の頼みを
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
エエ酒がえか、さあ今度アこれを売って来い。構うもんかイ、構うもんかイ、当らあ当らあきっと当らあ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「夏だってあなた——遠くからみれば同じことです、第一、あそこには、あれより高いのはえんだから」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
れもはあ廿七になるんだかららもこんでまあ心配しんぺえはしてたんだが、自分じぶんでもそれんねえの心配しんぺええねえもんだから、おもつちやてもねえのよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
忠太郎 えッえ。無えのでござんすか——五つの時に縁が切れて二十余年。もうちッとで満三十年だ。
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
「お前のは何だっけ。はす菎蒻こんにゃくに。今日はもうおこうこはえんだよ。」とどんぶりを一つ取出して渡した。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「道理でちつと御帰りが、遅すぎると思つてゐやしたよ。だがまあ、かうして帰つて来ておくんなさりや、子分子方のものばかりぢやえ、江戸つ子一統が喜びやすぜ。」
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「なんにも、いい事がえじゃねえか。僕たちには、なんにもいい事が無えじゃねえか」
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)