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ふりがな文庫
“
武蔵
(
むさし
)” の例文
旧字:
武藏
娘は
武蔵
(
むさし
)
の奥の者で、両親に死に別れ、他に身寄もないので、わずかな知人をたよりに、江戸へ女中奉公の口を探しに往くと云った。
雪女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
開いて普通の村落田園としたことを意味するので、近くは
武蔵
(
むさし
)
の一国だけにも、自分はその十数カ所を列挙することができる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
武蔵
(
むさし
)
、
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
、
甲斐
(
かい
)
、
信濃
(
しなの
)
の諸国に領地のある諸大名はもとより、
相模
(
さがみ
)
、
遠江
(
とおとうみ
)
、
駿河
(
するが
)
の諸大名まで皆そのお書付を受けた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
東京を中心にして関東の地図を見ますと、その中には
相模
(
さがみ
)
、
武蔵
(
むさし
)
、
安房
(
あわ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
下総
(
しもうさ
)
、
常陸
(
ひたち
)
、
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
などが現れます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
当時はむろんわびしい
武蔵
(
むさし
)
ガ
原
(
はら
)
で、旗本、小大名のお茶寮が三、四軒、ぽつりぽつりと森の中に見えるばかりといったような江戸郊外でしたから
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
▼ もっと見る
いや、お取次でもよろしい。……
但馬
(
たじま
)
の
士
(
し
)
宮本
武蔵
(
むさし
)
という武者修行の者、道場へ立ち寄り、門弟たちに立ち
対
(
むか
)
える者一人もなく、若先生のお帰りを
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
西北から、大きな緑の帯のような
隅田川
(
すみだがわ
)
が、
武蔵
(
むさし
)
と
下総
(
しもうさ
)
の間を流れている……はるかに、富士と筑波を両方にひかえて。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その恐ろしい山々の
一
(
ひ
)
ト
列
(
つらな
)
りのむこうは
武蔵
(
むさし
)
の国で、こっちの
甲斐
(
かい
)
の国とは、まるで
往来
(
ゆきかい
)
さえ絶えているほどである。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
列車は、
博多
(
はかた
)
をすぎて、
二日市
(
ふつかいち
)
駅着。下車した一行は、なお止まぬ雨のなかを、鉄道馬車で、
武蔵
(
むさし
)
温泉へ向かった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
親房
(
ちかふさ
)
の第二子
顕信
(
あきのぶ
)
の子
守親
(
もりちか
)
、
陸奥守
(
むつのかみ
)
に任ぜらる……その孫
武蔵
(
むさし
)
に住み
相模
(
さがみ
)
扇ヶ谷
(
おうぎがやつ
)
に転ず、
上杉家
(
うえすぎけ
)
に
仕
(
つか
)
う、
上杉家
(
うえすぎけ
)
滅
(
ほろ
)
ぶるにおよび
姓
(
せい
)
を
扇
(
おうぎ
)
に改め後
青木
(
あおき
)
に改む
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
「でも、親分、首っ縊りのブラ下がったのはちょうど橋の真ん中ですぜ。
東風
(
ひがし
)
が吹けば死骸の
裾
(
すそ
)
が
武蔵
(
むさし
)
へ入るし、
西風
(
にし
)
が吹けば
鬢
(
びん
)
のほつれ毛が、
下総
(
しもうさ
)
へなびく」
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
野州路
(
やしゅうじ
)
や
越後路
(
えちごじ
)
はその裏道で
甲斐
(
かい
)
の
石和
(
いさわ
)
や
武蔵
(
むさし
)
の
石浜
(
いしはま
)
は横路である。富山や京都は全く別系統であって、富山が八犬の発祥地であるほかには本筋には何の連鎖もない。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
伯母さん
此処
(
ここ
)
の
家
(
うち
)
に智恵の板は売りませぬか、十六
武蔵
(
むさし
)
でも何でもよい、手が暇で困ると美登利の淋しがれば、それよと即坐に
鋏
(
はさみ
)
を借りて
女子
(
おなご
)
づれは切抜きにかかる
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
江戸はもちろん
武蔵
(
むさし
)
一円、
経帷子
(
きょうかたびら
)
に包まれたように、真っ白になって眠っていたが、ここ小梅の里の
辺
(
あた
)
りは、家もまばらに耕地ひらけ、雪景色にはもってこいであった。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それぎり何事もなく、汽車は川中島を越え、浅間の煙を望み、次第に
武蔵
(
むさし
)
の平原に近づきまする。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
汽車が
武蔵
(
むさし
)
の平野へ降りてくるにつれて、しっとりした空気や、広々と
夷
(
なだら
)
かな田畠や
矮林
(
わいりん
)
が、水から離れていた魚族の水に返されたような安易を感じさせたが、東京が
近
(
ちかづ
)
くにつれて
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
千六はそれから仲間に別れて筑前の
武蔵
(
むさし
)
、別府、道後と温泉まわりを初めた。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雲母
(
マイカ
)
か何かで、十六
武蔵
(
むさし
)
位の大きさの
薄
(
うす
)
い円盤を
作
(
つく
)
つて、水晶の
糸
(
いと
)
で
釣
(
つる
)
して、真空の
中
(
うち
)
に置いて、此円盤の
面
(
めん
)
へ
弧光
(
アーク
)
燈の
光
(
ひかり
)
を直角にあてると、此円盤が
光
(
ひかり
)
に
圧
(
お
)
されて動く。と云ふのである。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
宮本
武蔵
(
むさし
)
は『五
輪書
(
りんのしょ
)
』という本のなかで「見の眼と観の眼」といっておりますが、武蔵によれば、この観の眼によってのみ、剣道の
極意
(
ごくい
)
に達することができるのでありまして、彼は剣道において
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
字は
禄所
(
ろくしょ
)
が正しいという説もあるが、本社祭神は
大己貴命
(
おおなむちのみこと
)
、
相殿
(
あいでん
)
として
素盞嗚尊
(
すさのおのみこと
)
、
伊弉冊尊
(
いざなみのみこと
)
、
瓊々杵尊
(
ににぎのみこと
)
、
大宮女大神
(
おおみやひめのおおかみ
)
、
布留大神
(
ふるのおおかみ
)
の六座(現在は
大国魂
(
おおくにたま
)
神社)。
武蔵
(
むさし
)
では古社のうちへ数えられるのだ。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
又七条の
后
(
きさい
)
の
宮
(
みや
)
の女房
武蔵
(
むさし
)
との関係のように、たま/\望みが
叶
(
かな
)
ったかと思えば、その翌日から公用で四五日京都を離れるようなことになり、
而
(
しか
)
も不覚にも女に事情を知らしてやるのを
怠
(
おこた
)
ったので
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「甲香は宝螺貝のやうなるが、小さくて口のほどの細長にして出でたる貝の
蓋
(
ふた
)
なり、
武蔵
(
むさし
)
の国金沢といふ浦にありしを、所の者はへなたりと申し
侍
(
はべ
)
るとぞいひし」(『鎌倉攬勝考』附録に図あり)。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「おいらの家のすじ向うにある
武蔵
(
むさし
)
屋っていう宿屋だよ」
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雉
(
きぎす
)
鳴くや草の
武蔵
(
むさし
)
の八平氏
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
日本
武蔵
(
むさし
)
甲山
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
少年の頃から初めて会うこの叔母に、たけぞうと呼ばれないで
武蔵
(
むさし
)
といわれたのは、案外でもあったが、それよりはなにかしらさびしい気がして
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
情けに刃向こうやいばはねえといってな、
武蔵
(
むさし
)
坊弁慶でせえも、ほろりとなりゃ形見に片そでを置いてくるんだ、伝六様はむだをいわねえ。な! ほら! このとおりさるぐつわを
右門捕物帖:26 七七の橙
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
上野
(
こうずけ
)
、
下野
(
しもつけ
)
、
武蔵
(
むさし
)
、
常陸
(
ひたち
)
、
安房
(
あわ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
下総
(
しもうさ
)
、
相模
(
さがみ
)
と股にかけ、ある時は一人で、ある時は数十人の
眷属
(
けんぞく
)
と共に、
強盗
(
おしこみ
)
、
放火
(
ひつけ
)
、
殺人
(
ひとごろし
)
の兇行を演じて来た、武士あがりのこの大盗が
猿ヶ京片耳伝説
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは六郎が
武蔵
(
むさし
)
の領地と鎌倉の間を往復するたびに通ることになっているので、
女
(
むすめ
)
の像に時おりその姿を見せて、せめてもの
懐
(
おもい
)
をやらせようとする優しい親心から出たことであった。
頼朝の最後
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
日本武尊の
常陸
(
ひたち
)
より甲斐の酒折に至りたまいし時は、いずれの路を取り玉いしやらん。常陸より甲斐に至らんに
武蔵
(
むさし
)
よりせんには、荒川に沿いて上ると玉川に沿いて上るとの二路あり。
知々夫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
武蔵
(
むさし
)
ではまた
土呂
(
どろ
)
の神明様の社の脇の大杉が、源義経の御箸であったと申します。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
あの
山城
(
やましろ
)
の皇居を海に近い
武蔵
(
むさし
)
の東京に
遷
(
うつ
)
し、新しい都を建てられた当初の
御志
(
おんこころざし
)
に変わりなく、従来深い
玉簾
(
ぎょくれん
)
の内にのみこもらせられた旧習をも打ち破られ、帝自らかく国々に
御幸
(
みゆき
)
したまい
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ここは、旅をするほどの者がたれも知るとおり、甲州街道の
咽喉
(
のど
)
で、
相州
(
そうしゅう
)
津久井県
(
つくいけん
)
と
武蔵
(
むさし
)
の国の分水嶺でもあります。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが千駄も苅れたとすれば、大へんな広い野にちがいないが、
武蔵
(
むさし
)
・
相模
(
さがみ
)
の高原にかけて、それくらいの野は今でもまだ残っている。べつに地名にするほどの珍らしい事実ではなかった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
先刻
(
さっき
)
から
武蔵
(
むさし
)
はそこに黙然と立っていた。——およそ三間ほどの距離をおいて——棒のように立っていた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
相模
(
さがみ
)
の佐野川村から
武蔵
(
むさし
)
の元八王寺村へ越える案外峠は、案外にも武蔵が表で相模が裏、越中の国境
荘川
(
しょうかわ
)
の上流に
横
(
よこた
)
わっている尾瀬峠は、平野地方が裏で
五箇山
(
ごかやま
)
の山村が表であるのはさもありなん。
峠に関する二、三の考察
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「名も、
武蔵
(
たけぞう
)
よりは、
武蔵
(
むさし
)
と
訓
(
よ
)
まれたほうがよい。暗黒蔵の胎内から、きょうこそ、光明の世へ生れかわった誕生の第一日。すべて新たになるのがよろしかろう」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
(新篇
武蔵
(
むさし
)
風土記稿。埼玉県入間郡所沢町上新井字三つ井)
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
相模
(
さがみ
)
、
武蔵
(
むさし
)
に、いささか
受領
(
じゅりょう
)
の地もあり、同族どもも、あの地方に多いので。……もし東国への旅のおついででもあったら、御両所にも、ぜひ鎌倉へおたずねください
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ム、大いそぎで、
武蔵
(
むさし
)
の国、
高尾山
(
たかおさん
)
の
奥院
(
おくのいん
)
までいってきてくれ、しさいはここに書いておいた」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清十郎のねばり濃い求愛に、心が暗くなる時は、必ずその心のすみで、彼女は
武蔵
(
むさし
)
のことを考えた。——武蔵が心にあることは、救いであったが、また苦しくもなって来た。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
汝
(
わ
)
れは元、村では武蔵といい、この婆などは、悪蔵と
称
(
よ
)
んでいたものじゃが、今では、名を変えているそうじゃの、宮本
武蔵
(
むさし
)
と。——えらそうな名わいの。……ホ、ホ、ホ」
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わざわざ
御車
(
みくるま
)
をおむけになったのも、
能登
(
のと
)
、
加賀
(
かが
)
、
出雲
(
いずも
)
、
伯耆
(
ほうき
)
、
伊予
(
いよ
)
、
播磨
(
はりま
)
、
下毛野
(
しもつけ
)
、
武蔵
(
むさし
)
などの御料の牧の若駒どもが、加茂の五月をまえに、ぞくぞく都へひかれて来たので
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甲府
(
こうふ
)
を一とおり
遍歴
(
へんれき
)
した宮内は、これから道を東にとって、
武蔵
(
むさし
)
の国へはいるつもり。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
沢庵
(
たくあん
)
のことばによると、三年前
武蔵
(
むさし
)
が日名倉の番所を襲った時は、姉のお吟はもうそこにはいなかったので、何の
咎
(
とが
)
めもうけず、その後は、
種々
(
いろいろ
)
な事情もあって宮本村へは帰らなかったが
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「元日の朝から
七種
(
ななくさ
)
の日まで、毎朝、五条の橋へ行っていると——
武蔵
(
むさし
)
様からの
言伝
(
ことづて
)
があったのよ。待ち遠しいお正月……ああ早く京都へ帰りたい。五条の橋へゆけば、武蔵様が立っている」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これからが宮本
武蔵
(
たけぞう
)
の——いや名も
武蔵
(
むさし
)
と改めたこの身の大事な一日一日、修業のほかに、なんの心もない。そういう人間と、一緒に永い苦艱の道を歩いても、そなたは決して、倖せではあるまいが
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
下総
(
しもうさ
)
、
上総
(
かずさ
)
、
常陸
(
ひたち
)
、
下野
(
しもつけ
)
、
武蔵
(
むさし
)
——と見わたしても、これほどな馬数と、また、豊かな墾田と、さらに、まだまだ無限な開拓をまつ広大な処女地とを、領有している豪族といっては、そうたくさんは
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頼朝の兵は、枯れ野の火のように、
武蔵
(
むさし
)
を焼き、
常陸
(
ひたち
)
へ入る。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——もう
武蔵
(
むさし
)
は、
蓮台寺野
(
れんだいじの
)
のほうへ来ていやしないか」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“武蔵”の意味
《固有名詞》
武蔵 (むさし)
旧国名。東海道に位置する。武蔵国。現在の東京都、埼玉県、神奈川県の一部に相当。
(出典:Wiktionary)
武
常用漢字
小5
部首:⽌
8画
蔵
常用漢字
小6
部首:⾋
15画
“武蔵”で始まる語句
武蔵野
武蔵守
武蔵国
武蔵坊弁慶
武蔵屋
武蔵坊
武蔵境
武蔵野館
武蔵鐙
武蔵青毛