トップ
>
此処
>
ここ
ふりがな文庫
“
此処
(
ここ
)” の例文
旧字:
此處
ですから
何日
(
いつか
)
の何時頃、
此処
(
ここ
)
で見たから、もう一度見たいといっても、そうは
行
(
ゆ
)
かぬ。川の
流
(
ながれ
)
は同じでも、今のは
前刻
(
さっき
)
の水ではない。
一寸怪
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はその事を聞くや否や、早速新聞雑誌を通じて平塚さんに対する感謝を書いて置きましたから、
此処
(
ここ
)
にはそれを繰返さず置きます。
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その後三、四年にしてわたくしは牛込の家を売り、そこ
此処
(
ここ
)
と市中の借家に移り住んだ後、麻布に来て三十年に近い月日をすごした。
雪の日
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
周囲は草原であるのに、
此処
(
ここ
)
だけが花崗岩の
霉爛
(
ばいらん
)
した細沙と粘土との露出地である為に、この驚く
可
(
べ
)
き霜柱を生じたものと想われる。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「
迂濶
(
うかつ
)
だった、八重」そういって彼は、上から八重を見下ろした。「……おまえがいたじゃないか、
此処
(
ここ
)
におまえがいたじゃないか」
日本婦道記:小指
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
「僕は本当のことを君に言うが、僕は
嘗
(
かつ
)
て君に友情を抱いたことは一度もない。
此処
(
ここ
)
へ来るのも自分の打算から来るのであって——」
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
此処
(
ここ
)
は河だと考えたが、急に畳の上にでも居るような
弛
(
ゆる
)
んだ気持になって、その儘、倒れると水を呑んで
悶掻
(
もがい
)
たが、死んでしまった。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
此処
(
ここ
)
に我々が形成的というのは、絶対矛盾的自己同一的世界の個物として、世界を創造的に把握するということでなければならない。
絶対矛盾的自己同一
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
それは紛れもなく
何時
(
いつ
)
ぞや
此処
(
ここ
)
に迷い込んで、腰元達に
嬲
(
なぶ
)
りものにされた青侍の、見る影もなく痩せさらばえた姿ではありませんか。
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
蓴菜は俗にいふじゆんさいにして
此処
(
ここ
)
にてはぬなはと読む。薄加減はじゆん
菜
(
さい
)
の料理のことにして塩の
利
(
き
)
かぬやうにする事ならん。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
劇
(
はげ
)
しいヒステリイ症の女で前の航海には船医が
大分
(
だいぶ
)
悩まされたと話して居る。
其
(
その
)
女が今夜突然また
此処
(
ここ
)
から
上海
(
シヤンハイ
)
へ引返すと
言出
(
いひだ
)
した。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
日本人は昨夜蒸気車に乗り車中安眠するを得ず大に疲れたるに、
此処
(
ここ
)
に着して暫時も休息せしめず車より
下
(
お
)
りて
直
(
ただち
)
に又船に乗らしむ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その見附からない間隙を漸やく見附けて、
此処
(
ここ
)
ぞと思えば、さて肝心のいうことが見附からず
迷
(
まご
)
つくうちにはや人に取られてしまう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
それだのに、人口僅か十六人のB島を別にすれば、
此処
(
ここ
)
ほど寂しい島は無い。
何故
(
なぜ
)
だろう? 理由は、ただ一つ。子供がいないからだ。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
此処
(
ここ
)
に情熱と知性の矛盾と相剋が明瞭な形をもってあらわれてくる。情熱というものは、一つの系譜を持っているといえるかも知れぬ。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
此処
(
ここ
)
で僕は云う! それほどの窮乏のドン底にあった
独逸
(
ドイツ
)
が、現在の如き、世界第一の強国に、わずか、二十年の間に復活しようとは!
世界の裏
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
後を慕って
此処
(
ここ
)
まで来た露月、一度はまともに逢って言葉がかわしたさに、もう世の常の作法も忘れ、思わず声をかけてしまいました。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
此処
(
ここ
)
に於てか、我輩は経済上の立脚地より観て、今後は国際戦争——少なくも強国対強国の戦争は——到底不可能であろうと思う。
世界平和の趨勢
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そりゃ、親方悪い
了簡
(
りょうけん
)
だろうぜ。一体俺達が、妻子
眷族
(
けんぞく
)
を見捨てて、
此処
(
ここ
)
までお前さんに、
従
(
つ
)
いて来たのは、何の為だと思うのだ。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
また二間ばかりの竿では、
此処
(
ここ
)
では
鉤先
(
はりさき
)
が好い魚の廻るべきところに達しない。
岸近
(
きしぢか
)
に廻るホソの
小魚
(
こざかな
)
しか
鉤
(
はり
)
には来らぬであろう。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
科学の本質論には
此処
(
ここ
)
では触れないことにしても、本統の科学というものは、自然に対する純真な驚異の念から出発すべきものである。
簪を挿した蛇
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
第二の幽霊
成程
(
なるほど
)
、
此処
(
ここ
)
に書いてある。「当時
数
(
かず
)
の多かつた批評家中、永久に記憶さるべきものは、××××と云ふ論客である。……」
LOS CAPRICHOS
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路
(
みち
)
はその丘の
麓
(
ふもと
)
までほの白く真直ぐに伸びているけれど、丘に突き当ってそれから先はどうなるのだか、
此処
(
ここ
)
からはよく分らない。
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もうこうなっては
此処
(
ここ
)
にとどまることは出来ません。あなたはこの後も耕し、
漁
(
すなど
)
りの
業
(
わざ
)
をして、世を渡るようになさるがよろしい。
中国怪奇小説集:04 捜神後記(六朝)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
森槐南
(
もりかいなん
)
、
依田学海
(
よだがっかい
)
というような顔振れも見えたが、大部分は若い女で、紅葉さん漣さんという
媚
(
なまめ
)
かしい
囁嚅
(
ささやき
)
が
其処
(
そこ
)
にも
此処
(
ここ
)
にも
洩
(
も
)
れて
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
あたしは何とかして、
此処
(
ここ
)
にいることを知らせたかったが、重い鎖につながれた俘囚は天井裏の鼠ほどの音も出すことが出来なかった。
俘囚
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして
此処
(
ここ
)
には、もちろんいかなる例外をも許容しない。いやしくも芸術品である以上には、
悉
(
ことごと
)
く皆美の価値によって批判される。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「
此処
(
ここ
)
を動いてはならない。でないと、人造島が溶けてしまうのだ。飛行機が焼けてしまったし、島が溶けたら、どうなるとおもうか」
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
いいか、
此処
(
ここ
)
へは二度も、三度も出直して来れるところじゃないんだ。それに
何時
(
いつ
)
だって蟹が取れるとも限ったものでもないんだ。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
そして女の跡を追うて、
此処
(
ここ
)
へ来た頃には、
上
(
かみ
)
さんまで
実家
(
さと
)
へ返して、父親からは準禁治産の形ですっかり
見限
(
みきり
)
をつけられていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
俺は今一人だが、俺の友達も
其処
(
そこ
)
此処
(
ここ
)
に居る。其一人は数年前に
伐
(
き
)
られて、今は
荷車
(
にぐるま
)
になって甲州街道を東京の下肥のせて歩いて居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
かの女はをとめの身で大胆にもかの女の家の夕暮時の深窓を逃れ来て、
此処
(
ここ
)
の川辺の夕暮にまぎれ、河原の
玲澄
(
れいちょう
)
な野薔薇の床に横たはる。
川
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
一体
(
いったい
)
この人の
平素
(
ふだん
)
住んでいるのは有名なブッシュというところで、
此処
(
ここ
)
には美術学校もあるし、この土地はこの人に
依
(
よ
)
って現われたので
不吉の音と学士会院の鐘
(新字新仮名)
/
岩村透
(著)
しかし人間はその
為
(
な
)
すべからざることを為さずにはおらないのがオカしいじゃありませんか……たとえば
此処
(
ここ
)
に医学博士がある
山道
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ほんの素描のようなものに過ぎないが、ひと頃の私の母に対する心もちがよく出ていると思うので、
此処
(
ここ
)
にそれを
揷
(
はさ
)
んでおきたいと思う。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「そうです、あれは
此処
(
ここ
)
では一番大切なのです。まあしばらくじっと
見詰
(
みつ
)
めてごらんなさい。どうです、形のいいことは
一等
(
いっとう
)
でしょう。」
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
気が付くと其処でも
此処
(
ここ
)
でもザクザクと草刈る音がする。見ると路の直ぐ上の所にも馬を引いて来ている者が二組も三組もいる。
木曽御嶽の両面
(新字新仮名)
/
吉江喬松
(著)
小さいながらも呉服屋、菓子屋、雑貨店、さては荒物屋、
理髪店
(
とこや
)
、豆腐屋まであつて、素朴な農民の需要は大抵
此処
(
ここ
)
で充される。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「借りたのは二百円だが、何やかやで三百円近くになっている。それに
此処
(
ここ
)
のお婆さんに返すのと、光子の家へも少しは助けたいから。」
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
情ない
空風
(
からかぜ
)
が遠い街の塵を揚げて森の香の清い
此処
(
ここ
)
らまでも吹き込んで来る頃になると、定まったように脳の工合が悪くなる。
やもり物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「パンドラの
匣
(
はこ
)
」という題に
就
(
つい
)
ては、明日のこの小説の第一回に於て書き記してある
筈
(
はず
)
だし、
此処
(
ここ
)
で申上げて置きたい事は、もう何も無い。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
されば信ずるものは何かといえば、「
眼鏡
(
めがね
)
は眼鏡、茶碗は茶碗」とこの一言で充分でしょう。以上が私の宗教観です。
此処
(
ここ
)
に一首あります。
我が宗教観
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
先程見た一人の
旅人
(
たびびと
)
はこの遍路であつたのだから、遍路は
彼此
(
かれこれ
)
三十分も
此処
(
ここ
)
に休んで居るのであつた。遍路は眼が悪いといふことを云つた。
遍路
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
「
否
(
いな
)
。
此処
(
ここ
)
には持ち
侍
(
はべ
)
らねど、大王
些
(
ちと
)
の骨を惜まずして、この
雪路
(
ゆきみち
)
を歩みたまはば、僕よき処へ
東道
(
あんない
)
せん。
怎麼
(
いか
)
に」トいへば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
故に
此処
(
ここ
)
だぞ、此処が悪人と善人となる界だぞ、と分別のつき次第善を取る意志と勇気を実行するが即ち実践教育の粋である。
教育家の教育
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
矢面
(
やおもて
)
の犠牲者と見えたが、柳下父子を初めとして、法螺忠や金蔵の悪評は、桜の時分に
此処
(
ここ
)
に私たちが現われると直ぐにも聞いたはなしで
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
高橋信造は
此処
(
ここ
)
まで話して来て
忽
(
たちま
)
ち
頭
(
かしら
)
をあげ、西に傾く日影を
愁然
(
しゅうぜん
)
と見送って苦悩に
堪
(
た
)
えぬ様であったが、手早く
杯
(
さかずき
)
をあげて一杯飲み干し
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
で、私は、貴方の
仰
(
おっ
)
しゃる通り、出来得べくば、男を元の京都に帰して、
此処
(
ここ
)
一二年、娘は
猶
(
なお
)
お世話になりたいと存じておりますじゃが……
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
斯ういう多くの人々の驚きの中に、然し両家は着々と此の縁談を進め、
軈
(
やが
)
て間もなく
此処
(
ここ
)
に若い一対の立派な夫婦が出来上ったわけなのです。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
此処
(
ここ
)
は筑前国、第四十四番の
札所
(
ふだしよ
)
にして弘法大師の
仏舎利
(
ぶつしやり
)
を納め給ひし霊地なり。奇特の御結縁なれば和尚様の御許しを得む事
必定
(
ひつぢやう
)
なるべし。
白くれない
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
処
常用漢字
小6
部首:⼏
5画
“此処”で始まる語句
此処彼処
此処等
此処迄
此処辺