だる)” の例文
どこから持って来るのか、様々の形をした巨岩や、樹木や、鉄骨や、木材や、数知れぬセメントだるなどが、島へ島へと運ばれました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三吉は三升だるをブラ下げて、艪にしゃがみました。五十六七、すっかり月代さかやきが色付いて、鼻も眼も口もしなびた、剽軽ひょうきんな感じのする親爺です。
味噌だるがずらりと並び、味の素や福神漬や、牛鑵ぎゅうかんがずらりと並んで光っている。一口坂の停留場前の三好野では、豆大福が山のようだ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
それがもう一重ひとえ、セメンだるに封じてあったと言えば、甚しいのは、小さなかいが添って、箱船に乗せてあった、などとも申します。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのあやしい、うみうへではよく眩惑ごまかされます、貴下あなた屹度きつと流星りうせいぶのでもたのでせう。』とビールだるのやうなはら突出つきだして
門々にはもう笹たけが立って、向うの酒屋では積みだるなどをして景気を添えていた。かぶとをきめている労働者の姿なども、暮らしく見られた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
仕かえしは味噌だるの中へときまった。彼女は自家用の幾個いくつかの樽のなかへおしっこが出たくなると、穴をあけておいてした。
さて禁酒を破る筋にも無理がなく、湯呑で一杯から二杯、三杯と増し、遂に片口かたくちから二升だると段々に無法になる作り方好し。
裾を端折り、襷を掛け、五升だるくらいのおけに向って、小さな腰掛にかけたまま、桶の中へ両手を入れて揉み出しをしていた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
十度とたびほど、大地をなぐると、槍は折れてしまった。武蔵は、納屋のひさしの下にあった漬物だるの押し石をさしあげて、取りかこむ群れへほうりつけた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほか、ビールだるほどの大きさの空樽や、がらくた道具しかおいてない一方の側をしらべて見たが、べつにドアらしいものもついていなかった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そういって博士は、前によこたわっている大きい硝子製ガラスせいのビールだるのようなものをゆびさしました。しかしその中は透明で、博士の云うものは何も見えません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昼の三時頃には洲の水は浅くなって足のくるぶしほどになりました。漁師たちは手網や手掴みで四斗だるに一ぱい半ほどの魚をり、網を外ずして去りました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
醸造だる中の葡萄ぶどうの実のように、飽満せる魂は坩堝るつぼの中で沸きたつ。生と死との無数の萌芽ほうがが、魂を悩ます。
捕えられてシベリアに送られ、終身懲役の刑で監獄に幽閉された彼は、キャベツだるに身をひそませて、脱獄に成功した。その大胆不敵は俺たちの亀鑑きかんとされていた。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
着飾つた坊さん、はだし位牌いはい持ち、ひつぎ、——生々しい赤い杉板で造つた四斗だるほどの棺桶くわんをけで、頭から白木綿で巻かれ、その上に、小さな印ばかりの天蓋てんがいが置かれてある。
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
古いおひつには、古い足袋たびがギッシリつまり、古いだるの横に、古い張り板が立てかけてある始末。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
が、ふと星明りに人の形のように思えば思えるものを納屋のわきに認めたような気がした。彼が石を拾ってそれにぶつけると、コンという音がした。それは重ねただるだった。
あたかも石油だるの中に落ち込んだがように、一波も立てずに海中に消え失せてしまった。人々は水中を探り、またもぐってみた。しかし無益であった。夕方まで捜索は続けられた。
それから水夫長は純粋のジョンブル式ビールだるで、船長よりも風采が堂々としていた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の家はそれほど大人数というわけでもなかったが、四斗だる糠味噌ぬかみそ桶に使っていた。
生い立ちの記 (新字新仮名) / 小山清(著)
見ると荷馬車が一台おいてある。その横からひざの曲った男が出て来て二人一緒に小屋へ入った。さあ大変だと署長が思ってゐたら間もなく二人は大きな二斗だるを両方から持って出て来た。
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
黒烟りを吐き出して、吐き尽したる後は、太き火燄かえんが棒となって、熱を追うて突き上る風諸共、夜の世界に流矢のきを射る。あめを煮て四斗だる大の喞筒ポンプの口から大空に注ぐとも形容される。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ビールだる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「てめぃ、ビールだるから、なんか、ことづかったろうが」男爵と呼ばれる青年は、姿に似ぬ下等かとうな言葉を、はいた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
生み落された嬰児あかごは、母が貧しい物しか喰べていなかったので、五ねんだるの梅干みたいに、赤くてしわだらけだった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船橋せんけううへにはビールだるのやうに肥滿ひまんした船長せんちやうが、あか頬髯ほゝひげひねりつゝ傲然がうぜんと四はう睥睨へいげいしてる。
小夜具こよぎかぶって、仁王だち、一斗だるの三ツ目入道、裸の小児こどもと一所になって、さす手の扇、ひく手の手拭、揃って人も無げに踊出おどりいだした頃は、俄雨にわかあめを運ぶ機関車のごとき黒雲が、音もしないで
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「四斗だるの尻を抜くような法螺ほらをこくでねえ、面あこそ生っ白くて若殿みてえだが、なんかの時にあ折助より下司げすなもの好みをするだあ、家来持ちが聞いてあきれるだよ、この脚気かっけ病みの馬喰ばくろうめ」
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一番おしまいにはビールだるの中に封じられて二頭の馬の背中に積まれたまま、ぐるぐるまわっているうちに、自分の姿とそっくりの人形を幾個いくつも幾個もビール樽の中から地面じびたの上に投げ出すのです。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一升だるだのその他のものを運んだ。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「君は、感傷家かんしょうかでありすぎる。もっと神経をふとくしていることだね。ことに、こんな熱帯の孤島では、ビールだるにでもなったつもりで、のんびりやることだ」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あまりに無邪氣むじやきなる日出雄少年ひでをせうねん姿すがたては流石さすが怒鳴どなこと出來できず、ぐと/″\くちうちつぶやきながら、そのビールだるのやうな身體からだまろばして、帽子ぼうしあとひかけたはなしなど
ハンドルを握って引張ると、ビールだるをはめこんだような金庫のが、音もなく口をあけてくる——
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
先刻さっき通ったあの金性水の所には、昔時むかし四斗だる程の大蛇がんでおって、麓の村へ出てはしばしば人畜を害したので、須藤権守すどうごんのかみという豪傑が退治したという口碑が伝わっている。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「そうです、白木警部どの」とビールだるのように肥った赤坂巡査が横から口を出しました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
首領の四馬剣尺しばけんじゃくは、あいかわらずりゅう彫物ほりもののある、大きな椅子に坐っていた。身のたけ六尺にちかく、ビールだるのようにふとったからだは横綱よこづなもはだしで逃げだしそうな体格だ。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「手紙といえば、真弓まゆみが、なにかビールだるから、ことづかったようでしたが……」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぬかすところだった。おどろいたね、みそだるほどもある岩を、まるでまりを
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)