トップ
>
果敢
>
はか
ふりがな文庫
“
果敢
(
はか
)” の例文
万一事実であったらそれは母の寂しい生涯に
果敢
(
はか
)
ない一点の色彩を加えた物語として竜子は出来るかぎり美しい詩のように考えよう。
寐顔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
女らしいと云う点からも、美しい器量からも、私は到底彼女の競争者ではなく、月の前の星のように
果敢
(
はか
)
なく
萎
(
しお
)
れて了うのであった。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
秋
(
あき
)
かぜ少しそよ/\とすれば、
端
(
はし
)
のかたより
果敢
(
はか
)
なげに破れて、
風情
(
ふぜい
)
次第に
淋
(
さび
)
しくなるほど、
雨
(
あめ
)
の
夜
(
よ
)
の
音
(
おと
)
なひこれこそは哀れなれ。
あきあはせ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
兄妹三人のうち一番自分を可愛がつてくれる、その父への親愛も、思慕も、さむ/″\と薄らいでゆくやうな
果敢
(
はか
)
ない肌触りを感じた。
父の帰宅
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
引摺
(
ひきず
)
るほどにその
奴
(
やっこ
)
が着た、
半纏
(
はんてん
)
の印に、稲穂の
円
(
まる
)
の着いたのも、それか有らぬか、お孝が以前の、派手を語って
果敢
(
はか
)
なく見えた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
私はそれを見て、
果敢
(
はか
)
ない望みをこの花にかけてみたのです。もし私が癒るようなら、
蕾
(
つぼみ
)
をそれまで鎖ざしておいて下さいまし——と。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
世の
隨意
(
まゝ
)
ならぬは是非もなし、只ゝいさゝ川、底の流れの通ひもあらで、人はいざ、我れにも語らで、世を
果敢
(
はか
)
なむこそ浮世なれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
芭蕉の心が
傷
(
いた
)
んだものは、大宇宙の中に生存して孤独に弱々しく
震
(
ふる
)
えながら、
葦
(
あし
)
のように生活している人間の
果敢
(
はか
)
なさと悲しさだった。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
洗練
(
せんれん
)
された近代フランス人の「
憂鬱
(
ゆううつ
)
な朗らかさ」が、大気のように軽く、
虻
(
にじ
)
のように鮮麗に、そして夢のように
果敢
(
はか
)
なく動くのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
さうして、もし
此
(
この
)
冒險
(
ばうけん
)
に
成功
(
せいこう
)
すれば、
今
(
いま
)
の
不安
(
ふあん
)
な
不定
(
ふてい
)
な
弱々
(
よわ/\
)
しい
自分
(
じぶん
)
を
救
(
すく
)
ふ
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
はしまいかと、
果敢
(
はか
)
ない
望
(
のぞみ
)
を
抱
(
いだ
)
いたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
熱情はなるほど、
生來
(
せいらい
)
闇に迷へるものたるに恥ぢず、烈しく激するであらう。そして慾望はあらゆる
果敢
(
はか
)
ないことを夢見るだらう。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それにランプの焔はどこかしっかりした底力をもっているのに反して、蝋燭の焔は云わば根のない浮草のように
果敢
(
はか
)
ない弱い感じがある。
石油ランプ
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
第二は(毒々しき印象の第二である)二歳の時、ほんの少年少女に過ぎなかった彼女の両親が、
果敢
(
はか
)
なくも変死をとげてしまったことだ。
江川蘭子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
後に美妙と結婚して蜜月の甘い陶酔が
覚
(
さ
)
めない中に
果敢
(
はか
)
ない悲劇の犠牲となった
田沢稲舟
(
たざわいなふね
)
もまたこの寄書欄から出身した女秀才であった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこに
千年
(
ちとせ
)
の巖があるのです。巖に花も咲きます。つながりの工合だけで決定されてゆく人生というものは、謂わば
果敢
(
はか
)
ないものですね。
獄中への手紙:10 一九四三年(昭和十八年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
老、莊、揚、墨、孔丘、釋迦、其他古今の哲學者が
觀得
(
みえ
)
たる世界を小なりとして、自ら片輪なる世界を造らむは
果敢
(
はか
)
なきすさみならまし。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
朝
(
あした
)
に生れては
夕
(
ゆうべ
)
に死して行かなくてはならない
果敢
(
はか
)
ない運命、変転極りない運命、こういう事を深く考えて見ると全く、結んでは直に消え
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
乞食は、
果敢
(
はか
)
なく死んでしまったこの男のために、もう何の助けにもならなかった。と、ますますこの男の両親の仕打が腹立たしくなった。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
金谷の
宿
(
しゅく
)
で急病が起った為に、とうとう宗兵衛の手にかかって、日坂峠の秋の露、消えて
果敢
(
はか
)
なくなりにけりという事になったんでしょう。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
……そこに夜店の……といっただけでいけなければ、夜あかしの、そうした喰物やのうきくさの
果敢
(
はか
)
ないいのちは潜んでいる。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
然
(
しか
)
し
彼等
(
かれら
)
は一
方
(
ぱう
)
に
有
(
いう
)
して
居
(
ゐ
)
る
矛盾
(
むじゆん
)
した
羞耻
(
しうち
)
の
念
(
ねん
)
に
制
(
せい
)
せられて
燃
(
も
)
えるやうな
心情
(
しんじやう
)
から
竊
(
ひそか
)
に
果敢
(
はか
)
ない
目
(
め
)
の
光
(
ひかり
)
を
主
(
しゆ
)
として
夜
(
よ
)
に
向
(
むか
)
つて
注
(
そゝ
)
ぐのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
柏の
柩
(
ひつぎ
)
の底に、
経帳子
(
きょうかたびら
)
にしようと自分が選んでおいたあの
絹衣
(
きもの
)
につつまれた白骨をとどめるのみで、あわれ
果敢
(
はか
)
なく朽ちはてているであろう。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
こうまで
果敢
(
はか
)
ない人生をどうしてあんなに気強い事が言えたのかと、いまさらながら昔の自分のそんな無信仰が悔やまれてならないのだった。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
その貰えるって言葉が哀れ
果敢
(
はか
)
ない身分を証明している。男一匹、情けないじゃないか? 僕達は天から与えられた材幹によって養家の財産を
秀才養子鑑
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
彼は如何にしてか死刑を逃れ、神楽坂署長以下に恨みを述べ、懐しき妻子にも会わんものと数年間
果敢
(
はか
)
ない努力をし続けた。
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
幸福だと? そんなものは空想の概念だけで、けっして、ある現実的な状態をいうものではない。
果敢
(
はか
)
ない希望が、名前を得ただけのものじゃ。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一説には神の愛するものが米子の方にあつて、夜明を告ぐる鷄のために
果敢
(
はか
)
ない逢瀬をさまたげられた爲であるともいふ。
山陰土産
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
あなたの父上の負うべき一切のものを負わされて、わたしたちの
果敢
(
はか
)
ない宿命の愛が誤れる第一歩を踏み出したのでした。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
女の肉体美が如何に
果敢
(
はか
)
ないものか……無常迅速なものかという事を悟らせるにはこの六個の腐敗美人像だけで沢山なのだ。……論より証拠だ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
女子
(
おなご
)
の世に生れし
甲斐
(
かい
)
今日知りて
此
(
この
)
嬉しさ
果敢
(
はか
)
なや終り
初物
(
はつもの
)
、あなたは旅の御客、
逢
(
あう
)
も別れも
旭日
(
あさひ
)
があの
木梢
(
こずえ
)
離れぬ内
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今生
(
こんじょう
)
での、お別れになるかと思いますと、生きているのも
果敢
(
はか
)
なく覚えますが、然し、武士の妻として、いつでも、御出立出来るように、用意は——
寛永武道鑑
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
單に佛手柑の實が
酸
(
す
)
ゆかつたといつては世の中をつくづく
果敢
(
はか
)
なむだ頃の Tonka John の心は今思ふても罪のない鷹揚なものであつた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
自分のしていることがいかにも
果敢
(
はか
)
なく思われてきて、新しい出発の動機をつくるために自首するといい出しました。
キャラコさん:03 蘆と木笛
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それをしも通夜の席の笑いばなしの種子にされるというのは何という
果敢
(
はか
)
なくも薄手で安直な老女のいのちでしょう。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
絶えまなく熱烈に恋心にとらわれ、絶えまなく恋の幸福を夢みながら、たちまちその幸福の夢の
果敢
(
はか
)
なさを悟らされ、
苦
(
にが
)
い悲しみを味わわされていた。
ベートーヴェンの生涯:02 ベートーヴェンの生涯
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
果敢
(
はか
)
ない労力に句点をうって、鍬の先きが日の加減でぎらっぎらっと光った。津波のような音をたてて風のこもる霜枯れの防風林には
烏
(
からす
)
もいなかった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
かく更りゆくが人の身の上ぞ。我。されどおん身は、我母上の如く
果敢
(
はか
)
なくなり給ふことはあらじ。斯く云ひて、我は涙にくれたり。フランチエスカ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
たいていの場合こういうサービスというのは、話術でもって、
果敢
(
はか
)
ないサラリーマンの救いのない生活に、ひと時の灯をともしてくれるだけの話である。
パーティ物語
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
併し、モナコに於て、
零落
(
れいらく
)
したフランス貴族の
復辟
(
ふくへき
)
の夢も破れてしまったのです。イスタンブールで恋人はその身を
果敢
(
はか
)
なんで、死んでしまったのです。
バルザックの寝巻姿
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
このたびこそはと思うて、いつも心は勇むけれども、旅から旅を歩く間にはずいぶん
果敢
(
はか
)
ない思いをするのです。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一首の意は、巻向山の近くを音たてて流れゆく川の
水泡
(
みなわ
)
の如くに
果敢
(
はか
)
ないもので吾身があるよ、というのである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
人間の精神とは
果敢
(
はか
)
ないものであり、その時々の、環境の
培養菌
(
ばいやうきん
)
によつて、どんなにでも、精神は変化してしまふのだと、富岡は自分にうなだれてしまふ。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
流
(
ながれ
)
の女は朝鮮に流れ渡つて後、更に
何處
(
いづこ
)
の
涯
(
はて
)
に漂泊して其
果敢
(
はか
)
ない生涯を送つて居るやら、それとも既に此世を辭して
寧
(
むし
)
ろ靜肅なる死の國に
赴
(
おもむ
)
いたことやら
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
これから蹈み入れる長い人生の様々な姿を想ひ浮かべますと、たゞ
果敢
(
はか
)
なく過ぎ去つた夢ばかりを胸に抱いて泣き濡れてゐることは余りに弱くはないでせうか。
〔婦人手紙範例文〕
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
大自然の息吹の中では一点のしみのやうな
果敢
(
はか
)
ない生存、その日その日の天候や、山や森の移りかはる表情の悲しさに比べてさへあまりに細々とした喜怒哀楽
逃げたい心
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼女
(
かのぢよ
)
に
若
(
も
)
しもその
時
(
とき
)
子供
(
こども
)
がなかつたならば、
呪
(
のろ
)
ひや
果敢
(
はか
)
なみや、たゞ
世間
(
せけん
)
をのみ
對象
(
たいしやう
)
にして
考
(
かんが
)
へた
汚辱
(
をじよく
)
のために、
如何
(
いか
)
にも
簡單
(
かんたん
)
に
死
(
し
)
んでしまつたかも
知
(
し
)
れない。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
彼女はたゞひそかに自らを
果敢
(
はか
)
なみながら、男の指図のまゝになつてゐるより他はありませんでした。
内気な娘とお転婆娘
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
これ然し、怪むべきでないかも知れぬ、自然の大なる声に呑まれてゆく人の声の
果敢
(
はか
)
なさを思へば。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼女は今頃はどこにどうしていられるやら、生れた子は男か女か、ああ世は
果敢
(
はか
)
なきありさまよな。
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
むろん、ぼくはそれが自分の不安をごまかす
果敢
(
はか
)
ない強がりであるくらいは、充分に承知していた。
煙突
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
果
常用漢字
小4
部首:⽊
8画
敢
常用漢字
中学
部首:⽁
12画
“果敢”で始まる語句
果敢無
果敢々々
果敢々々敷
果敢迅速