本尊ほんぞん)” の例文
自分の守り本尊ほんぞんとして終生祭りたいと思うのです。もっともお譲り下さるならば、師匠がお求めになった代を私はお払いしますから
たとへばつき本尊ほんぞんかすんでしまつて、田毎たごと宿やどかげばかり、たてあめなかへふつとうつる、よひ土器色かはらけいろつきいくつにもつてたらしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二条のたちの大廊下は、信長を本尊ほんぞんとして、退がって来る者、伺候する者など、加茂の参道ほど往来が多い。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「長戸さん。あなたはここへきて、さっきからあれほど、金属Qなるものの活動をごらんになっておきながら、まだその本尊ほんぞんを信じようとはせられないのですか」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしも私が日蓮にちれんほどの偉物えらぶつであったなら、きっと私は、草木を本尊ほんぞんとする宗教を樹立じゅりつしてみせることができると思っている。私は今草木くさき無駄むだらすことをようしなくなった。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
この日本につぽんには、男は十九億九萬四千八百二十八にん、女は廿九億九萬四千八百三十にんの、この男女がみんな念佛者ねんぶつしやで、みんな阿彌陀佛あみだぶつ本尊ほんぞんとしてゐるから、現世げんせの祈りもその如く
もとはインドの奥のほうにあるお寺の本尊ほんぞんのひたいに、はめこんであったもので、それが、いまから一世紀もまえに、イギリス人の手にわたり、それから、いろいろな人の手をへて
黄金豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
うちの中でこそ、リーズがご本尊ほんぞんだが、外の風に当たるともうわすれられてしまった。
さては放蕩のらかと人々ひと/″\かほ見合みあはせておみね詮議せんぎかりき、かう餘徳よとくらず石之助いしのすけつみりしか、いや/\りてついでかぶりしつみかもれず、さらば石之助いしのすけはおみねまも本尊ほんぞんなるべし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土壇場どたんばへじゃまがはいって、手のうちの玉をおとした思いのところへ、見ると、弥生がもとより詳しいことはしらないが、なんでもみなが命がけの大さわぎをしてきたその本尊ほんぞんのふたつの刀を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
本尊ほんぞんは、まだまたゝきもしなかつた。——うちに、みぎおとが、かべでもぢるか、這上はひあがつたらしくおもふと、寢臺ねだいあし片隅かたすみ羽目はめやぶれたところがある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この宝石は、もとはインドの奥地にある、ある古いお寺のご本尊ほんぞんの、大きな仏像のひたいにはめこんであったものだそうだ。始は学校で教わったことがあるだろう、白毫びゃくごうというものだ。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「君は、そうした要求の背後に、いかなる本尊ほんぞんさまがあるのかを知らねば駄目だ」
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女は何故なぜ死んだ、芸に生きなかったかとは言いたくない。彼女には宗教もない、彼女の信仰は自分自身であったのであろう。その本尊ほんぞんが死を決したときに芸術も信仰も残らぬはずである。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
自然の宗教! その本尊ほんぞんは植物。なんら儒教じゅきょう、仏教と異なるところはない。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
づからなる名譽めいよはあれど、こひ本尊ほんぞんあればわきだちにれるなく、一しんおもひみてはありむかしのさとしならで、可惜あたら廿四の勉強べんきやうざかりを此体このていたらく殘念ざんねんともおもはねばこそ、甚之助じんのすけ追從つゐしようしあるきて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だう書附かきつけには故将堂こしやうだうとあり、おほきわづか二間四方許にけんしはうばかり小堂せうだうなり、本尊ほんぞんだにみぎごとくなれば、此小堂このせうだう破損はそんはいふまでもなし、やう/\にえんにあがりるに、うちほとけとてもなく
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ところでちょっと、その本尊ほんぞんさまというのを見せてくれよ」
透明猫 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もすそひらいて、もだくるしむがごとくにえつゝ、本尊ほんぞんたるをんなざうは、ときはや黒煙くろけむりつゝまれて、おほき朱鷺ときかたちした一団いちだんが、一羽いちはさかさまうつつて、水底みなぞこひとしく宿やどる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふん一時いつときと、此方こつち呼吸いきをもめてますあひだ——で、あま調そろつた顏容かほだちといひ、はたしてこれ白像彩塑はくざうさいそで、ことか、仔細しさいあつて、べう本尊ほんぞんなのであらう、とおもつたのです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奥州筋おうしうすぢ近来きんらい凶作きようさく此寺このてら大破たいはおよび、住持ぢうじとなりても食物しよくもつとぼしければそう不住すまず明寺あきでらとなり、本尊ほんぞんだに何方いづかた取納とりおさめしにやてらにはえず、には草深くさふかく、まこと狐梟こけうのすみかといふもあまりあり。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)