晃々きらきら)” の例文
其の火は朝露あさつゆ晃々きらきらと、霧を払つて、満山まんざんに映つた、松明は竜田姫たつたひめが、くてにしきむる、燃ゆるが如き絵の具であらう。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その途端に燈火ともしびはふっと消えて跡へは闇が行きわたり、燃えさした跡の火皿ひざらがしばらくは一人で晃々きらきら
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
そしてやがてのこと、晃々きらきらね返す光と研水とぎみずのしずくをぬぐいあげて
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、その青鳶あおとびも樹にとまったていに、四階造しかいづくり窓硝子まどがらすの上から順々、日射ひざし晃々きらきらと数えられて、仰ぐと避雷針が真上に見える。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月の光が行通れば、晃々きらきらもすそが揺れて、両の足の爪先つまさきに、うつくしあやが立ち、月が小波ささなみを渡るように、なめらかに襞襀ひだを打った。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出る、ともう、そこらでふくろうの声がする。寂寥しんとした森の下を、墓所に附いて、薄暮合いに蹴込けこみ真赤まっかで、晃々きらきら輪が高く廻った、と思うと、早や坂だ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ね、ただ、おぐし円髷まげの青い手絡てがらばかり、天と山との間へ、青い星が宿ったように、晃々きらきらと光って見えたんですって。
蒼空あおぞらの下を、矢輻やぼね晃々きらきらと光る車が、けてもいたのに、……水には帆の影も澄んだのに、……どうしてその時、大阪城の空ばかり暗澹あんたんとして曇ったろう。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
祖母と、父と、その客とことばを交わしたが、その言葉も、晃々きらきらと、震えて動いて、目を遮る電光いなびかりは隙間を射た。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
双方黒い外套が、こんがらかって引返すと、停車場ステエションには早や駅員の影も見えぬ。毛布けっとかぶりのせた達磨だるまの目ばかりが晃々きらきらと光って、今度はどうやら羅漢に見える。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手に手に、すくすくとやりを立つ。穂先白く晃々きらきらとして、氷柱つららさかしまに黒髪を縫う。あるものは燈籠を槍に結ぶ、ともしびの高きはこれなり。あるものは手にし、あるものは腰にす。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気をかえてきっとなって、もの忘れした後見こうけんはげしくきっかけを渡すさまに、紫玉は虚空に向って伯爵の鸚鵡を投げた。が、あの玩具おもちゃの竹蜻蛉のように、晃々きらきらと高く舞った。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気をかへてきっと成つて、もの忘れした後見こうけんはげしくきつかけを渡すさまに、紫玉は虚空こくうに向つて伯爵の鸚鵡おうむを投げた。が、あの玩具おもちゃ竹蜻蛉たけとんぼのやうに、晃々きらきらと高く舞つた。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(栗の林へかささぎの橋がかかりました。お月様はあれを渡って出なさいます。いまに峰を離れますとね、谷の雲が晃々きらきらと、銀のような波になって、兎の飛ぶのが見えますよ。)
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外面おもての、印度インド洋に向いた方の、大理石のまわえんには、のきから掛けて、ゆかへ敷く……水晶のすだれに、星の数々ちりばめたやうな、ぎやまんの燈籠とうろうが、十五、晃々きらきらいて並んで居ます。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
しかし残月ざんげつであったんです。何為なぜかというにその日の正午ひる頃、ずっと上流のあやしげなわたしを、綱につかまって、宙へつるされるようにして渡った時は、顔がかっとする晃々きらきらはげし日当ひあたり
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銀杏返いちょうがえしもぐしや/\に、つかんでたばねた黒髪に、琴柱形ことじがたして、晃々きらきらほ月光に照映てりかへる。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
下目づかいに、晃々きらきらと眼鏡を光らせ、額でにらんで、帽子を目深まぶかに、さも歴々が忍びのてい
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
引窓がばた/\と暗い口をく。空模様は、そのくせ、星が晃々きらきらして、澄切つて居ながら、風は尋常ならず乱れて、時々むく/\と古綿を積んだ灰色の雲が湧上がる。とぽつりと降る。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
夢には、桜は、しかし桃のこずえに、妙見宮の棟下りに晃々きらきらと明星が輝いたのである。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山も、空も氷をとおすごとく澄みきって、松の葉、枯木のきらめくばかり、晃々きらきらがさしつつ、それで、ちらちらと白いものが飛んで、奥山に、熊が人立じんりつして、針をくような雪であった。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目の光の晃々きらきらえたに似ず、あんぐりと口を開けて、厚い下唇を垂れたのが、別に見るものもない茶店の世帯を、きょろきょろとみまわしていたのがあって——お百姓に、船頭殿は稼ぎ時
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
空の星も晃々きらきらとして、二人の顔も冴々さえざえと、古橋を渡りかけて、何心なく、薬研やげんの底のような、この横流よこながれの細滝に続く谷川の方を見ると、岸から映るのではなく、川瀬に提灯が一つ映った。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中にはもやった船に乗って、両手を挙げて、呼んだ方もござんした、が、うその時は波の下で、小雪さんの髪が乱れる、と思う。海の空に、珠のかんざしの影かしら、晃々きらきら一ツ星が見えました。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
侍女六人、ひとしくその左右に折敷き、手に手に匕首あいくちを抜連れて晃々きらきらと敵に構う。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
髪のつやも、色の白さも、そのために一際目立つ、——糸織か、一楽いちらくらしいくすんだ中に、晃々きらきらえがある、きっぱりした地の藍鼠あいねずみに、小豆色あずきいろと茶と紺と、すらすらと色の通ったしま乱立らんたつ
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
電車のちりも冬空です……澄透すみとおった空に晃々きらきら太陽が照って、五月頃のうしおが押寄せるかと思う人通りの激しい中を、薄い霧一筋、岸から離れて、さながら、東海道で富士をながめるように、あの
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御髪おぐしつやに星一ツ晃々きらきらと輝くや、ふと差覗さしのぞくかとして、拝まれたまいぬ。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いかにも、湖は晃々きらきらと見える。が、水が蒼穹おおぞらに高い処に光っている。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我に返って、うように、空屋の木戸を出ると、雨上りの星が晃々きらきら
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
七月目の腹籠はらごもり、蝮が据置かれた硝子がらす戸棚は、蒼筋あおすじの勝ったのと、赤い線の多いのと、二枚解剖かいぼうの図を提げて、隙間一面、晃々きらきらと医療器械の入れてあるのがちょうど掻巻かいまきすその所、二間の壁に押着おッつけて
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蟹五郎 南無三宝なむさんぽう、堂の下で誓を忘れて、つりがねの影を踏もうとした。が、山も田圃たんぼ晃々きらきらとした月夜だ。まだまだしめった灰も降らぬとなると、俺も沢を出て、山の池、御殿の長屋へかずばなるまい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みどりやじりの千の矢のように晃々きらきらと雨道を射ています。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蜘蛛の囲の虫晃々きらきらと輝いて、鏘然しょうぜん珠玉たまひびきあり。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして晃々きらきらと輝きました。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして晃々きらきらと輝きました。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)