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おやゆび
ふりがな文庫
“
拇指
(
おやゆび
)” の例文
中指の爪が一番はやく伸び、
拇指
(
おやゆび
)
のが一番遅い。両手をくらべると、右手の爪が左手のよりも幾分はやく伸びる慣はしになつてゐる。
茶話:07 大正十四(一九二五)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
大統領は膝に肘をつき、
拇指
(
おやゆび
)
と人差指で大きな顎をささえるようにしながら、持前のふてぶてしい顔つきになってスチムソンを見た。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
で、伊織は、武蔵に
倣
(
なら
)
って、前へ出ようと努めるのだったが、武蔵の眼を見ていては、到底、足の
拇指
(
おやゆび
)
も、にじり出せないのである。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガヴローシュは軽蔑しきったようなふうで、その仕返しとしてはただ、手を大きく開きながら
拇指
(
おやゆび
)
の先で鼻の頭を押し上げてみせた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
花の落ちた小枝を
剪
(
き
)
っているうちに気が付いて、よく見ると、大きさはやっと
拇指
(
おやゆび
)
の頭くらいで、まだほんの造り始めのものであった。
小さな出来事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
▼ もっと見る
お里は、よく物を見てから借りて来たのであろう反物を、再び彼の枕頭に拡げて縞柄を見たり、
示指
(
さしゆび
)
と
拇指
(
おやゆび
)
で
布地
(
きれじ
)
をたしかめたりした。
窃む女
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
右の
拇指
(
おやゆび
)
の爪の垢から
胡椒
(
こしょう
)
の粉が発見されたんですけれど、これは今あなたのお話しになった、解剖の結果を裏書きしたにすぎません。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
甲斐は右の手をあげ、
拇指
(
おやゆび
)
の爪で中指の爪を静かにこすった。七十郎は、その世評は貴方が自から作ったものだと思った、とつづけた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
帳場に横向きになって、
拇指
(
おやゆび
)
の腹で、ぱらぱらと帳面を繰っていた、
肥
(
ふと
)
った、が
効性
(
かいしょう
)
らしい、
円髷
(
まるまげ
)
の女房が、
莞爾
(
にっこり
)
目迎
(
むか
)
えたは
馴染
(
なじみ
)
らしい。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「一つは右足の
拇指
(
おやゆび
)
がすこし短いのだ。よく見ると、それは
破傷風
(
はしょうふう
)
かなんかを患って、それで指を半分ほど切断した
痕
(
あと
)
だと思う」
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
拇指
(
おやゆび
)
から起って小指に終る繊細な五本の指の整い方、絵の島の海辺で獲れるうすべに色の貝にも劣らぬ爪の色合い、珠のような
踵
(
きびす
)
のまる
味
(
み
)
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と云われ源次郎は忍び姿の事なれば、大小を落し
差
(
ざし
)
にして居りましたが、此の様子にハッと驚き、
拇指
(
おやゆび
)
にて鯉口を切り、
慄
(
ふる
)
え声を
振立
(
ふりた
)
って
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「金剛石でございましたら、私もそれの高価のことを、以前に承わりましてござります。
拇指
(
おやゆび
)
の先ほどの大きさで、幾千両と申しますことで」
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と等分に二人へ云いかけながら、先ず青木の脚の繃帯を
解
(
と
)
いた。色の黒い毛ムクジャラの
脛
(
すね
)
のあたりを、
拇指
(
おやゆび
)
でグイグイと押しこころみながら
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
八五郎のガラッ八は、
拇指
(
おやゆび
)
を
蝮
(
まむし
)
にして、自分の肩越しに入口の方を指しながら、日本一の突き詰めた顔をするのでした。
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ときどき手を休めて、左手の
拇指
(
おやゆび
)
を帯にはさめ、充血して表情を忘れた顔をまつすぐに挙げて、冷めたい庭先を見てゐることがあるかも知れない。
麓
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
隅
(
すみ
)
の方で、
立膝
(
たてひざ
)
をして、
拇指
(
おやゆび
)
の
爪
(
つめ
)
をかみながら、上眼をつかって、皆の云うのを聞いていた男が、その時、うん、うんと頭をふって、うなずいた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
まだ暖みの少い早朝の澄んだ光線を背中にうけてその窓框に数人押し並び、その中の一人が靴下の中で
頻
(
しき
)
りに
拇指
(
おやゆび
)
を動かしながら何か説明している。
乳房
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
此方
(
こちら
)
は真暗、向うには
燈
(
あかり
)
がついているので、
目隠
(
めかくし
)
の板に
拇指
(
おやゆび
)
ほどの
大
(
おおき
)
さの節穴が丁度二ツ開いてるのがよく分った。
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
死力を
籠
(
こ
)
めたる細き
拇指
(
おやゆび
)
に、左眼
抉
(
ゑぐ
)
られたる松島は、
痛
(
いたみ
)
に堪へ得ぬ
面
(
かほ
)
、
僅
(
わづか
)
に
擡
(
もた
)
げつ「——秘密——秘密に——名誉に関はる——早く医者を、内密に——」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
さて、君の左の人差し指と
拇指
(
おやゆび
)
の間の皮膚の筋を見て、君が採金地の株を買わなかったと云うことが、あまり首をひねりまわさない
中
(
うち
)
に解ったと云うわけさ
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
あの首のくゝれたやうな独特の形をした
罎
(
びん
)
の口を塞いでゐる円い
硝子玉
(
ビーだま
)
、それを
拇指
(
おやゆび
)
でぐつと押すと、ポン・シユッと胸のすくやうな快音を立てて抜ける
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
大きさは両手の
拇指
(
おやゆび
)
と人差指で大幅に一囲みして形容する白
牡丹
(
ぼたん
)
ほどもあろうか。それが一つの金魚であった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
五分刈
(
ごぶがり
)
は向き直って「あの声は胸がすくよだが、惚れたら胸は
痞
(
つか
)
えるだろ。惚れぬ事。惚れぬ事……。どうも脚気らしい」と
拇指
(
おやゆび
)
で
向脛
(
むこうずね
)
へ
力穴
(
ちからあな
)
をあけて見る。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
見ると、なるほど、
拇指
(
おやゆび
)
と人差指の境のところに、一センチくらゐはなれて、小さい疣が二つありました。
疣
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
花房は佐藤にガアゼを持って来させて、両手の
拇指
(
おやゆび
)
を厚く巻いて、それを口に
挿
(
さ
)
し入れて、下顎を左右二箇所で押えたと思うと、後部を下へぐっと押し下げた。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
拇指
(
おやゆび
)
を
肋
(
あばら
)
の所で背負帶に挾んで兩肘を張つてうつむきながらそろそろと歩く。榾は五尺程の長さである。横に背負つて居るのだから岩角へぶつつかりさうである。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
拇指
(
おやゆび
)
よりもちいさな豆つぶのだんなさま、赤いおわんにのって海へでるおりこうさん、気ちがいうまにのってめちゃくちゃにかけてゆく気ちがいの親子、そうした
まざあ・ぐうす
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
第3図は人品いやしからぬ老婦人の足を写生したものであるが、このように太い紐がついていて、その前方が
拇指
(
おやゆび
)
とその次の指との間に入るように工夫されている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
とよぶとお国さんは玄関の障子を細めにあけ
拇指
(
おやゆび
)
を鼻のさきへだしてさも怖さうに手をふつてみせる。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
お団子を半分にして、それを
拇指
(
おやゆび
)
でおしつけたように、押しつけたところがピタンとしている。大きな鼻の穴が、
竪
(
たて
)
に二つ
柿
(
かき
)
のたねをならべたように上をむいている。
旧聞日本橋:24 鬼眼鏡と鉄屑ぶとり(続旧聞日本橋・その三)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
手の裏には、四本の指の
痕
(
あと
)
のような紫の痕があって、
拳
(
こぶし
)
の上には細い
拇指
(
おやゆび
)
の痕らしいものもあった。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
右手の
拇指
(
おやゆび
)
と人さし指で、角のところをつまんでいた二枚の紙幣を、相手のほうへ差し出して見せたかと思うと、いきなり荒々しく引っつかんで、
皺
(
しわ
)
くちゃにしながら
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
但右の養蚕家入門中、桑を切るとて大きな桑切庖丁を左の
掌
(
てのひら
)
の
拇指
(
おやゆび
)
の根にざっくり切り込んだ其
疵痕
(
きずあと
)
は、彼が養蚕家としての試みの
記念
(
きねん
)
として今も三日月形に残って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
と右の
拇指
(
おやゆび
)
のない水夫がいった。かれは
喧嘩
(
けんか
)
が自慢で、もし喧嘩に負けたら、指を一本ずつきりおとすんだと広言した。ところがある日、
海蛇
(
うみへび
)
と大げんかをやって負けた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
4
悪魔の拳
(
フィガ・ド・デアボ
)
。これは有名な
葡萄牙
(
ポルトガル
)
の国産品で、やはり迷信的な厄払いのひとつだ。振りこぶしの人さし指と中指のあいだから
拇指
(
おやゆび
)
のあたまを覗かせたもので、形は小さい。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
屋外に
焜炉
(
こんろ
)
を置いて、室の壁にあけた小穴から鏝を通しては
灼熱
(
しゃくねつ
)
する。さて右足の
拇指
(
おやゆび
)
に焼鏝の
柄
(
え
)
を
宛
(
あ
)
てがい、右手で鏝を、左手で竹を動しながら、
巧
(
たくみ
)
にす早く絵附けをする。
全羅紀行
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
仕方がないから
渋川流
(
しぶかわりゅう
)
という訳でもないが、わが
拇指
(
おやゆび
)
をかけて、ぎくりとやってしまった。指が離れる、途端に
先主人
(
せんしゅじん
)
は
潮下
(
しおしも
)
に流れて行ってしまい、竿はこちらに残りました。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
鉛筆の中ほどを、小指と薬指との間に挾んで、それを斜めにしたのを、
拇指
(
おやゆび
)
と人差指とで
摘
(
はさ
)
んで書くそうだがね。そういった訳で、夫人の筆蹟はちょっと真似られんそうだよ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
まずはじめに私の国のやり方によって誓い、次にこの国のやり方で誓わされたのですが、それは右の足先を左手で持ち、右手の中指を頭の上に、
拇指
(
おやゆび
)
を右の
耳朶
(
みみたぶ
)
におくのでした。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
組みあわした手では彼の
拇指
(
おやゆび
)
がいどみ合った。虚々実々のたたかいをはじめていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
此噐の用は
未
(
いま
)
だ詳ならざれど
之
(
これ
)
を手に取りて持ち
加減
(
かげん
)
より考ふるに、
兩方
(
りやうはう
)
の掌を平らに
並
(
なら
)
べ其上に此噐を受け、掌を
凹
(
ひく
)
くして噐の
底
(
そこ
)
に當て、左右の
拇指
(
おやゆび
)
を噐の上部に
掛
(
か
)
けて噐を
押
(
お
)
さへ
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
猛犬にあいたるとき、右手の
拇指
(
おやゆび
)
より、
子
(
ね
)
、
丑
(
うし
)
、
寅
(
とら
)
、
卯
(
う
)
と唱えつつ順次に指を屈し、小指を口にてかみ、「寅の尾を踏んだ」と言うときは、いかなる猛犬も尾を巻きて
遁走
(
とんそう
)
するという。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
銀子はまた同じ
家
(
うち
)
から早い口がかかり、行ってみると、女中が
段梯子
(
だんばしご
)
の上がり口へ来て、そっと
拇指
(
おやゆび
)
を出して見せ、倉持の母が
逢
(
あ
)
って話をしてみたいと言って、待っていると言うのだった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
はつと見るとその人には兩足の指が
拇指
(
おやゆび
)
を殘して他は一本も無いのである。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
右の
拇指
(
おやゆび
)
と
示指
(
ひとさしゆび
)
とにて丸い輪を拵へ「お金が欲しうございます」といふ。
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
拇指
(
おやゆび
)
と人差指の多忙な債券調査、海綿の音高い悲鳴、野蛮な響きを撒きちらす鋏、
撥
(
は
)
ね返るスタンプ、
※
(
わらいごえ
)
、ナンバアリングの
律動的
(
リズミカル
)
な活動、騒々しい帳薄の開閉、大仰な溜息、金額を叫ぶソプラノ
罠を跳び越える女
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
みんなは
環
(
わ
)
になつて
坐
(
すわ
)
つて、自分の籠の中から、なるべく大きいのを
択
(
え
)
り出して、その皮を前歯でむくと、中の
渋
(
しぶ
)
を
拇指
(
おやゆび
)
の
爪
(
つめ
)
や、前歯でとつて、とてもいゝ音をさせて、カリ/\と食べだしました。
栗ひろひ週間
(新字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
ビッデンハムでは九月二十二日ごとに白兎を緋の紐で飾り運んでアガサ尊者の
頌
(
ヒムン
)
を歌い村民行列す。未婚の女これに遇わば皆左手の
拇指
(
おやゆび
)
と食指を伸して兎に向い処女よ処女よ
他
(
かれ
)
をここに葬れと唱う。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
垣根の真中から不意に生ひ出して来た野生の
藤蔓
(
ふぢづる
)
が人間の
拇指
(
おやゆび
)
よりももつと太い蔓になつて、生垣を突分け、その大樹の松の幹を、
恰
(
あたか
)
も
虜
(
とりこ
)
を捕へた綱のやうに、ぐるぐる巻きに巻きながら
攀
(
よ
)
ぢ登つて
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
“拇指(
親指
)”の解説
親指(おやゆび)は、手の場合は掌を地面に向けたときに、足の場合は直立したときに、一番内側に位置する指。一般的に指の中で一番太い。
和語ではお父さん指、大指、医学用語では第一指、母指、拇指、漢語では母指、拇指、巨指、巨擘(きょはく)、擘指(はくし)との呼び方がある。
人間の手の親指は、他の4本の指と向き合う方向にあることが特徴であり、これにより、人間は器用にものを「掴む」「摘む」ことができる。
(出典:Wikipedia)
拇
漢検1級
部首:⼿
8画
指
常用漢字
小3
部首:⼿
9画
“拇指”で始まる語句
拇指痕
拇指紋
拇指大