「ごらんなさい。あの男ですよ」 村役場の楼上で老村長と対談中の鮫島校長は早口に叫んで荒涼とした高原を指さした。 なだらかに傾斜する見果てない衰微。白樺の葉は落ちて白い木肌のみ冷めたい高原の中を、朽葉を踏み、紆るやうに彷徨ふ人影が見えた。 「 …
著者 | 坂口安吾 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「桜 五月創刊号~第二号」中西書店、1933(昭和8)年5月1日~7月1日 |
文字種別 | 新字旧仮名 |
読書目安時間 | 約46分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約1時間17分(300文字/分) |