トップ
>
憤
>
いか
ふりがな文庫
“
憤
(
いか
)” の例文
信吾の
憤
(
いか
)
りは
再
(
また
)
発した。(有難う御座います。)その言葉を幾度か繰返して思出して、遂に、
頭髪
(
かみ
)
を
掻挘
(
かきむし
)
りたい程腹立たしく感じた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しかし、わしは夜を日についで、
北京府
(
ほっけいふ
)
に立ち帰り、かよう
云々
(
しかじか
)
と、
梁中書
(
りょうちゅうしょ
)
閣下にお告げする。当然、烈火のお
憤
(
いか
)
りは知れたこと。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
笑ふかと見れば泣き、泣くかと見れば
憤
(
いか
)
り、
己
(
おのれ
)
の胸のやうに
際
(
そこひ
)
も知らず黒く濁れる夕暮の空に向ひてその
悲
(
かなしみ
)
と恨とを訴へ
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
佐竹はその無情を
憤
(
いか
)
って、乗って来た馬の首を寺の井戸の中に斬り落し、自分は大平山の上にのぼって自殺して果てた。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
内儀のお延はフト舌を
滑
(
すべ
)
らせて、あわてて口を
緘
(
つぐ
)
みました。聡明さがツイ、女の本能の
憤
(
いか
)
りに破れたという様子です。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
或るときは、
憤
(
いか
)
りで真蒼になって、痩せた指でプセットを
摘
(
つま
)
みあげてその眼をじっと睨み据えているかと思うと、だしぬけに地面へ叩きつけたりした。
老嬢と猫
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
藤原は、船尾にランプをつり上げながら、残された船を見送って、
堪
(
た
)
えられない寂しさと、
憤
(
いか
)
りとに心を燃やした。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
それを
憤
(
いか
)
りて
喰
(
くっ
)
て懸れば、手に合う者はその場で
捻返
(
ねじかえ
)
し、手に合わぬ者は一
時
(
じ
)
笑ッて済まして
後
(
のち
)
、必ず
讐
(
あだ
)
を
酬
(
むく
)
ゆる……
尾籠
(
びろう
)
ながら、犬の
糞
(
くそ
)
で
横面
(
そっぽう
)
を
打曲
(
はりま
)
げる。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ミンチン先生はそれを止める術もなく、
憤
(
いか
)
りのあまり石のように立って、セエラを見送るばかりでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
今はかの当時、何を恥じ、何を
憤
(
いか
)
り、何を悲しみ、何を恨むともわかち難き感情の、
腸
(
はらわた
)
に
沸
(
たぎ
)
りし時は過ぎて、一片の痛恨深く
痼
(
こ
)
して、人知らずわが心を
蝕
(
くら
)
うのみ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「いうまでもない儀にござります」ますます桃ノ井兵馬の声は、
憤
(
いか
)
りと怨みとに顫えを帯びて来た。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「
俺
(
お
)
れこた
怒
(
おこ
)
んねえ、
俺
(
お
)
ら
怒
(
おこ
)
つたつ
位
(
くれえ
)
遁
(
に
)
げつちやあから」
與吉
(
よきち
)
のいふのを
聞
(
き
)
いて
爺
(
ぢい
)
さんの
憤
(
いか
)
りは
和
(
やはら
)
げられた。
卯平
(
うへい
)
は
蒼
(
あを
)
い
顏
(
かほ
)
をして
凝然
(
ぢつ
)
と
瞑
(
つぶ
)
つた
目
(
め
)
を
蹙
(
しが
)
めて
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それによると美しき酋長の娘に思いをよせた狒々は、余り浮かれ過ぎて
悪巫山戯
(
わるふざけ
)
をしたので、遂に酋長の
憤
(
いか
)
りを買って捕えられ、『鉄の処女』の刑に処せられることになった。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
月日の流れは、いかなる悲しみも、恐れも、
憤
(
いか
)
りも、いつとなく洗い薄めて行くものだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お高へ
渡
(
わたし
)
種々
(
しゆ/″\
)
源八が
戀慕
(
こひした
)
ふ樣子を物語りければお高は大に
憤
(
いか
)
り文を
投付
(
なげつけ
)
一言も云はず
直
(
すぐ
)
に母へ右の事を
話
(
はな
)
せしにぞ父も此事を
聞
(
きゝ
)
然樣
(
さやう
)
の者は
暇
(
いとま
)
を
遣
(
つかは
)
すに
如
(
しく
)
はなしと與八へは
永
(
なが
)
の暇を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
引摺
(
ひきず
)
りな阿魔めと、
果
(
はて
)
は
憤
(
いか
)
りを発して打ち打擲を続けるのだそうでございまして。
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、貴方からいつまでも離れまいとする心は、いつでも時江さんに飛びついていて、貴方そっくりのあの顔に、しっくりと絡みついて離れないのです。ああお
憤
(
いか
)
りになってはいけませんわ。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
鉉
愈
(
いよいよ
)
屈せず、太祖高皇帝の
神牌
(
しんぱい
)
を書して城上に懸けしむ。燕王
敢
(
あえ
)
て撃たしむる
能
(
あた
)
わず。鉉又
数々
(
しばしば
)
不意に出でゝ壮士をして燕兵を
脅
(
おびや
)
かさしむ。燕王
憤
(
いか
)
ること
甚
(
はなはだ
)
しけれども、計の出づるところ無し。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
飢ゑ
死
(
し
)
にし鰐の怒りを我思ふわれの
憤
(
いか
)
りに似ずとはいはじ
河馬
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
雄々し、
憤
(
いか
)
るかその姿
泣菫詩抄
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼女はその赤ん坊をごく静かに
揺
(
ゆす
)
ぶりながら、ぼんやり見とれていると、ふいに、今までの
憤
(
いか
)
りも憎しみも一つの
涯
(
かぎ
)
りない温情の中へ溶けこんで行った。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
だから能登守の左右の者が、その無礼を
憤
(
いか
)
って眼と眼を見合わせると、能登守はなにげなき
風情
(
ふぜい
)
で取合いません。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に、こう駈け廻りつつ叫ぶ声が、
夜叉
(
やしゃ
)
の襲来のようであった。——若い声、しゃがれた声、
憤
(
いか
)
り声。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
呼べど
号
(
さけ
)
べど、宮は返らず、老婢は居らず、貫一は
阿修羅
(
あしゆら
)
の如く
憤
(
いか
)
りて起ちしが、又
仆
(
たふ
)
れぬ。仆れしを漸く
起回
(
おきかへ
)
りて、
忙々
(
いそがはし
)
く
四下
(
あたり
)
を
眴
(
みまは
)
せど、はや宮の影は在らず。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
立春
(
りつしゆん
)
の
日
(
ひ
)
を
過
(
す
)
ぎてから、
却
(
かへつ
)
て
黄昏
(
たそがれ
)
の
果敢
(
はか
)
ない
薄
(
うす
)
い
光
(
ひかり
)
の
空
(
そら
)
に
吹
(
ふ
)
き
落
(
お
)
ちる
筈
(
はず
)
の
西風
(
にしかぜ
)
が
何
(
なに
)
を
憤
(
いか
)
つてか
吹
(
ふ
)
いて/\
吹
(
ふ
)
き
捲
(
まく
)
つて、
夜
(
よ
)
に
渡
(
わた
)
つても
幾日
(
いくにち
)
か
止
(
や
)
まぬ
程
(
ほど
)
な
稀有
(
けう
)
な
現象
(
げんしやう
)
に
伴
(
ともな
)
うて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
私はその時始めて弟の悪辣な計画を知って
憤
(
いか
)
り、彼が時機を見て発表するからそれまでは秘密にしていろ、と堅く口留めしました自分の身分をすっかり院長に語ってしまいました。
鉄の処女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
致されよ往々は家主の爲にもなるまじと申入たれば大に
憤
(
いか
)
り
却
(
かへつ
)
て我々を
追立
(
おひたて
)
んと
爲
(
なす
)
故
(
ゆゑ
)
泥工
(
さくわん
)
の
棟梁
(
とうりやう
)
家主に異見して
相濟
(
あひすみ
)
し程の事もあれば馬喰町の隱居殺したるは勘太郎に
違
(
ちがひ
)
なしと申を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
石となれ石は怖れも苦しみも
憤
(
いか
)
りもなけむはや石となれ
和歌でない歌
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
文三はモウ堪え切れない
憤
(
いか
)
りの声を振上げて
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
つい今の、内匠頭の態度は、内心、彼の胸を十分に
憤
(
いか
)
らしていた。見ておれと、思っていた機会が、すぐ来たのだ。彼は、ばしっと、扇子で自分の
掌
(
て
)
を打った。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あの場合彼女がよしんば意味のない言葉をしゃべくっていたとしても、或は美くしい詩を朗読していたとしても、おれはまったく同一の
憤
(
いか
)
りを感じたにちがいない。
ピストルの蠱惑
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
かかることありし翌日は
夥
(
おびただし
)
く脳の
憊
(
つか
)
るるとともに、心乱れ動きて、その
憤
(
いか
)
りし
後
(
のち
)
を憤り、悲みし後を悲まざれば
已
(
や
)
まず、為に必ず一日の勤を廃するは彼の病なりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
以て勘太郎
店立
(
たなだて
)
申入候へば勘兵衞
以
(
もつて
)
の外に
憤
(
いか
)
り却て私し共に店立申付候程の事にて何故か勘太郎を
贔屓
(
ひいき
)
仕つり候と申せしかば
茲
(
こゝ
)
に於て大岡殿大聲に其方家主をも
勤
(
つとめ
)
ながら
右體
(
みぎてい
)
の者は訴へ出べきに
僞
(
いつは
)
りを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
いかにぼろ服を着ておればとて、金持ちの奴等がおれを殺そうと脅かすなんて、あんまり馬鹿にしていやがる——そう考えると、一種の狂暴な
憤
(
いか
)
りが全身を走った。
乞食
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
それを今、外から聞いて来た主税が、
憤
(
いか
)
って父にその
鬱念
(
うつねん
)
を吐こうとすると
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女はこの激しい
憤
(
いか
)
りの前にどぎまぎして、云い訳もしどろもどろだった。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
と、武蔵は
憤
(
いか
)
るが如く
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
アルトヴェル氏は
堪
(
た
)
えがたい
憤
(
いか
)
りを夫人の方へ向けた。
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
憤
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“憤”を含む語句
憤々
憤怒
憤然
御憤
憤懣
鬱憤
憤激
欝憤
憤怨
義憤
憤恨
憤恚
発憤
憂憤
憤気
憤慨
悲憤
余憤
悲憤慷慨
大憤慨
...