トップ
>
愛嬌
>
あいきょう
ふりがな文庫
“
愛嬌
(
あいきょう
)” の例文
女はさっそく隣近所に
蕎麦
(
そば
)
を配るし、なにしろ美人で
愛嬌
(
あいきょう
)
がいいので、源右衛門も奇異の感よりはむしろ最初から好意をよせていた。
早耳三次捕物聞書:03 浮世芝居女看板
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
西宮は三十二三歳で、むッくりと肉づいた
愛嬌
(
あいきょう
)
のある丸顔。
結城紬
(
ゆうきつむぎ
)
の小袖に同じ羽織という
打扮
(
いでたち
)
で、どことなく商人らしくも見える。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
丸ぽちゃの可愛らしい娘ですが、笑っても、物を言っても、無智な
愛嬌
(
あいきょう
)
がこぼれそうで、これも付き合いきれないところがあります。
銭形平次捕物控:110 十万両の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これでこそ貫目のある好男子になられたというものであると女たちがながめていて、
指貫
(
さしぬき
)
の
裾
(
すそ
)
からも
愛嬌
(
あいきょう
)
はこぼれ出るように思った。
源氏物語:18 松風
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
が、いつもなら、
人
(
ひと
)
にいわれるまでもなく、まずこっちから
愛嬌
(
あいきょう
)
を
見
(
み
)
せるにきまっていたおせんが、きょうは
何
(
な
)
んとしたのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
しかしそれにしても刃物は
剣呑
(
けんのん
)
だから
仲見世
(
なかみせ
)
へ行っておもちゃの空気銃を買って来て
背負
(
しょ
)
ってあるくがよかろう。
愛嬌
(
あいきょう
)
があっていい。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
新しい妻を
讃美
(
さんび
)
しながら、日本中で、一番得意な人間として、後から後からと続いて来る客に、
平素
(
いつも
)
に似ない
愛嬌
(
あいきょう
)
を振り
蒔
(
ま
)
いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
妹のなかは姉とはまったく反対で、姿かたちも美しいし
愛嬌
(
あいきょう
)
もあり、頭がよくてすばしこくって、小さいじぶんからにんき者であった。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
愛嬌
(
あいきょう
)
もののうぐいすは、ほかの
鳥
(
とり
)
とちがって、
美
(
うつく
)
しいばかりでなく、
心
(
こころ
)
もやさしく、
私
(
わたし
)
には、しんせつなのです。」と、
答
(
こた
)
えました。
風と木 からすときつね
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
シリアの
上
(
かみ
)
さんはサゲー
小母
(
おば
)
さんよりも
愛嬌
(
あいきょう
)
があるだろうが、しかしヴィルギリウスがローマの居酒屋に入り浸ったとするならば
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
パチリとはしないが物思に沈んでるという気味があるこの眼に
愛嬌
(
あいきょう
)
を含めて
凝然
(
じっ
)
と
睇視
(
みつめ
)
られるなら大概の鉄腸漢も軟化しますなア。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
ところが、せっかく、死肉が笑い出しても、こちらの怪物は、それに調子を合わせるだけの
愛嬌
(
あいきょう
)
を持ち合わせておりませんでした。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ある小鳥のようなわざとらしい落ち着きのない態度と、
愛嬌
(
あいきょう
)
を
装
(
よそお
)
ってはいるが
淑
(
しと
)
やかさと親愛さとに富んだ話し方をそなえていた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれどもごく
愛嬌
(
あいきょう
)
が少なくちっとも愛くるしいという顔を見ることが出来ない。誠にツーンとして情ないという有様が見えて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
彼
(
かれ
)
はかくも
神経質
(
しんけいしつ
)
で、その
議論
(
ぎろん
)
は
過激
(
かげき
)
であったが、
町
(
まち
)
の
人々
(
ひとびと
)
はそれにも
拘
(
かかわ
)
らず
彼
(
かれ
)
を
愛
(
あい
)
して、ワアニア、と
愛嬌
(
あいきょう
)
を
以
(
もっ
)
て
呼
(
よ
)
んでいた。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
彼女は三人のうちで一番年が若く、十六か七くらいに思えた。顔も圓顔の、無表情な中にも自然と
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
面立
(
おもだ
)
ちをしていた。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
誰にも
馴
(
な
)
れやすくて
愛嬌
(
あいきょう
)
の好い葉子ではあったが、それだけにまた異性に対して用心深いことは、庸三もかねがね分かっていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
余はこの時つくづく露月を変な男だと思った。シンネリムッツリで容易に口を開かない。そうして時々笑う時には
愛嬌
(
あいきょう
)
がある。その時余は
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
かの女は
咄嗟
(
とっさ
)
の間に、おならの
嫌疑
(
けんぎ
)
を甲野氏にかけてしまった。そしてその
為
(
た
)
めに突き上げて来た笑いが、甲野氏への
法外
(
ほうがい
)
な
愛嬌
(
あいきょう
)
になった。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ルイザ・イヴァーノヴナは、気ぜわしない
愛嬌
(
あいきょう
)
をふりまき、四方八方へ小腰をかがめながら、戸口まであとずさりして行った。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
いずれにしても
愛嬌
(
あいきょう
)
があって、そうして何らの害毒を流す恐れのないのみならず、結果においては意外に好果をも結び得る種類の事柄である。
千人針
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
譚は玉蘭の来たのを見ると、又僕をそっちのけに彼女に
愛嬌
(
あいきょう
)
をふりまき出した。彼女は外光に眺めるよりも幾分かは美しいのに違いなかった。
湖南の扇
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
愛嬌
(
あいきょう
)
の
滴
(
したた
)
るような口もと、小鹿が母を慕うような優しい瞳は少くとも万人の眼を
惹
(
ひ
)
いて随分評判の高かっただけに世間の
嫉妬
(
ねたみ
)
もまた恐ろしい。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
口はその下にかくれているのか、よくは見えない。目の横に、顔からとびだしたしゃもじ形の丸い耳がついていた。この耳も、
愛嬌
(
あいきょう
)
があった。
怪星ガン
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やっと別れた帰り路に、「〆八は
愛嬌
(
あいきょう
)
があって、評判がいいのだよ」とお母様はおっしゃいましたが、私は何だか
嫌
(
いや
)
でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
鎌倉に呼んでもらいたいばかりに、春の終りごろから、いくども
愛嬌
(
あいきょう
)
のある手紙を書いたが、今年はお客さまですから、とお断りをいただいた。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
都会の女、あか抜けて
愛嬌
(
あいきょう
)
のいい女、そんなのを期待して来たのならば、彼にもお気の毒だし、女房もみじめだと思った。
親友交歓
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
鋭いうちにも一種の
愛嬌
(
あいきょう
)
を含んでいるので、かれが
葱売
(
ねぎう
)
りの美しい娘などになれば、その眼がいかにも可愛らしく見えた。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「トシ坊は
愛嬌
(
あいきょう
)
ものだね。いくつ? そうお、三つ。トシ坊はきょうからおじちゃんと、病院でねんねするんだよ。いい子だから、泣かないね。」
夕張の宿
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
それも旅の衆の
愛嬌
(
あいきょう
)
じゃ言うて、
豪
(
えら
)
い評判の
好
(
い
)
い旅籠屋ですがな、……お前様、この土地はまだ何も知りなさらんかい。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
もぎとるようにしてお雪をつれて行くと、
無理矢理
(
むりやり
)
有朋のそばへ坐らせて、お女将は、ここを
先途
(
せんど
)
と
愛嬌
(
あいきょう
)
をふりまいた。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「
矢
(
ヤア
)
さん。たまにゃア仕方がないことよ。」と
愛嬌
(
あいきょう
)
を作って君江は
膝頭
(
ひざがしら
)
の触れ合うほどに椅子を引寄せて男の
傍
(
そば
)
に坐り
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして私が持ってゆくと、檻のふちへ身体をすり付けて私に
愛嬌
(
あいきょう
)
を示す、もう一度私の踊りが見たいというのだろう。
令嬢エミーラの日記
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
今にも
笑
(
え
)
まんずる
気
(
け
)
はいの断えず口もとにさまよえるとは、いうべからざる
愛嬌
(
あいきょう
)
と
滑稽
(
こっけい
)
の
嗜味
(
しみ
)
をば著しく描き
出
(
いだ
)
しぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「だけど、おまえ、久子だって六年生ぐらいまでは口数のすくない、
愛嬌
(
あいきょう
)
のない子だったよ。それがまあ、このせつはどうして、口まめらしいもの」
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
室の中には明るい
洋燈
(
ランプ
)
の光があった。杉本は童顔に
愛嬌
(
あいきょう
)
をたたえていた。お高はその時黙って杉本の
盃
(
さかずき
)
へ酌をした。杉本はまたそれを黙って飲んだ。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかし足を止めるとすぐに、孫兵衛の鋭い注視がすわったので、そのうろたえた目をお品にそらし、
愛嬌
(
あいきょう
)
よく
笑
(
え
)
みあって、何気ないさまに行き過ぎる。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その中でも重立った
頭
(
かしら
)
は年の頃五十あまり、万事に老練な物の言振りをする男で、肥った頬に
愛嬌
(
あいきょう
)
を見せながら、肉屋の亭主に新年の挨拶などをした。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私の眼には文壇では里見さんを大柄にして、ドッシリと落ちつかせ、ソツなく
愛嬌
(
あいきょう
)
をもたせた
面影
(
おもかげ
)
が残っている。
旧聞日本橋:16 最初の外国保険詐欺
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
前髪黒く顔白く、眼に張りあって
愛嬌
(
あいきょう
)
あふれ、唇
紅
(
あか
)
く鼻高く、堂上方の
公達
(
きんだち
)
か大管領の若者かと思われるようなその気高さ、
莞爾
(
かんじ
)
と笑って座についたが
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
上さんの方がかえって
愛嬌
(
あいきょう
)
が少いので、上さんはいつも豆の
熬
(
い
)
り役で、亭主の方が紙袋に盛り役を勤めて居る。
熊手と提灯
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
普通
(
なみ
)
の犬ころなどと
異
(
ちが
)
って品の
好
(
よ
)
いものでなかなか賑やかで
愛嬌
(
あいきょう
)
がある。そこで第一に一つ彫り初めました。
幕末維新懐古談:53 葉茶屋の狆のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「私のお父つぁんは
旦
(
だん
)
さんみたいにええ男前や」と
外
(
そ
)
らしたりして
悪趣味
(
あくしゅみ
)
極まったが、それが
愛嬌
(
あいきょう
)
になった。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
光明皇后の十二ひとえも時代錯誤でおかしいが、この蒸し風呂の設備と相面して銭湯風の浴室が画いてあるのは、
愛嬌
(
あいきょう
)
を通り越してむしろ皮肉に感ぜられた。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
色の白い
愛嬌
(
あいきょう
)
のある
円顔
(
まるがお
)
、髪を
太輪
(
ふとわ
)
の
銀杏
(
いちょう
)
返しに結って、伊勢崎の襟のかかった着物に、
黒繻子
(
くろじゅす
)
と変り八反の昼夜帯、
米琉
(
よねりゅう
)
の羽織を少し
抜
(
ぬ
)
き
衣紋
(
えもん
)
に
被
(
はお
)
っている。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
アワタケは割に大きな、間のぬけた茸で、村の人はアンパンといって馬鹿にしている。いかにもアンパンという感じの、うまくもない茸であるが
愛嬌
(
あいきょう
)
があった。
山の秋
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
しかし、その笑いはにこにこしていて、狂人のように笑っても
愛嬌
(
あいきょう
)
をそこなわなかった。それで人が皆楽しく思って、隣の女や若いお嫁さん達が争って迎えた。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
元来緑雨の皮肉には
憎気
(
にくげ
)
がなくて
愛嬌
(
あいきょう
)
があった。緑雨に冷笑されて緑雨を憎む気には決してなれなかった。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
極
(
ご
)
く冷淡に事務に従事する人でも、親切に
愛嬌
(
あいきょう
)
または好意を持つと持たぬので
自
(
おのずか
)
らその務めの
捗
(
はかど
)
りも違う。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
無造作
(
むぞうさ
)
な人物で、自分で自分の自動車を操縦して、よく玉村商店へ遊びに来たが、話し好きで、どことなく
愛嬌
(
あいきょう
)
があったので、主人の玉村氏ともじき懇意を結び
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“愛嬌”の意味
《名詞》
愛 嬌 (あいきょう 別表記:愛敬)
表情などにかわいげがあること。
人のかわいらしさ。
人をひきこむために意図的に発するしぐさやことば。
(接頭辞「御」を付けて)商店や座などで、興を添えるもの。サービス。
(接頭辞「御」を付けて)寛大に許せるような失敗。見る人の緊張がほぐれかわいらしく感じる欠点。
(出典:Wiktionary)
愛
常用漢字
小4
部首:⼼
13画
嬌
漢検1級
部首:⼥
15画
“愛嬌”で始まる語句
愛嬌者
愛嬌造
愛嬌喚
愛嬌噺
愛嬌毛
愛嬌気
愛嬌笑
愛嬌談
愛嬌顔
愛嬌黒子