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後毛
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おくれげ
ふりがな文庫
“
後毛
(
おくれげ
)” の例文
夫人この時は、
後毛
(
おくれげ
)
のはらはらとかかった、江戸紫の襟に映る、雪のような
項
(
うなじ
)
を
此方
(
こなた
)
に、
背向
(
うしろむき
)
に
火桶
(
ひおけ
)
に
凭掛
(
よりかか
)
っていたが、
軽
(
かろ
)
く振向き
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
何うやらお嬢さんの
後毛
(
おくれげ
)
が、何うやら私の頬の辺に、もつれかかりはしないだろうか? こんなような感じがしたからである。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
さし伸ばされた雪のような
項
(
うなじ
)
にかかる
後毛
(
おくれげ
)
、唇を喰いしばって外向けた横顔の美しさ……いまの湛左衛門にとってこれ以上の
肴
(
さかな
)
は無かった。
武道宵節句
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ちょうどこの白い触肢のある
茸
(
きのこ
)
みたいに、ばらっと短い
後毛
(
おくれげ
)
が下ってさえ、もう顔の半分も見えなくなってしまうのですから。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二人の小使にぐったりとだかれてエレベータアの方へ行くはる子のわきについて歩きながら、しづ子が
後毛
(
おくれげ
)
を頬にこぼして
舗道
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
▼ もっと見る
枕のとがなる
鬢
(
びん
)
の
後毛
(
おくれげ
)
を掻き上げた
後
(
のち
)
は、
捻
(
ねじ
)
るように
前身
(
ぜんしん
)
をそらして、櫛の背を歯に
銜
(
くわ
)
え、両手を高く
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
薄暗いランプの光に照されて
透通
(
すきとほ
)
るやうに白い
襟足
(
えりあし
)
に乱れかゝつて居る
後毛
(
おくれげ
)
が何となくさびしげで、其根のがつくりした
銀杏返
(
いちやうがへ
)
しが時々
慄
(
ふる
)
へて居るのは泣いてゐるのでもあるのか
夜汽車
(新字旧仮名)
/
尾崎放哉
(著)
物を言う時には絶えず首を
揺
(
うご
)
かす、其度にリボンが
飄々
(
ひらひら
)
と一緒に
揺
(
うご
)
く。時々は手真似もする。今朝
結
(
い
)
った束髪がもう大分乱れて、
後毛
(
おくれげ
)
が頬を
撫
(
な
)
でるのを
蒼蠅
(
うるさ
)
そうに
掻上
(
かきあ
)
げる手附も
好
(
い
)
い。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お通は
瞬
(
またたき
)
もせず
瞻
(
みまも
)
りながら、手も動かさず
態
(
なり
)
も崩さず、石に化したるもののごとく、一筋二筋頬にかかれる、
後毛
(
おくれげ
)
だにも動かさざりし。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼女は、額の
後毛
(
おくれげ
)
を無造作にはね上げて、幹に突っ張った、片手の肩口から覗き込むようにして、なおも話しかけるのを止めようとはしなかった。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
夫の帰った物音に引窓からさす
夕闇
(
ゆうやみ
)
の光に色のない顔を
此方
(
こなた
)
に振向け、
油気
(
あぶらけ
)
失
(
う
)
せた
庇髪
(
ひさしがみ
)
の
後毛
(
おくれげ
)
をぼうぼうさせ、寒くもないのに
水鼻
(
みずばな
)
を
啜
(
すす
)
って、ぼんやりした声で、お帰んなさい——。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
肩が細かく波を打つ、耳髱へかかった
後毛
(
おくれげ
)
が、次第に顫えを増して来る。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
グラフィーラは
後毛
(
おくれげ
)
をたらしたまま、歪んだ笑顔で
「インガ」:ソヴェト文学に現れた婦人の生活
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
背中を
擦
(
さす
)
ろうとした手が
辷
(
すべ
)
って、ひやひやと
後毛
(
おくれげ
)
を
潜
(
くぐ
)
って、柔かな襟脚に
障
(
さわ
)
ったが、やがて水晶のように冷たいのを感じた。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眼の縁が
暈
(
ぽ
)
っと紅く染って来て、小びんの
後毛
(
おくれげ
)
をいつも気にする人なんだが、それが知らず知らずのうちに一本一本殖えて行く——と云うほど、あの人だっても夢中になってしまうんだよ。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
私は以前よくこの長屋の前を通る時、寒い冬の夕方なぞ、薄暗い小窓の破れ障子に、
中
(
うち
)
なるランプの
灯
(
ひ
)
が
後毛
(
おくれげ
)
を乱した女の帯なぞ締め直している薄い影をば映し出しているのを見た事があります。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
上らぬ枕を取交えた、
括蒲団
(
くくりぶとん
)
に
一
(
いち
)
が沈んで、
後毛
(
おくれげ
)
の乱れさえ、
一入
(
ひとしお
)
の
可傷
(
いたまし
)
さに、お蔦は薄化粧さえしているのである。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
白井は女の額に垂れかゝる
後毛
(
おくれげ
)
を弄びながら
来訪者
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
指環を
三
(
み
)
つ
四
(
よ
)
つ
嵌
(
は
)
めた白い指をツト挙げて、
鬢
(
びん
)
の
後毛
(
おくれげ
)
を掻いた
次手
(
ついで
)
に、
白金
(
プラチナ
)
の
高彫
(
たかぼり
)
の、翼に
金剛石
(
ダイヤ
)
を
鏤
(
ちりば
)
め、目には
血膸玉
(
スルウドストン
)
、
嘴
(
くちばし
)
と爪に
緑宝玉
(
エメラルド
)
の
象嵌
(
ぞうがん
)
した
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
雪の襟脚、黒髪と水際立って、銀の
平打
(
ひらうち
)
の
簪
(
かんざし
)
に
透彫
(
すかしぼり
)
の紋所、
撫子
(
なでしこ
)
の露も垂れそう。
後毛
(
おくれげ
)
もない結立ての島田
髷
(
まげ
)
、背高く見ゆる
衣紋
(
えもん
)
つき、備わった品の
可
(
よ
)
さ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一刷
(
ひとはけ
)
黒き愛吉の
後姿
(
うしろつき
)
、
朦朧
(
もうろう
)
として幻めくお夏の
背
(
そびら
)
に
蔽
(
おお
)
われかかって、玉を
伸
(
の
)
べたる襟脚の、手で掻い上げた
後毛
(
おくれげ
)
さえ、一筋一筋見ゆるまで、ものの余りに白やかなるも
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長範をば討って棄て、
血刀
(
ちがたな
)
提げて
吻
(
ほ
)
と
呼吸
(
いき
)
つく
状
(
さま
)
する、額には振分たる
後毛
(
おくれげ
)
の
先端
(
さき
)
少し
懸
(
かか
)
れり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あれ、
不可
(
いけ
)
ませんよう。」「可いてことさ。」せりあううちに
後毛
(
おくれげ
)
はらはら、さっと心も
乱髪
(
みだれがみ
)
、身に振かかる
禍
(
まがつび
)
のありともあわれ白露や、無分別なるものすなわちこれなり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
呟
(
つぶや
)
きつつ、提灯差附け
凝視
(
みつ
)
むれば、
身装
(
みなり
)
こそ
窶々
(
やつやつ
)
しけれ、
頸筋
(
えりすじ
)
の真白きに、
後毛
(
おくれげ
)
の
匂
(
におい
)
こぼるる風情、これはと吉造首を
捻
(
ひね
)
って、「しっかりせい。」襟よりずっと手を差入れ
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鬢
(
びん
)
の
後毛
(
おくれげ
)
を掻いたついでに、
白金
(
プラチナ
)
の
高彫
(
たかぼり
)
の、翼に
金剛石
(
ダイヤ
)
を
鏤
(
ちりば
)
め、目には
血膸玉
(
スルウドストン
)
、
嘴
(
くちばし
)
と爪に
緑宝玉
(
エメラルド
)
の
象嵌
(
ぞうがん
)
した、白く輝く
鸚鵡
(
おうむ
)
の
釵
(
かんざし
)
——
何某
(
なにがし
)
の伯爵が心を籠めた
贈
(
おくり
)
ものとて、人は知って
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
島野は
睨
(
にら
)
み見て、
洋杖
(
ステッキ
)
と共に
真直
(
まっすぐ
)
に動かず
突立
(
つった
)
つ。お雪は小洋燈に灯を移して、摺附木を火鉢の中へ棄てた手で
鬢
(
びん
)
の
後毛
(
おくれげ
)
を
掻上
(
かいあ
)
げざま、向直ると、はや
上框
(
あがりがまち
)
、そのまま
忙
(
せわ
)
しく出迎えた。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母も
後毛
(
おくれげ
)
を
掻上
(
かきあ
)
げて、そして
手水
(
ちょうず
)
を使って、
乳母
(
うば
)
が
背後
(
うしろ
)
から
羽織
(
はお
)
らせた紋着に手を通して、胸へ水色の下じめを巻いたんだが、自分で、帯を取って
〆
(
しめ
)
ようとすると、それなり力が抜けて
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、こう、水の底へ澄切ったという目を開いて、じっと膝を枕に、
腕
(
かいな
)
に
後毛
(
おくれげ
)
を掛けたまま私を見詰める。眉が浮くように少し
仰向
(
あおむ
)
いた形で、……抜けかかった
櫛
(
くし
)
も落さず、動きもしません。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と袖で胸へしっかと抱いて、ぶるぶると肩を震わした、
後毛
(
おくれげ
)
がはらりとなる。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と気を揉む頬の
後毛
(
おくれげ
)
は、寝みだれてなお美しい、柳の糸より優しいのである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夫人はこれを聞くうちに、
差俯向
(
さしうつむ
)
いて、両方引合せた
袖口
(
そでくち
)
の、
襦袢
(
じゅばん
)
の花に
見惚
(
みと
)
れるがごとく、打傾いて
伏目
(
ふしめ
)
でいた。しばらくして、さも身に染みたように、肩を震わすと、
後毛
(
おくれげ
)
がまたはらはら。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まあお聞きそれから
縞
(
しま
)
のお
召縮緬
(
めしちりめん
)
、裏に紫縮緬の附いた
寝衣
(
ねまき
)
だったそうだ、そいつを着て、紅梅の
扱帯
(
しごき
)
をしめて、蒲団の上で片膝を立てると、お前、
後毛
(
おくれげ
)
を
掻上
(
かきあ
)
げて、懐紙で
白粉
(
おしろい
)
をあっちこっち
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
横に飾った
箪笥
(
たんす
)
の前なる、鏡台の鏡の
裏
(
うち
)
へ、その玉の
頸
(
うなじ
)
に、
後毛
(
おくれげ
)
のはらはらとあるのが
通
(
かよ
)
って、
新
(
あらた
)
に薄化粧した美しさが背中まで透通る。白粉の香は座蒲団にも
籠
(
こも
)
ったか、主税が坐ると
馥郁
(
ふくいく
)
たり。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
横に
掠
(
かす
)
めて
後毛
(
おくれげ
)
をさらりと掛けつつ、ものうげに払いもせず……
切
(
きれ
)
の長い、
睫
(
まつげ
)
の濃いのを
伏目
(
ふしめ
)
になって、上気して乾くらしい唇に、吹矢の筒を、ちょいと含んで、片手で持添えた雪のような
肱
(
ひじ
)
を
搦
(
から
)
む
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と横を向いた、片頬笑みの
後毛
(
おくれげ
)
を、男に見せて、
婀娜
(
あだ
)
に払い
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一人の婦人が、はらはらと
後毛
(
おくれげ
)
のかかった顔で
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
後
常用漢字
小2
部首:⼻
9画
毛
常用漢字
小2
部首:⽑
4画
“後”で始まる語句
後
後生
後退
後方
後悔
後姿
後家
後手
後日
後世