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彫
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きざ
ふりがな文庫
“
彫
(
きざ
)” の例文
雲水空善は、早くも扉の仕掛を見破ったものか、三猿を
彫
(
きざ
)
んだ大岩の前に積み重ねた、ひと抱えほどの岩を幾つも幾つも取除きました。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
たまたま伊勢詣のしるしにとて送られし貝の一ひらを見れば大わだつみのよろづの波を
彫
(
きざ
)
めるとぞ言ひし言の葉こそ思ひいでらるれ
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
馬琴の、底光のする眼を見詰めていた京伝は、その木像のような面に
彫
(
きざ
)
まれている決意の色を、感じないわけには行かなかった。
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
けれども
由紀
(
ゆき
)
にはそれがみな胸にしみとおるほど切実に聞え、とつぐという覚悟をあらためて心に
彫
(
きざ
)
みつけられたのであった。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこに切り
彫
(
きざ
)
まれている脳を両手で下から持ちあげて、頭の中に押しこんだ。その上を、例のお碗のような頭蓋骨で蓋をした。
人体解剖を看るの記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
一男は、縦横に組み上げられた鉄材の間から、遠く澄んだ空へ眼を
放
(
はな
)
った。
上総
(
かずさ
)
房州
(
ぼうしゅう
)
の
山波
(
やまなみ
)
がくっきりと、
彫
(
きざ
)
んだような
輪廓
(
りんかく
)
を見せている。
秋空晴れて
(新字新仮名)
/
吉田甲子太郎
(著)
夏目漱石氏の「幻の
盾
(
たて
)
」の中にもゴーゴンの頭に似た夜叉の顔の盾の表に
彫
(
きざ
)
まれてある有様が
艶麗
(
えんれい
)
の筆を
以
(
もつ
)
て写されてある。
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
帯に記したる所は、后が王の寵愛を受けし場所は王宮の花園にして、其処には
希臘
(
グレシア
)
の
男女
(
なんによ
)
の神体を
彫
(
きざ
)
める美しき大理石の立像
数多
(
あまた
)
有りし由に候。
アンドレアス・タアマイエルが遺書
(新字旧仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
柄
(
にぎり
)
には緑色の
玉
(
ぎよく
)
を
獅子頭
(
ししがしら
)
に
彫
(
きざ
)
みて、
象牙
(
ぞうげ
)
の如く
瑩潤
(
つややか
)
に白き
杖
(
つゑ
)
を携へたるが、その
尾
(
さき
)
をもて低き梢の花を打落し打落し
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
丈六坐像を木で
彫
(
きざ
)
むのは困難であり、また乾漆は当時の流行であったために、本尊は乾漆ときまった。そうして乾漆像の工手は我が国にも少なくなかった。
古寺巡礼
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
ことに、「わが面の前に我のほか何物をも神とすべからず」とか、「自己のために何の偶像をも
彫
(
きざ
)
むべからず」
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
結婚は
無辜
(
むこ
)
の頭上に
荊莿
(
けいきょく
)
の冠を置き、血文字にて私生児てふ恐るべき言葉を
彫
(
きざ
)
まないであらうか? 若し結婚がその宣言するあらゆる諸徳を含んでゐるなら
結婚と恋愛
(新字旧仮名)
/
エマ・ゴールドマン
(著)
五百羅漢製作においても多大の
精進
(
しょうじん
)
を積まれ一丈六尺の
釈迦牟尼仏
(
しゃかむにぶつ
)
の坐像、八尺の
文殊
(
もんじゅ
)
、
普賢
(
ふげん
)
の坐像、それから
脇士
(
わきし
)
の
阿難迦葉
(
あなんかしよう
)
の八尺の立像をも
彫
(
きざ
)
まれました。
幕末維新懐古談:34 私の守り本尊のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
後に『草枕』のモニューメントを築き上げた巨匠の
鑿
(
のみ
)
のすさびに
彫
(
きざ
)
んだ小品をこの集に見る事が出来る。
夏目先生の俳句と漢詩
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
建築上の民族的特質というものについての勘ちがいがある。Y氏の愛する木食上人の木像は、ああいう家に住む土豪にあって
彫
(
きざ
)
まれたものではなかったのですからね。
獄中への手紙:03 一九三六年(昭和十一年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
宣徳
(
せんとく
)
の
香炉
(
こうろ
)
に
紫檀
(
したん
)
の蓋があって、紫檀の蓋の真中には猿を
彫
(
きざ
)
んだ
青玉
(
せいぎょく
)
のつまみ手がついている。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
水と砂から生れた娘として、真弓は陸の土と埃とを
蔑
(
さげす
)
んだ。自尊心のつよい少女として、真弓はあらゆる近代的生活様式に依つて
彫
(
きざ
)
まれ彩られた仮面の青年たちを冷視した。
水と砂
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
何も偽ってまでよく書こうなどとは決して思わないが、余りに非常識な点だの人間的な短所などは、わが親の像として、何だか
彫
(
きざ
)
み出し難い気もちが先立ってくるのである。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とても長く
彫
(
きざ
)
みつけてあった朝散太夫を子供心にすっかり覚えこんでしまったのだった。
旧聞日本橋:11 朝散太夫の末裔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
全身が
刺青
(
いれずみ
)
のように青光りする
波斯
(
ペルシャ
)
模様の派手な寝間着を着た、石竹色のしなやかな素足に、これも贅沢な刺繍のスリッパを穿いていたが、その顔は大理石を
彫
(
きざ
)
んだように真白く
硬
(
こわ
)
ばって
継子
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
眉間に深い立皺を
彫
(
きざ
)
んで、凝つと眼を閉ぢてゐる者、眼ばたきもしないで明るい電灯を瞶めてゐる者、机にどつかりと突つ伏して悩んでゐる者、頭をかかへて唇を噛んでゐる者……登志子は
海路
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
「君らの来るのを待っている中にあの山に昇って見ようと思って、頂上に行くと石の恰好のいい奴があったものだから、ナイフで紀念碑を
彫
(
きざ
)
んで、それから後ろに行くと谷から落ちたんだ。」
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
思うままの地金を使って、実物の
大
(
おおき
)
さ、姫瓜、烏瓜ぐらいなのから、小さなのは
蚕豆
(
そらまめ
)
なるまで、品には、床の置もの、
香炉
(
こうろ
)
、
香合
(
こうごう
)
、釣香炉、
手奩
(
てばこ
)
の
類
(
たぐい
)
。黄金の
無垢
(
むく
)
で、
簪
(
かんざし
)
の玉を
彫
(
きざ
)
んだのもある。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
単に
野放図
(
のほうず
)
や遊戯的態度からしては、『新古今集』を性格づけるような声調は
彫
(
きざ
)
み出されては来ないのである。そこには意志の緊張が
要
(
い
)
る。彫り出すものの像をたえず虚空に見つめ得る眼が要る。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
夫人の冷たさは、
愈々
(
いよいよ
)
加わった。その美しい面は、
象牙
(
ぞうげ
)
で
彫
(
きざ
)
んだ仮面か何かのように、冷たく光っていた。『何を!』と
云
(
い
)
ったような
利
(
き
)
かぬ気の表情が、その小さい真赤な唇のあたりに動いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
徳川三百年の風流の
生粋
(
きっすい
)
が、毛筋で突いたやうな柳と
白鷺
(
しらさぎ
)
の
池水
(
ちすい
)
に
彫
(
きざ
)
み込まれた後藤派の
目貫
(
めぬ
)
きのやうなものを並べて、自分の店から持つて来たいろ/\の専門の道具や薬品を使つて手入れしながら
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
三月三日 はん女、亡き父母の比翼塚に
彫
(
きざ
)
まんとて句を乞へるに。
七百五十句
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
鑿
(
のみ
)
で
能面
(
おもて
)
を
彫
(
きざ
)
んでいた。刃先がキラキラと火に光った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彫
(
きざ
)
みたい!といふ 衝動にもだへたであらう
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
水晶の星
彫
(
きざ
)
む白壇の
桁
(
けた
)
第二邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
鑿
(
のみ
)
とりて像を
彫
(
きざ
)
む人
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「地蔵様の肌が暖かい! そんな馬鹿なことがあるものか、石で
彫
(
きざ
)
んだ鼻っ欠けの地蔵だ。大方、陽が当って暖まるんだろう」
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何かを! 見よ、彼の眉がきりきりと
痙攣
(
ひきつ
)
った。そして固く引結んだ唇に
活々
(
いきいき
)
とした
微笑
(
ほほえみ
)
が
彫
(
きざ
)
まれて来た。
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これ、
佐藤次信
(
さとうつぎのぶ
)
忠信
(
たゞのぶ
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
妻
(
つま
)
、
二人
(
ふたり
)
都
(
みやこ
)
にて
討死
(
うちじに
)
せしのち、
其
(
そ
)
の
母
(
はゝ
)
の
泣悲
(
なきかな
)
しむがいとしさに、
我
(
わ
)
が
夫
(
をつと
)
の
姿
(
すがた
)
をまなび、
老
(
お
)
ひたる
人
(
ひと
)
を
慰
(
なぐさ
)
めたる、
優
(
やさ
)
しき
心
(
こゝろ
)
をあはれがりて
時
(
とき
)
の
人
(
ひと
)
木像
(
もくざう
)
に
彫
(
きざ
)
みしものなりといふ。
甲冑堂
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
古伽藍
(
ふるがらん
)
と
剥
(
は
)
げた額、
化銀杏
(
ばけいちょう
)
と動かぬ松、
錯落
(
さくらく
)
と
列
(
なら
)
ぶ石塔——死したる人の名を
彫
(
きざ
)
む死したる石塔と、花のような佳人とが融和して一団の気と流れて円熟
無礙
(
むげ
)
の一種の感動を余の神経に伝えたのである。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ノ御歌ヲ
彫
(
きざ
)
ミタル記念碑アリ。
或るハイカーの記
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
彫
(
きざ
)
まなければならなかった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彫
(
きざ
)
まれたる
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
色の
褪
(
あ
)
せた唇は、何やらわななきますが、それっきり言葉にもならず、美しい眉がひそんで、
彫
(
きざ
)
んだような頬を、痛ましい
痙攣
(
けいれん
)
が走ります。
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
これ、佐藤
継信
(
つぎのぶ
)
忠信
(
ただのぶ
)
兄弟の妻、二人都にて討死せしのち、その母の泣悲しむがいとしさに、我が夫の姿をまなび、老いたる人を慰めたる、優しき心をあわれがりて時の人木像に
彫
(
きざ
)
みしものなりという。
一景話題
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
まるでその物音をおのれの魂に
彫
(
きざ
)
みつけでもするかのように。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女は懸命に
面
(
おもて
)
を
彫
(
きざ
)
んだ。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「地藏樣の肌が暖かい! そんな馬鹿なことがあるものか、石で
彫
(
きざ
)
んだ鼻つ缺けの地藏だ。大方陽が當つて暖まるんだらう」
銭形平次捕物控:009 人肌地藏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
山浦丈太郎が立って、三猿の左の方、何んにも
彫
(
きざ
)
んでないところを押すと、岩はキシミながら動いて、人間が
漸
(
ようや
)
く通れるほどの口を開けました。
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夥
(
おびたゞ
)
しい出血に顏の色は
蝋
(
らふ
)
の如く白くなつて居りますが、眼鼻立ちの端正さは名人の
彫
(
きざ
)
んだ人形のやうで、
洞
(
うつ
)
ろに開いた眼には、恐怖の影さへもなく
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
妹のお徳は
仇
(
あだ
)
っぽい作為的な品で、ちょいと見は綺麗にも
艶
(
あで
)
やかにも映りますが、こう並べると、玉に
彫
(
きざ
)
んだ女神と、泥焼のお狐様ほどの違いがあります。
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
妹のお徳は仇つぽい作爲的なしなで、ちよいと見は綺麗にも艶やかにも映りますが、斯う並べると、玉に
彫
(
きざ
)
んだ女神と、燒棒のお狐樣ほどの違ひがあります。
銭形平次捕物控:045 御落胤殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
黒髪は肩から背へと乱れて居りますが、大理石を
彫
(
きざ
)
んで血を通わせたような、胸から腰への線の美しさ。
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
後に殘つた杵太郎は、精々十六、七、これは小柄で骨細で、良質の
檜
(
ひのき
)
に、名工が腕を揮つて
彫
(
きざ
)
み、急所々々に桃色の
隈
(
くま
)
を
刷
(
は
)
いたやうなガツチリした美少年でした。
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
無念の
眦
(
まなじり
)
こそ裂けてをりますが、
彫
(
きざ
)
んだやうな眼鼻立ちが恐怖に
歪
(
ゆが
)
められて、物凄さもまた
一入
(
ひとしほ
)
です。
銭形平次捕物控:129 お吉お雪
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彫
常用漢字
中学
部首:⼺
11画
“彫”を含む語句
彫刻
牙彫
木彫
浮彫
彫刻物
象牙彫
透彫
彫塑
彫刻師
鋳型彫
彫物
彫琢
彫像
高彫
彫付
筋彫
朱彫
彫心鏤骨
欄間彫
彫刻家
...