このみ)” の例文
風俗ふうぞく派手はででない、をんなこのみ濃厚のうこうではない、かみかざりあかいものはすくなく、みなこゝろするともなく、風土ふうどふくしてるのであらう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これわたし竹馬ちくばとも久我くがぼう石橋いしばしとはおちやみづ師範学校しはんがくかう同窓どうそうであつたためわたし紹介せうかいしたのでしたが、の理由は第一わたしこのみおなじうするし
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今こそ帝国意匠会社などいふ仰山ぎょうさんなものも出来たれ、凝つたこのみといへばこの中屋に極はまれり、二番息子の清二郎へ朝倉より雨をいてのむかえ
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
己がこのみにまかせてなほ一の事を加へむ、思ふにわがことばたとひ約束の外にいづとも汝の喜びに變りはあらじ 一三六—一三八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これらの事につき熟思つら/\おもふに、きぬおるにはかひこいとゆゑ阳熱やうねつこのみぬのを織にはあさの糸ゆゑ阴冷いんれいこのむ。さてきぬは寒に用ひてあたゝかならしめ、布はしよに用てひやゝかならしむ。
三条 船数並びに商売銀高ともその限を立つることなし、しかしながら持渡の貨物日本人このみに応ぜず、あるいは代り品等差支さしつかゆる時は、交易を遂げざる儀もこれ有るべき事。
空罎 (新字新仮名) / 服部之総(著)
勿論意味は解りませんが、兎に角お別れを告げるのだと、そういうことだけは解りますので。その『アッ、アッ、アッ』がとても可愛く、奥さんのこのみに合ったんです。
奥さんの家出 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お辰を女房にもってから奈良へでも京へでも連立つれだって行きゃれ、おれも昔は脇差わきざしこのみをして、媼も鏡を懐中してあるいたころ、一世一代の贅沢ぜいたく義仲寺ぎちゅうじをかけて六条様参り一所いっしょにしたが
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一、上野介殿御屋敷へ押込おしこみはたらきの儀、功の浅深せんしんこれあるべからず候。上野介殿しるしあげ候者も、警固けいご一通ひととおりの者も同前たるべく候。しかれ組合くみあわせ働役はたらきやくこのみ申すまじく候。もっとも先後のあらそい致すべからず候。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
何の奧樣一の忠義振かと腹は立どさすがえりかき合せ店に奧に二度三度心ならずもよろこび述て扨孃樣よりと、つゝみほどけば、父親のこのみ戀人の意匠、おもとの七づゝ四分と五分の無疵むきずの珊瑚
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
曇日くもりびなので蝙蝠かほもりすぼめたまゝにしてゐるせいか、やゝ小さい色白いろじろの顏は、ドンヨリした日光ひざしの下に、まるで浮出うきだしたやうに際立きわだってハツキリしてゐる。頭はアツサリした束髪そくはつしろいリボンの淡白たんぱくこのみ
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼れ曰く、「艱難辞せずといえども、安楽もまたおのずかこのみに御坐候」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
もっとも食卓の飾にする初物はつもの珍物ちんぶつはおこのみなさらず
たゝかひごろのこのみ、いざゝらば
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
風俗も派手でない、女のこのみも濃厚ではない、髪のかざりも赤いものは少なく、皆心するともなく、風土の喪に服して居るのであろう。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
番組は「鶴亀つるかめ」、「初時雨はつしぐれ」、「喜撰きせん」で、末にこのみとして勝三郎と仙八とが「狸囃たぬきばやし」を演じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
神主かんぬし宮氏の家に貞和ぢやうわ文明ぶんめいの頃の記録きろく今にそんせり。当主たうしゆ文雅ぶんがこのみ吟詠ぎんえいにもとめり、雅名がめい正樹まさきといふ。同好どうこうを以てまじはりおさむ。幣下へいしたとなふ社家しやけ諸方しよはうにあまたある大社也。
たたかひは日ごろのこのみ、いざさらば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
ぐるりとまはしてゆるく脇にて結ぶもの、これを扱帯しごきといふなり。多くは桃割もゝわれ唐人髷時代たうじんまげじだいに用ふ。島田しまだ丸髷まるまげは大抵帯留のみにて済ますなり、色は人々のこのみに因る。
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
番組は「勧進帳かんじんちょう」、「吉原雀よしわらすずめ」、「英執着獅子はなぶさしゅうじゃくじし」で、すえこのみとして「石橋しゃっきょう」を演じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「いらっしゃい、誰方どなた、」と可愛い目で連合つれあいの顔をちょいと見る、年紀としは二十七だそうだが、小造こづくりで、それで緋の菱田鹿の子の帯揚というこのみであるから、二十はたちそこそこに見える位
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなわち、御寮人様、市へお練出しのお供を、おこのみとあって承ります。……さてまた、名代娘のお美津さんは、御夫婦これに——ええ、すなわち逢阪の辻店は、戸を寄せ掛けた明巣あきすにござります。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いや自然のこのみは妙なものだ、すらりとした姉の方が、細長い信玄袋を提げて、肩幅の広い、背の低い方が、ポコンと四角張って、胴の膨れた鞄を持っている、と、ふとおかしく思うほど、幻は現実に
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)