印度インド)” の例文
しかしながら色は必ずしも白色でなければならぬとは限らない、印度インドの女の皮膚の色には別なやわらかみとなめらかな光沢があって美しい
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
妾の寝台は隅から隅まで印度インド風でり固まっていた。白いのは天井裏のパンカアと、海月くらげ色に光る切子きりこ硝子のシャンデリヤだけだった。
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
言うまでもなく、ヤトラカン・サミ博士は、あうるや学派に属し、印度インド正教を信奉する多美児タミル族、エルカラ閥の誠忠な一人だった。
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
即ち坂を彼方かなたに下り尽せば其処そこにはダージリンという都市があって、夏も甚だ涼しく印度インドの大官連の避暑地となっている所である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
防波堤が無かつたら直ちに印度インド洋の荒海あらうみに面したコロムボは決して今日こんにちの如く多数の大船たいせんを引寄せる良港とは成らなかつたであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
和漢古今の画と文学とを通じて、ないしは繊細の美を誇りとする印度インド波斯ペルシアの芸術の中を求めても、恐らくはこの如き光景はなかった。
今や英夷えいい封豕ほうし長蛇ちょうだ、東洋を侵略し、印度インド先ずその毒を蒙り、清国続いでその辱を受け、余熖よえんいままず、琉球に及び長崎に迫らんとす。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その輕氣球けいきゝゆう飛揚ひやうして、だれか一二めい印度インドのコロンボ其他そのた大陸地方たいりくちほう都邑とゆうたつし、其處そこで、電光艇でんくわうていえうする十二しゆ藥液やくえき買整かひとゝの
見て行く中に、印度インドのコブラ(錦蛇にしきへびあるいは眼鏡蛇めがねへび)の玩具おもちゃがあったが、その構造が、上州の伊香保いかほで売っている蛇の玩具と同じである。
いつも、印度インドを通って支那しなへやってくる爺さんの船は、上海シャンハイで用をすますと、そこから故郷のフランスの方へ帰っていってしまうのです。
海からきた卵 (新字新仮名) / 塚原健二郎(著)
したのじゃなし、それに、おれ達の大目的は、まだ半ばしか遂げられていないじゃないか。印度インドまではまだまだ暇がかかる。その間航海を
先づ印度インドに赴いて其れから埃及エヂプト希臘ギリシヤを巡遊して歸國すると云ふ事である。春子はどうしたのであらう。遂に音信たよりがない………。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
ことに、印度インドあたりから、超自然の力をもった僧侶をひっぱりだしてきて手品の種を明かすなどは、全くまたかという感じしか与えません。
愛読作家についての断片 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
私が訪ねた頃も数十人の研究生の中に東洋人や印度インド人は一人もいなかった。今までに日本人でこの研究所で勉強した人は算える位しかない。
印度インド洋は果てもなく、あけがたの空に弓のような虹がかかる。大きな波に朝日の光がきらめき、信天翁が潮風に舞い飛ぶ。)
南半球五万哩 (新字新仮名) / 井上円了(著)
我々はペン軸を傾けて持ち、釘のようにするどい金属の尖点を使用して、彼等の濃く黒い印度インドインクに比べると水っぽいインクで物を書く。
さもなければお前の鼻が、これ程大きなひるのやうに、伸びたりちぢんだりはしないだらう。象よ。お前は印度インドの名門の生れだ。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
カプユルタンのマハラニがドーヴィル大懸賞の競馬見物に乗って出るため、わざわざ国元印度インドから白象を取寄せたということ。
ドーヴィル物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
印度インド服をきた鳩つかいに手をとられて、ミドリは、そのぶたいのうえにあがりましたから、兄の高一はなんだか、胸さわぎがしてなりません。
電気鳩 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一寸ちょいと、其の高楼たかどの何処どこだと思ひます……印度インドの中のね、蕃蛇剌馬ばんじゃらあまん……船着ふなつきの貿易所、——お前さんが御存じだよ、私よりか
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
椰子の木の町は、そのホテルの高楼と、印度インド塔の急傾斜屋根と、未完成のような前庇ファサアードをもって、くっきりと天空を限り出す。
背には印度インド式の輿こしに唐人服の男が三人、警護の一隊も更紗さらさの唐人服で三、四十人、チャルメラを吹き立てて浅草から上野公園へのそりのそり。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
それによって帰国の旅の方針を定めねば成らなかった。遠く喜望峰きぼうほうを経由して、印度インド洋から東洋の港々を帰って行く長い航海の旅をえらぼうか。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
布哇ハワイが見える。印度インド洋が見える。月光に洗われたベンガル湾が見える。現在眼の前の海なんてものはそれに比べたらラフな素材にしか過ぎない。
(新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
今迄私達が土人街印度インド家屋の油の濃い日本女(ここに住む日本髪の女が世界中で一等醜い女だということは貴方にもきお分りになるでしょう)
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
私はつくづく、祭、祭に縛られる印度インド民族が厭になり、と云って、遠い祖先の収穫をいのる声がふりもぎろうとしてもどうしても離れないのです。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
これを琉球では「ビンガタ」と読み、あの印度インドの地名「ベンガル」から転化したものと云われる。古くはそこから染料が渡来したものと見える。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
同様な構図の壁画が印度インドアジャンタ洞窟内にもあり、それとの比較が普通に行われ、以前にはその移植であるかのような説をなす者さえあったが
美の日本的源泉 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
「あなたを印度インドからお呼びしてわざざわざ参った甲斐もなく探検は失敗に終りました。あなたに対してもお気の毒で済まないことに思っています」
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この雑然とした街角の奥に婆羅門ばらもんの寺院がそびえている。しかし、釈尊降誕祭のこの日の道路は、支那兵の劒銃に遮断されて印度インド人は通れなかった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
だが、日本人が印度インドの詩人に払ふ敬意の半分でも、自国の詩人に捧げる事を知つてゐたなら、日本はもつと幸福な国になつてゐられたに相違ない。
印度インドの何とかいう王子のお城の中で仰っしゃったように、私たちの生活におもてそむけるに違いありません。……ああどうにかならないでしょうか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝六時睡む。蚊帳かやはづさせ雨戸あけさせて新聞を見る。玉利博士の西洋梨の話待ち兼ねて読む。印度インド仙人談完結す。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
印度インド、ペルシャ、東ローマあたりの品物まで網羅され、その立派さは、世界に比を見ないと云つてもよいくらゐだ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
帰りの海路では印度インド洋を全速力で航進する汽船の甲板かんぱんから身を躍らせて、船尾に垂らしたロープにつかまりながら海水浴を楽しむのを常としたのみか
印度インド更紗さらさとか、ペルシャの壁掛かべかけとか号するものが、ちょっとが抜けているところに価値があるごとく、この花毯もこせつかないところにおもむきがある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから私は、鏡に映ってゐる海の中のやうな、青いへやの黒く透明なガラス戸の向ふで、赤い昔の印度インドしのばせるやうな火が燃されてゐるのを見ました。
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
印度インド人は、宝石を天体になぞらえたり、人間の運命に配したり、いろいろの伝説を持って居るが、中でも一番面白いのは、宝石と人間の肉体との関係だ。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
支那しな宝玉ほうぎょくや、印度インド更紗さらさや、交趾コーチものや、その南海なんかいそこかられたさんごなどでかざられていました。
北海の白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたかも春の丘に腰をおろして雲雀をききながら、恋人をしのぶように遠い印度インドの聖者を偲んでいるかのようだ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
東堂が質に入れたのは、銅仏一躯いっく六方印ろくほういん一顆いっかとであった。銅仏は印度インドで鋳造した薬師如来やくしにょらいで、戴曼公たいまんこうの遺品である。六方印は六面に彫刻した遊印ゆういんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
中国では、漢の武帝の頃から伽羅は用ひられ、印度インド、エジプト、アラビヤでは古くから使つてゐたやうである。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
哲学と宗教と最も能く一致したのは印度インドの哲学、宗教である。印度の哲学、宗教では知即善で迷即悪である。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
または西印度インドへ輸出しようとまたは国内消費のためにそれを売ろうと、この自然価格で販売するであろう。
或は印度インドの聖者に扮したもの、其他種々雑多の異様な仮装姿が、燕尾服正しい人々の間に入り混っていた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
印度インド貿易を除いては、たいてい欠損であり、そのいずれも二、三パアセント以上の利潤は与えなかった
天竺てんじく、即ち印度インドでは霊鷲山りょうじゅせんいぬいかたにあり、支那では天台山の乾の方、日本ではこの比叡山の乾、即ち当山、大原来迎院を即ち魚山というのです、慈覚大師直伝じきでん
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一日も早く西洋の科学を消化して列国に拮抗きっこうしなければ、支那もまた、いたずらに老大国の自讃に酔いながら、みるみるお隣りの印度インドの運命を追うばかりであろう。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
旃陀羅とは印度インドにおける屠殺業者の事である。そして我が国では、古くこれをエタに相当するものとして認められていた。日蓮とほぼ時代を同じゅうした「塵袋」に
梵語ぼんごやパーリ語も心得て、西洋の哲学もわきまえて、西洋式の印度インド哲学に通じた大先生の一人でありましたが、チンプンカンプンで、適確なことはまるで分りません。
戦後文章論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)