動作どうさ)” の例文
こんなうたになると、自由じゆううかれるような調子ちようしが、ぴったりともりを鯨船くぢらぶねのすばやい動作どうさあらはすに適當てきとうしてゐるではありませんか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
が、兵太郎君の動作どうさをみたら、きゅうに、ここで兵太郎君とふたりきりで遊ぼう、それでも十分おもしろいという気がわいてきた。
久助君の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かれ其時そのとき服裝なりにも、動作どうさにも、思想しさうにも、こと/″\當世たうせいらしい才人さいじん面影おもかげみなぎらして、たかくび世間せけんもたげつゝ、かうとおもあたりを濶歩くわつぽした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、ばたばた近寄ちかよつて夏繪なつゑ敏樹としきしづかにさせながら、二人ふたり兩方りやうはうからいだきよせたままはち動作どうさながめつゞけてゐた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
これがフランスじんの会合であったならば、雄弁ゆうべん能弁のうべんジェスチュアその他ドラマチックの動作どうさがさだめしみごとなものであったろうと想像さる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼のした動作どうさのすべてを視たのだ。彼はそれを感じて、指環を誇りながらあらゆる女の指をけなした今の自分を、その婦人の前に恥ずかしく思った。
指と指環 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ことに能楽のうがくのしっとりと落ちついたゆるやかさのなかに、象徴的な複雑さを含んだ緊張しきった動作どうさのあるのに、むしろ驚異の感を抱かれたのでした。
苦勞のためやつれてはゐたが赤味を帶びた顏色をしてゐた。歩きつきや動作どうさは、まるで仕事をいつもどつさり抱へこんでる人のやうに、せか/\してゐた。
實際じつさい前記ぜんき大地震だいぢしんおいては機敏きびん動作どうさをなしてかへつて軒前のきさき壓死あつししたものがおほく、おくれながら小屋組こやぐみした安全あんぜんかれたものは屋根やねやぶつてたすかつたといふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それでもおほきな建物たてもの燒盡せうじんするには時間じかんえうした。あひだ村落むらもの手當てあた次第しだい家財かざいつてれを安全あんぜん地位ちゐうつした。てんおい白晝はくちう動作どうさ敏活びんくわつ容易よういであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
男の動作どうさはすばやかった。しかしおかみさんは、その目玉めだまがぬけ落ちて、ぽかりと二つのふかい穴があいているような男の顔に気づいていた。が、なにくわぬ顔でつっ立っていた。
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
玉太郎はじっと伯爵の動作どうさを、それとなく注意していた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これに反し、人心とは道心のそのせいうしなったところで、我田引水がでんいんすい的に勝手しだいの理屈りくつを案ずる心理動作どうさで、自己の感情によりて万事を判断する心である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
何故なら彼の立て得る如何なる物音も——彼のなし得る如何なる動作どうさも最早彼女を目醒す心配はなかつたから。彼は自分の戀人が快く眠つてゐると思つてゐた。
まつたくわきらないやうなはち動作どうさへん嚴肅げんしゆくにさへえた。そして、またたきもせずに見詰みつめてゐるうちに、をつとはその一しんさになに嫉妬しつとたやうなものをかんじた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その級友きふいう動作どうさべつ自分じぶんちがつたところもないやうなのをて、かれます/\馬鹿々々ばか/\しいおこした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
春吉君は、いつも水藻みずものような石太郎が、こんなにはっきり、ちくしょうっという日本語を使ったこともふしぎだったし、こんなにすばしこい動作どうさができるということも不可解な気がした。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
われ/\の崇敬すうけいする偉人いじんでも、大地震だいぢしんとなるとわれわすれてされるのであるから、二階建にかいだて三階建さんがいだてとう階下かいか平家建ひらやだて屋内おくないにゐたひとすのは、もつともな動作どうさかんがへなければなるまい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それで、彼女が私を放免するまで、スキャチャード先生の動作どうさに觀察をつゞけることが出來なかつた。
それを梅子はひやゝかな挨拶と思つたにちがひない。其ひやゝかな言葉が、梅子の平生の思ひ切つた動作どうさうらに、何処どこにか引つかゝつてゐて、とう/\此手紙になつたのだらうと代助は判断した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しかしながら、それがありふれた小地震しようぢしんだと判斷はんだんされたならば、泰然自若たいぜんじじやくとしてゐるのも一法いつぽうであらうけれども、これはあまりに消極的しようきよくてき動作どうさであつて、著者ちよしや地震國ぢしんこく小國民しようこくみんむかつて希望きぼうするところでない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)