仕掛しか)” の例文
段々だん/″\れて來るに從ツて、お房は周三に種々な話を仕掛しかけるやうになツた。而ると其のこゑがまた、周三の心に淡いもやをかけた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そして自分の好きなそのぴかぴかした赤いものにひかされて、そこへ落ちようとしかけましたが、仕掛しかけがしてあることを思い出しました。
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
こないだっから仕掛しかけて居たものが「つまずい」て仕舞ったのでその事を思うとまゆが一人手にって気がイライラして来る。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
これはてっきり綾子夫人が毒を仕掛しかけたレモナーデを飲ませたせいであると思い、忽ち夫人に飛びかかって壁際に押しつけはしたものの、其の時
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わしこさへものとおもひながら、不気味ぶきみがつて、なにひと仕掛しかけてく、おとりのやうに間違まちがへての。谿河たにがはながいかだはしからすまつてもるだよ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
性質からいうと、Kは私よりも無口な男でした。私も多弁な方ではなかったのです。しかし私は歩きながら、できるだけ話を彼に仕掛しかけてみました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
るほど世界は鬼ばかりでない、れまで外国政府の仕振しぶりを見れば、日本の弱身に付込み日本人の不文ふぶん殺伐なるに乗じて無理難題を仕掛しかけて真実こまって居たが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
かれは、このてつぎんとからできた、一筋ひとすじせんをオルガンのなか仕掛しかけました。すると、このオルガンは、だれがきいても、それは、愉快ゆかいたのであります。
楽器の生命 (新字新仮名) / 小川未明(著)
……面白いだろう、明日の午後二時頃には、もういちどその男が、店へ来ることに仕掛しかけたのだから……
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かんたんな仕掛しかけをかんがえ出した者があって、それがあきない物などを売りあるくのに、かるいとくらべるとひじょうに便利なもので、利用する者が多かったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一萬三千人いちまんさんぜんにんくびねたりとばるゝ、にもおそるべき斬頭刄ギラチンかたち髣髴ほうふつたる、八個はつこ鋭利えいりなる自轉伐木鉞じてんばつもくふとの仕掛しかけにて、行道ゆくてふさがる巨木きよぼくみきよりたほ
車室しゃしつうちはさのみ不潔ふけつ人間にんげんばかりではなかったが、ミハイル、アウエリヤヌイチはすぐ人々ひとびと懇意こんいになってたれにでもはなし仕掛しかけ、腰掛こしかけから腰掛こしかけまわあるいて、大声おおごえ
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
田崎は万一逃げられると残念だから、穴の口元へ罠か其れでなくば火薬を仕掛しかけろ。ところが、鳶の清五郎が、組んで居た腕をほどいて、かしげる首と共に、難題を持出した。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
私は彼女が私の話に気をとられてその男の方へはあんまり注意しないようにと仕掛しかけたのだ。しかし彼女は私の言うことには何んだか気がなさそうにこたえるだけであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
おおきなさくらへみんな百ぐらいずつの電燈でんとうがついていた。それに赤や青のや池にはかきつばたの形した電燈でんとう仕掛しかけものそれにみなとの船の灯や電車の火花じつにうつくしかった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
外国のひげづらどもが大砲をはなたうが地雷火を仕掛しかけうが、びくとも致さぬほどの城壁に致したき心願しんがん有之、しかも生を助けてこの心願を成就じょうじゅせしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
前後左右ぜんごさゆうからその品物しなものることの出來できるのはじつ便利べんり仕掛しかけではありませんか。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いぶかしみあの三味線には仕掛しかけがしてあるのではないかなどとつぶやいたと云う。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
満洲の重要な橋梁きょうりょうの東橋脚きょうきゃくから西橋脚の方へ向け、この赤外線を通し、西の方に光電管をとりつけ、光電管から出る電気で電鈴でんれいの鳴る仕掛しかけをおさえておく。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
というわけは、雷の神は空を鳴りはためきながら、どこに落ちてやろうかと見下みおろしているうちに、長者の庭の木に仕掛しかけがしてあるのを気づいてしまったのです。
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
学校の生徒は八百人もあるのだから、体操の教師が隊伍たいごを整えて、一組一組の間を少しずつ明けて、それへ職員が一人か二人ふたりずつ監督かんとくとして割り仕掛しかけである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いずれ要所ようしょ要所には、石扉せきひてたり岩石がんせき組木くみきんで、ふだんは通れぬ仕掛しかけになっているだろう。それをおまえたちのつちでいけるところまでりぬいていくのだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いよいよ翌日よくじつのことでした。にいさんは、むしをかごのなかれて、うぐいすが、それをべにまると、うえからふたのかぶさるような仕掛しかけにして、これをつばきのしたきました。
子うぐいすと母うぐいす (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのみきったよくみがかれた青ぞらで、まっ白なけむりがパッとたち、それから黄いろな長いけむりがうねうね下って来ました。それはたしかに、日本でやる下りりゅう仕掛しかけ花火です。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
乃公おれは生涯、人にむかっ此方こっちから腕力を仕掛しかけたようなことはなかったに、今夜は気に済まぬ事をしたとおもって、何だか坊主が戒律でもやぶったような心地こころもちがして、今に忘れることが出来ません。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
車室しやしつうちはさのみ不潔ふけつ人間計にんげんばかりではなかつたが、ミハイル、アウエリヤヌヰチはすぐ人々ひと/″\懇意こんいになつてたれにでもはなし仕掛しかけ、腰掛こしかけから腰掛こしかけまはあるいて、大聲おほごゑで、這麼不都合こんなふつがふきはま汽車きしやいとか
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「何かご用ですか」と、母が仕掛しかけた用をそのままにしておいて病室へ来ると、父はただ母の顔を見詰めるだけで何もいわない事があった。そうかと思うと、まるで懸け離れた話をした。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
東の遠くの海の方では、空の仕掛しかけをはずしたような、ちいさなカタッという音が聞え、いつかまっしろな鏡に変ってしまったお日さまのめんを、なにかちいさなものがどんどんよこ切って行くようです。
水仙月の四日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なに、危ないことはない。仕掛しかけがしてあるのだから」
雷神の珠 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
それもごく仕掛しかけの下手なわなです。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)