また別段に不憫がるというのでもなく、万事を心得て、あたりまえに附合っていられるほど、お雪は素直な気質を持ち合わせていました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして庄造は、今考へても、いゝことをした、いゝ気味だつたと思ふばかりで、不憫と云ふ感じは少しも起らないのであつた。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
罪と罰 (新字新仮名) / フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(著)
幼くして母を失った不憫な子じゃ、この子の母は産後の体が思わしくなく、間もなく逝いたのじゃが、死ぬ前に
現代語訳 平家物語:11 第十一巻 (新字新仮名) / 作者不詳(著)
銭形平次捕物控:078 十手の道 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
こんなに若くてこんな死にかたをする! 彼らは私を不憫に思ってくれてるようだった。それほど彼らは私の枕頭で親切をつくしてくれた。なに、好奇心からだ。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
源氏物語:52 東屋 (新字新仮名) / 紫式部(著)
富之助は自身の姉を不憫に思つた。何にも知らない故に自分に害意を有してゐる人の爲めに、あつたらの骨折をする。さう思ふと自分の男らしくないことが腹立しくなつた。
顎十郎捕物帳:08 氷献上 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
無籍者とは生れていて生れていないことなんだよ。だから学校なんかへ行けないんだよ。行っても人に馬鹿にされるんだよ。それをわしが不憫と思って籍を入れてやったんだよ。
何が私をこうさせたか:――獄中手記―― (新字新仮名) / 金子ふみ子(著)