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一入
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ひとしお
ふりがな文庫
“
一入
(
ひとしお
)” の例文
凄
(
すさ
)
まじい
相好
(
そうごう
)
ですが、美しさは
一入
(
ひとしお
)
で、鉛色に変った
喉
(
のど
)
から胸へ、紫の斑点のあるのは、平次が幾度も見ている、「
石見銀山鼠取
(
いわみぎんざんねずみと
)
り」
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
室は
綺麗
(
きれい
)
に掃除されたり。床の間の掛物、
花瓶
(
かびん
)
の
挿花
(
さしばな
)
、置物の工合なんど高雅に見えて
一入
(
ひとしお
)
の趣きあるは書生上りの中川が
嗜
(
たしなみ
)
に
非
(
あら
)
ず。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
夫の親として
一入
(
ひとしお
)
にかしずきつかえ、幼いときに手塩にかかった子供が、こんどは親を手塩にかけるので、人は生まれるから死ぬまで
親子の愛の完成
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
現場の空は、飛行機で警戒せられていたし、海面は護衛の水上艦艇にて、海中は潜水艦が五隻も繰出されて
一入
(
ひとしお
)
、警戒は厳重であった。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
実際ピローグそのものも
美味
(
うま
)
かったが、殊に老婆を相手に、すったもんだの一芝居うった挙句なので、
一入
(
ひとしお
)
美味しく思われたのである。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
原稿が間もなく手許に戻って来て、章句が適当に取捨されて、体裁の整えられたのを見た時には、
一入
(
ひとしお
)
故人の労を
偲
(
しの
)
ばざるを得なかった。
「古琉球」改版に際して
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
自分は喰べずとも綺麗さっぱり
与
(
や
)
ってしまった方が結句気安いようで、疲れて寝る臥床の中に、その夜の夢は
一入
(
ひとしお
)
平和である。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
「ええ。」と
仇気
(
あどけ
)
なく
秘
(
かく
)
さず、打明けて
縋
(
すが
)
り着くような返事をする。梓はこの声を聞くと
一入
(
ひとしお
)
思入って、あわれにいとおしくなるのが例で。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうした町中の店先などに見る人たちの風にも、あの頃はどちらかというと、江戸時代の面影が半ば残っていて
一入
(
ひとしお
)
なつかしいものがあった。
四条通附近
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
日の照る日何枚もの板に白い紙を
貼
(
は
)
って立て掛けてある様は、農村の風情を
一入
(
ひとしお
)
美しくします。乾かすには
天日
(
てんぴ
)
と
板干
(
いたぼし
)
とに
如
(
し
)
くはありません。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
さっきまではいかにも楽しそうにいっていたその
可憐
(
かれん
)
な同じ口びるから、こんな哀れな告白を聞くと葉子は
一入
(
ひとしお
)
しんみりした心持ちになった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それは兎も角として、南海の人間はまだまだ私などにはどれ程も分っていないのだという感を
一入
(
ひとしお
)
深くしたことであった。
南島譚:03 雞
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
別荘の住人一人として老博士の急逝に涙を流さぬものはなかったが、共働者の学者達、望月少佐をはじめ憲兵隊の人々の歎きは又
一入
(
ひとしお
)
であった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして社会の不平等が
一入
(
ひとしお
)
激しくなるだろうから、社会人類のためには、却って害毒を流すことになるかも知れない。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
鳰鳥
(
におどり
)
は窓から野山を眺め、この頃では
一入
(
ひとしお
)
物の憐れをしみじみ心に感じながら、誰に云うともなく云うのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
向うでは
此方
(
こっち
)
の顔丈を覚えていて呉れたのだ。そう思うと、美奈子は兄妹に対して
一入
(
ひとしお
)
なつかしい心が
湧
(
わ
)
いて来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
皇后の御病を縁として信仰の一切がこのみ仏に念じこめられたのだと申してもいいのではなかろうか。更に皇后の御生涯をしのぶとき
一入
(
ひとしお
)
この感は深い。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
且
(
か
)
つ今夕は内輪の会合にして他に
憚
(
はばか
)
る所もあらざれば、過ぎし昔の物語も吾々には
自
(
おのず
)
から
一入
(
ひとしお
)
の興味あるべし。
〔気品の泉源、智徳の模範〕
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
倉子の美くしきは生れ附の容貌に在りとは云え衣類の為に
一入
(
ひとしお
)
引立たる者にして色も其黒きに反映して益々白し余は全く感心し
暫
(
しば
)
し
見惚
(
みと
)
るゝのみなりしが
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
今更ならねど、若き者の世を去るは
一入
(
ひとしお
)
悲しきが常なり。
殊
(
こと
)
に姉の児とはいいながら、七歳の頃よりわが
手許
(
てもと
)
にありたるものが、今やたちまちに消えてゆく。
叔父と甥と:――甲字楼日記の一節――
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
深く澱んだしづもりが
一入
(
ひとしお
)
しんと冴え返る程、高く黄色い金切声の合唱で——それは、駄夫の直ぐ
後
(
うしろ
)
から同じ坂道を登つてきた数名の少年達の悪戯であつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
斯ういう夕暮には
一入
(
ひとしお
)
良人
(
りょうじん
)
の帰宅が待たれるものである。然るに人の好い千吉君は例によって
他
(
ひと
)
の鰹節役を勤めていると見えて、ナカ/\帰って来なかった。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それを無事に過ごしたあとの長閑さもまた
一入
(
ひとしお
)
でわれわれの想像出来ないものがあるであろうと思いながら、夕刊第二頁をあけると、そこには、教育界の腐敗
初冬の日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
中でも
一入
(
ひとしお
)
の涙を誘われましたのは、細川殿の
御曹子
(
おんぞうし
)
、六郎殿のおん痛わしい御最後でございました。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
真実
(
まこと
)
あり
丈
(
たけ
)
智慧
(
ちえ
)
ありたけ
尽
(
つく
)
して御恩を報ぜんとするに
付
(
つけ
)
て慕わしさも
一入
(
ひとしお
)
まさり、心という者一つ
新
(
あらた
)
に
添
(
そう
)
たる
様
(
よう
)
に、
今迄
(
いままで
)
は
関
(
かま
)
わざりし
形容
(
なりふり
)
、いつか繕う気になって
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
又、襟足の洗いおとした白粉が、この幼い葉子の寝姿を少年の心にも、
一入
(
ひとしお
)
可憐
(
いじら
)
しく見せていた。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
しかし妊、不妊がいかに人為のことでないかを示すようで、
一入
(
ひとしお
)
、哀れ深い、とも言えなくない。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
それから自分は
一入
(
ひとしお
)
勇気を鼓して羊を駆って大いなる砂地を指して進んで行ったのでございます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
殊に其の男が鬼になった時の騒々しさ賑やかさは
一入
(
ひとしお
)
で、もう眼隠しの手拭いを顔へあてられる時分から、旦那も藝者も腹を抱えて手を叩き、肩をゆす振って躍り上ります。
幇間
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まことに、そのような
邪気
(
あどけ
)
なさは、里俗に云う、「
禿
(
かむろ
)
の
銭
(
ぜに
)
」「役者子供」などに当るのであろう。けれども、また工阪杉江にとると、それが
一入
(
ひとしお
)
いとし気に見えるのだった。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
そうした思し召しが
一入
(
ひとしお
)
お深いと
洩
(
も
)
れ承りまする先帝(明治天皇の御事)には、時々侍従をお使いとして学校へお
遣
(
つか
)
わしになって、生徒の作品のようなものをもお持ち帰りで
幕末維新懐古談:70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
再び見る江戸否東京であるから
一入
(
ひとしお
)
勇ましく旅行したが、その頃はまだ幕府時代のままで、五十三駅の駅々には問屋があって、それに掛合って馬や駕や人足も出してもらった。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
それに髪の濃いのが、
一入
(
ひとしお
)
女振を上げて見せて、無雑作の
櫛巻
(
くしまき
)
が、
勿体
(
もったい
)
無いのであった。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
ウワバミ元気にあてられる度も
一入
(
ひとしお
)
であったのでしょうが、しかしこの人の方は腰の痛いのがましだという結果に現われて、私のように悲しき女人足にはならなくてすんだのです。
獄中への手紙:09 一九四二年(昭和十七年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そうした時の
翌
(
あく
)
る日は、体がだるくて気分が重くて、おまけに頭痛さえもするのであった。漠然とした不安がしょっちゅう私に襲いかかって来た。暗い生活が
一入
(
ひとしお
)
暗く感じられた。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
代地に名うての
待合
(
まちあい
)
朝倉
(
あさくら
)
の戸口を開けて、つと入り来るは四十近いでつぷり太つた男、白の
縞上布
(
しまじょうふ
)
の
帷子
(
かたびら
)
の
襟
(
えり
)
寛
(
くつろ
)
げて、
寄道
(
よりみち
)
したお蔭にこの悪い道を歩かせられしため暑さも
一入
(
ひとしお
)
なり
そめちがへ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
恰度十一時で、教会堂の鐘の響のような時計の音が
一入
(
ひとしお
)
効果を添えたことであろう。
遺書に就て
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
その
明
(
あ
)
くる日は、大空は
拭
(
ぬぐ
)
うたように晴れ渡って、朝日影が麓の家々の白壁に落ちる、熱さは
一入
(
ひとしお
)
加わって、蜩の声は汗をしぼるがように、野や、森や、並木や、雑木林に聞かれた。
森の妖姫
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
味噌田楽にすれば
一入
(
ひとしお
)
のことである。焼き枯して煮びたしもいいが、釣場の河原に
榾火
(
ほたび
)
を焚いて釣ったばかりの山女魚を、熊笹の串にさし、素焼を生醤油で食べれば堪らないのである。
早春の山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
濃い
闇黒
(
やみ
)
が街を
一彩
(
ひといろ
)
に
刷
(
は
)
き潰して、
晴夜
(
はれ
)
とともに
一入
(
ひとしお
)
の寒気、降るようにとまでは往かなくとも、星屑が銀砂子を撒き散らしたよう、蒼白い光が漂ってはいるが地上へは届かないから
釘抜藤吉捕物覚書:09 怨霊首人形
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
獣
(
けもの
)
にさえ
屠所
(
としょ
)
のあゆみと云う
諺
(
ことわざ
)
がある。
参禅
(
さんぜん
)
の
衲子
(
のうし
)
に限った現象とは認められぬ。応用は才人小野さんの上にも
利
(
き
)
く。小野さんは常から世の中に気兼をし過ぎる。今日は
一入
(
ひとしお
)
変である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
人の命の
脆
(
もろ
)
さ
儚
(
はかな
)
さが、今更のように胸に迫ってきて、哀切
一入
(
ひとしお
)
深きものがある。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それを思えば家にいて温かいこたつに当っている方が数等楽な理であるが、行けないとなると山想う心は
一入
(
ひとしお
)
、切ないものがある。何故こうも山が想われるかと、ふと己が心に問うて見る。
山想う心
(新字新仮名)
/
松濤明
(著)
それなり世間は
一入
(
ひとしお
)
ひっそり盛夏の炎暑に静まり返った
或
(
ある
)
日の暮近くである。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
明日の朝はいくつ花が咲くと楽しい期待を持ち、翌朝になつて先づ朝顔棚に眼をやり、濃淡色とりどりの大輪が朝露を一ぱいに含んで咲き揃つてゐる清々しさに私達は
一入
(
ひとしお
)
早暁の涼味を覚える。
秋の七草に添へて
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
が、それだけに、そう音無しいだけに、いざとなると
一入
(
ひとしお
)
不憫が加わる。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
おおかた私の
生命
(
いのち
)
が、もう残りすくなになっているせいで御座いましょう……とそう思いますと貴方様のお顔が
一入
(
ひとしお
)
おなつかしく、又は悲しく思い出されまして胸が一パイになるので御座います。
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ソノウチニ日ガ入ッタ故、諸方ヘ提灯ガトボルシ、折柄桜時故ニ風景モ
一入
(
ひとしお
)
ヨク、段々ト揚屋ノ太夫ガ道中スルカラ、二階ヨリ見セタラ、虎ノ云ウニハ、誠ニ別世界ダトテ、余念無ク見テ居タカラ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
この
煌々
(
こうこう
)
たる天に、火星の輝き方は昨夜よりも
一入
(
ひとしお
)
を加えた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
殊に朝の眼覚めには、それが
一入
(
ひとしお
)
淋しく感じられた。
上海された男
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
入
常用漢字
小1
部首:⼊
2画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥