“ひとしお”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
一入89.2%
一層7.2%
一汐1.8%
一塩0.9%
一増0.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
室は綺麗きれいに掃除されたり。床の間の掛物、花瓶かびん挿花さしばな、置物の工合なんど高雅に見えて一入ひとしおの趣きあるは書生上りの中川がたしなみあらず。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
扱帯しごき一層ひとしおしゃらどけして、つまもいとどしく崩れるのを、ものうげに持て扱いつつ、せわしく肩で呼吸いきをしたが
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寝返りを打てば、袖のあおりにふっと払われて、やがて次の間と隔ての、襖の際に籠った気勢けはいもと花片はなびらに香が戻って、匂は一処に集ったか、薫が一汐ひとしお高くなった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女はその時偶然口にのぼった一塩ひとしおにした小鰺こあじの焼いたのを美味うまいと云ってしきりにめた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もう一つは僕が母と同じように一塩ひとしお小鰺こあじを好いていたからでもある。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
... それで私が不動様を一心に念ずると其怨霊がだん/\きえなくなります。それにね、』と、母は一増ひとしお声を潜め『このごろは其怨霊が信造に取ついたらしいよ。』
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
僕は土蔵くらの石段に腰かけていつもごと茫然ぼんやりと庭のおもてながめて居ますと、夕日が斜に庭のこんで、さなきだに静かな庭が、一増ひとしお粛然ひっそりして、凝然じっとして
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)