“いっそう”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:イッソウ
語句割合
一層40.0%
一艘32.4%
一掃9.5%
一双4.8%
逸走2.9%
一叢1.9%
一槍1.9%
一簇1.9%
一匝1.0%
一噌1.0%
一左右1.0%
一爽1.0%
一相1.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
いや、むしろ窮民よりも鋭い神経を持っている彼は一層いっそうの苦痛をなめなければならぬ。窮民は、——必ずしも窮民と言わずともい。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一艘いっそうつないであって、船首の方が明いていて、友之助が手招ぎをするから、お村はヤレ嬉しと桟橋さんばしから船首の方へズーッと這入はいると
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それまではたれにもおどんでいた一抹いちまつ危惧きぐだったものも、恩怨おんえんすべて、尊氏のことばで、すかっと、一掃いっそうされた感だった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある時は一弁いちべんの花に化し、あるときは一双いっそうちょうに化し、あるはウォーヅウォースのごとく、一団の水仙に化して、心を沢風たくふううち撩乱りょうらんせしむる事もあろうが
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
燃えさかる数艘の巨火きょかへ、さらにさんざん矢や小銃をうち浴びせて、九鬼船隊はすばやくたん方面へ逸走いっそうした。——毛利方の水軍は、してやられたりといきどおって
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空気透徹すきとおりたれば、残るくまなくあざやかに見ゆるこの群の真中まなかに、馬車一輛いちりょうめさせて、年若き貴婦人いくたりか乗りたれば、さまざまのきぬの色相映じて、花一叢いっそう、にしき一団、目もあやに
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
まがものの神尾主膳であった折助の権六を一槍いっそうもとに床柱へ縫いつけた時、主膳の同僚木村は怒り心頭より発して、刀を抜き放って竜之助に斬ってかかったが、もろくもその刀を奪い取られて
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
五竜岳の崔嵬さいかいに続いて鹿島槍ヶ岳の峰頭には、白毛の如き一簇いっそうの雲がたむろしている。祖父岳から岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳にかけて尾根は余程低くなる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
雪解の水にされて沈澱した砂は、粒が美しく揃って、並の火山礫などとは、容易に区別が出来る。また富士山の「御中道めぐり」と称して、山腹の五、六合目の間を一匝いっそうする道がある。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「まあ、そんなもんじゃな。だが、一噌いっそうでなし千野流ちのりゅうでなし……どなたに師事つかれたの」
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
江戸一左右いっそう次第、急速御買米手付金渡させられ、その儀命ぜられ候はば、屹度きっと閉密に相働き申すべき人物に御座候。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
遊び好きなる事に於て村の悪太郎あくたろう等に劣るまじい彼は、畑を流るゝ濁水だくすいの音颯々さっさつとして松風の如く心耳しんじ一爽いっそうの快を先ず感じて、しり高々とからげ、下駄ばきでざぶ/\渡って見たりして
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ちょうど「空」といい「不」というも、それが一相いっそうではなく無相むそうを指すのと同じ意味である。ものの理解にはかかる「不」の基礎がなければならぬ。それ以上に深い根柢こんていはないからである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)