一掃いっそう)” の例文
何者か、性急せっかちに彼の実行をせき立てるのが感じられました。機会が到来したという考えが、彼の雑念を立所に一掃いっそうして了いました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それまではたれにもおどんでいた一抹いちまつ危惧きぐだったものも、恩怨おんえんすべて、尊氏のことばで、すかっと、一掃いっそうされた感だった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この放送は、これまでの矛盾にみちたいろいろの報道にはっきりした終止符しゅうしふをうち、一部の塾生の頭にまだいくらか残っていた義軍の観念を一掃いっそうするに役だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
赤羽主任は、それをチラと見るや、たちまちにして脳裡にわだかまっていた疑問を一掃いっそうし得ることが出来たのだ。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれどもです、貴族と富豪と僧侶とは確実にこの地面の上から、この……地面の上から一掃いっそうされ……
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ここの細君は今はもう暗雲を一掃いっそうされてしまって、そこは女だ、ただもう喜びと安心とを心配の代りに得て、大風たいふういた後の心持で、主客の間の茶盆ちゃぼんの位置をちょっと直しながら、軽くかしらを下げて
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
出兵を確実にさせる為には、彼等の内部にある異分子の一掃いっそうは、むしろ、急がすべきであるとすら考えたのであった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よしッ! この元気でもって、帝都市民の生活をおびやかすあらゆる悪漢どもを一掃いっそうしてやろう」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてまたたに十人の的が、地平線から一掃いっそうされてしまった。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一掃いっそうしたと思ったのに、遠方の大掾国香などという末端吏まったんりから、おもしろくもない厄介者を添えぶみして向けてよこし、舌打ちをもらしたことではあったが、平良持の子というので
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山科やましなにいたこう師泰もろやすの一陣さえ、ひとたまりなく一掃いっそうされてしまい、三井寺の崩れの中へ、さらに敗走兵を大きく加えて、ごった返しに、三条口までの坂道を、黒い流れが、逃げおめいて行った。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またすでに、敗残の賊軍などただ一掃いっそうのみとしていたかもわかる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)