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𤏋
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ぱつ
もの
優しく
肩が
動くと、
其の
蝋の
火が、
件の
繪襖の
穴を
覘く……
其の
火が、
洋燈の
心の
中へ、
𤏋と
入つて、
一つに
成つたやうだつた。
と
眞紅へ、ほんのりと
霞をかけて、
新しい
火の
𤏋と
移る、
棟瓦が
夕舂日を
噛んだ
状なる
瓦斯暖爐の
前へ、
長椅子を
斜に、ト
裳を
床。
で、
袂から
卷莨を
取つて、
燐寸を
摺つた。
口の
先に
𤏋と
燃えた
火で
勢付いて、
故と
煙を
深く
吸つて、
石炭臭いのを
浚つて
吹出す。
鋭き
山颪が
颯と
来ると、
舞下る
雲に
交つて、
漂ふ
如く
菫の
薫が
𤏋としたが、
拭ひ
去つて、つゝと
消えると、
電が
空を
切つた。
双の
玉の
乳房にも、
糸一条の
綾も
残さず、
小脇に
抱くや、
此の
彫刻家の
半身は、
霞のまゝに
山椿の
炎が
𤏋と
搦んだ
風情。
御神輿の
柱の、
飾の
珊瑚が
𤏋と
咲き、
銀の
鈴が
鳴据つて、
鳳凰の
翼、
鷄のとさかが、
颯と
汗ばむと、
彼方此方に
揉む
状は
團扇の
風、
手の
波に、ゆら/\と
乘つて
搖れ
といふが
疾いか、ケンドンに
投り
出した、
卷煙草の
火は、ツツツと
橢圓形に
長く
中空に
流星の
如き
尾を
引いたが、
𤏋と
火花が
散つて、
蒼くして
黒き
水の
上へ
亂れて
落ちた。
何の
事ぢや、おほゝ、
成程、
燒けとる。
𤏋と
火の
上つた
處ぢやが、
燒原に
立つとる
土藏ぢやて。あのまゝ
駈𢌞つても
近まはりに
最う
燒けるものは
何にもないての。おほゝ。
安心々々。
……
瞳は
水晶を
張つたやうで、
薄煙の
室を
透して
透通るばかり、
月も
射添ふ、と
思ふと、
紫も、
萌黄も、
袖の
色が
𤏋と
冴えて、
姿の
其處此處、
燃立つ
緋は、
炎の
亂るゝやうであつた。
土橋を
斜に
烏森、と
町もおどろ/\しく、やがて
新橋驛へ
着いて、づぶ/\と
其の
濡幌を
疊んで
出で、
𤏋と
明く
成つた
處は、
暴風雨の
船に
燈明臺、
人影黒く、すた/\と
疎らに
往來ふ。