“𤏋(ぱつ)” の例文
もの優(やさ)しく肩(かた)が動(うご)くと、其(そ)の蝋(らふ)の火(ひ)が、件(くだん)の繪襖(ゑぶすま)の穴(あな)を覘(のぞ)く……其(そ)の火(ひ)が、洋燈(ランプ)の心(しん)の中(なか)へ、𤏋(ぱつ)と入(はひ)つて、一(ひと)つに成(な)つたやうだつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
と眞紅(しんく)へ、ほんのりと霞(かすみ)をかけて、新(あたら)しい火(ひ)の𤏋(ぱつ)と移(うつ)る、棟瓦(むねがはら)が夕舂日(ゆふづくひ)を噛(か)んだ状(さま)なる瓦斯暖爐(がすだんろ)の前(まへ)へ、長椅子(ながいす)を斜(なゝめ)に、ト裳(もすそ)を床(ゆか)。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
で、袂(たもと)から卷莨(まきたばこ)を取(と)つて、燐寸(マツチ)を摺(す)つた。口(くち)の先(さき)に𤏋(ぱつ)と燃(も)えた火(ひ)で勢付(いきほひづ)いて、故(わざ)と煙(けむり)を深(ふか)く吸(す)つて、石炭(せきたん)臭(くさ)いのを浚(さら)つて吹出(ふきだ)す。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
鋭(するど)き山颪(やまおろし)が颯(さ)と来(く)ると、舞下(まひさが)る雲(くも)に交(まじ)つて、漂(たゞよ)ふ如(ごと)く菫(すみれ)の薫(かほり)が𤏋(ぱつ)としたが、拭(ぬぐ)ひ去(さ)つて、つゝと消(き)えると、電(いなづま)が空(くう)を切(き)つた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
双(さう)の玉(たま)の乳房(ちぶさ)にも、糸一条(いとひとすぢ)の綾(あや)も残(のこ)さず、小脇(こわき)に抱(いだ)くや、此(こ)の彫刻家(てうこくか)の半身(はんしん)は、霞(かすみ)のまゝに山椿(やまつばき)の炎(ほのほ)が𤏋(ぱつ)と搦(から)んだ風情(ふぜい)。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
御神輿(おみこし)の柱(はしら)の、飾(かざり)の珊瑚(さんご)が𤏋(ぱつ)と咲(さ)き、銀(ぎん)の鈴(すゞ)が鳴据(なりすわ)つて、鳳凰(ほうわう)の翼(つばさ)、鷄(にはとり)のとさかが、颯(さつ)と汗(あせ)ばむと、彼方(あつち)此方(こつち)に揉(も)む状(さま)は團扇(うちは)の風(かぜ)、手(て)の波(なみ)に、ゆら/\と乘(の)つて搖(ゆ)れ
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
といふが疾(はや)いか、ケンドンに投(はふ)り出(だ)した、卷煙草(まきたばこ)の火(ひ)は、ツツツと橢圓形(だゑんけい)に長(なが)く中空(なかぞら)に流星(りうせい)の如(ごと)き尾(を)を引(ひ)いたが、𤏋(ぱつ)と火花(ひばな)が散(ち)つて、蒼(あを)くして黒(くろ)き水(みづ)の上(うへ)へ亂(みだ)れて落(お)ちた。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何(なん)の事(こと)ぢや、おほゝ、成程(なるほど)、燒(や)けとる。𤏋(ぱつ)と火(ひ)の上(あが)つた處(ところ)ぢやが、燒原(やけはら)に立(た)つとる土藏(どざう)ぢやて。あのまゝ駈𢌞(かけまは)つても近(ちか)まはりに最(も)う燒(や)けるものは何(なん)にもないての。おほゝ。安心々々(あんしん/\)。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
……瞳(ひとみ)は水晶(すゐしやう)を張(は)つたやうで、薄煙(うすけむり)の室(しつ)を透(とほ)して透通(すきとほ)るばかり、月(つき)も射添(さしそ)ふ、と思(おも)ふと、紫(むらさき)も、萌黄(もえぎ)も、袖(そで)の色(いろ)が𤏋(ぱつ)と冴(さ)えて、姿(すがた)の其處此處(そここゝ)、燃立(もえた)つ緋(ひ)は、炎(ほのほ)の亂(みだ)るゝやうであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
土橋(どばし)を斜(なゝめ)に烏森(からすもり)、と町(まち)もおどろ/\しく、やがて新橋驛(しんばしえき)へ着(つ)いて、づぶ/\と其(そ)の濡幌(ぬれほろ)を疊(たゝ)んで出(い)で、𤏋(ぱつ)と明(あかる)く成(な)つた處(ところ)は、暴風雨(あらし)の船(ふね)に燈明臺(とうみやうだい)、人影(ひとかげ)黒(くろ)く、すた/\と疎(まば)らに往來(ゆきか)ふ。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)