香爐かうろ)” の例文
新字:香炉
立床の間には三幅對ぷくついの掛物香爐かうろを臺にいたゞいてあり不完全物ながら結構けつこうづくめの品のみなりうちゆかしき違棚ちがひだなには小さ口の花生はないけへ山茶花を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いざり寄つて、死骸の所に据ゑた香爐かうろに、五六本の線香を立て、鼻をつまらせて、ひれ伏すやうに拜んだのは、二十五、六のこれは好い男でした
『あんなことつて、親分おやぶんトボケてるが、面白おもしろ土瓶どびんたやうなものだの、香爐かうろたやうなものだの、澤山たくさん掘出ほりだしてつてるだよ』とをしへてれた。
はるかに歩行あるいてまたもんあり。畫棟彫梁ぐわとうてうりやうにじごとし。さてなかはひると、ひとツ。くもとびらつきひらく。室内しつないに、おほき釣鐘つりがねごと香爐かうろすわつて、かすみごとかういた。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ありしは何時いつの七せき、なにとちかひて比翼ひよくとり片羽かたはをうらみ、無常むじようかぜ連理れんりゑだいきどほりつ、此處こヽ閑窓かんさうのうち机上きじやう香爐かうろえぬけふりのぬしはとへば、こたへはぽろり襦袢じゆばんそでつゆきて
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その趣味しゆみしぶれいげると、三上みかみがその著名ちよめいなる東京市内出沒行脚とうきやうしないしゆつぼつあんぎやをやつて、二十日はつかかへつてないと時雨しぐれさんは、薄暗うすぐら部屋へやなか端座たんざして、たゞ一人ひとり双手もろて香爐かうろさゝげて、かういてゐる。
聖像せいざう代診だいしんみづかつて此所こゝけたもので、毎日曜日まいにちえうびかれ命令めいれいで、だれ患者くわんじや一人ひとりが、つて、こゑげて、祈祷文きたうぶんむ、れからかれ自身じしんで、各病室かくびやうしつを、香爐かうろげてりながらまはる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
宛も乳香にうかう炭火すみびとに充ちたる金の香爐かうろの重たげに
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
『こころ』を、いで、こは香爐かうろ、君に捧ぐ、——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
この中には、青銅の香爐かうろもあり、蝋銀らふぎんの置物もあり、名作のつば目貫めぬきは言ふまでもなく、ひどいのになると、眞物ほんものの小判や小粒さへも交つて居る有樣。
信仰しんかうなし己の菩提所ぼだいしよ牛込うしごめの宗伯寺なりしが終に一大檀那だいだんなとなり寄進の品も多く又雜司ざふし鬼子母神きしぼじん金杉かなすぎ毘沙門天びしやもんてん池上いけがみ祖師堂そしだうなどの寶前はうぜん龍越りうこしと云ふ大形の香爐かうろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
香爐かうろししやうながせる、——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
形ばかりの臺の上に乘せた香爐かうろに線香を立てて、平次は膝行寄ゐざりよるやうに、死骸の上に掛けた布を取りました。
きし瑪瑙の香爐かうろ
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
出し治助どん去月の幾日頃いくかごろだの治助中市と思ひました桃林寺たうりんじ門前の佐印さじるしか三間町の虎公とらこういづれ此兩人の中だと思はれますといへば十兵衞成程々々なるほど/\かうつと十日は治助どんは燒物やきもの獅子しし香爐かうろ新渡しんとさらが五枚松竹梅三幅對ふくつゐ掛物かけもの火入ひいれ一個ひとつ八寸菊蒔繪きくまきゑ重箱ぢうばこ無銘むめいこしらへ付脇差二尺五寸瓢箪へうたんすかしのつば目貫めぬきりようの丸は頭つのふち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何が大變なんだ、——大名高家では、青磁せいじ香爐かうろ一つと、人間の命と釣替に考へて居るやうだが、こちとらの眼から見れば、猫の子のお椀と大した違ひがあるものか。
平次は經机の上の香爐かうろに一まつの香をひねつて、暫らく拜んでから、靜かに娘の死骸に近づきました。
蝉丸せみまる香爐かうろは此家から出た樣子はありません。無くなつてまだ半日も經たないんだから」
次の間付きの八疊、それは申分のないぜいを盡した寢間でした。絹行燈を部屋の隅に、青磁せいじ香爐かうろが、名香の餘薫よくんを殘して、ギヤーマンの水呑が、くゝり枕の側の盆に載せてあります。
その隱居が、何にか——燭臺か香爐かうろか知らないが、そんなものを借りに母屋おもやへ入つて行つたとする、フト奧の部屋で、憎い養子の玄龍が、酒に醉つて柱に凭れて居眠りしてゐるのを
砧青磁きぬたせいじ香爐かうろ聖茶碗ひじりちやわんなどと共に差出し、御調べ濟の上、元の御手箱に返したのが、二た月ほど前、鍵は私の兄、側用人桑原伊織が預かりますが、何かの都合で殿へ差上げた時、ほんの半日だけ
外ぢやない、さる大々名から、新年の大香合だいかうあはせに使ふ爲に拜借した蝉丸せみまる香爐かうろ、至つて小さいものだが、これが稀代の名器で、翡翠ひすゐのやうな美しい青磁せいじだ。それが、昨夜私の家の奧座敷から紛失した。
香爐かうろ一つ殘したあとは、皆な私の家の物置に預けて置きましたよ