あまり)” の例文
新字:
かれさへあらずば無事ぶじなるべきにと、各々おの/\わがいのちをしあまりに、そのほつするにいたるまで、怨恨うらみ骨髓こつずゐてつして、法華僧ほつけそうにくへり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若し衆我をして一和せしめむとせば、われに衆我を容れてあまりある宇宙大の理想なかるべからず。われ未だこれに當るに遑あらずと。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
かれ與吉よきち無意識むいしき告口つげぐちからひどかなしく果敢はかなくなつてあとひとりいた。憤怒ふんぬじやうもやすのにはかれあまりつかれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
陳ば去年七月炮戰はうせん騷動さうどう御座候由、扨々大騷ぎの事に御座候半、想像仕に尚あまり有る事に御座候。御祖母樣如何ばかり之御驚嘆と、是而已のみ案勞あんらう仕候儀に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
一體私達の感情から云へば、七尺去つて師の影を踏まずと云つたやうな儒教的道徳は、先生をあまりに冷たくいかめしくする inhumane な道徳であつた。
猫又先生 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
後方うしろに流れずとゞまれるものはそのあまりをもて顏に鼻を造り、またほどよく唇を厚くせり 一二七—一二九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
其中そのうちひめ目覺めざめしゆゑ、てんせるわざ是非ぜひおよばず、ともかくてござれ、とすゝむるうちに、ちかづく人聲ひとごゑわれらおどろ逃出にげいでましたが、絶望ぜつばうあまりにや、ひめつゞいてまゐりもせず
あまりの事と學生は振返ツた……其のはなつらへ、風をあふツて、ドアーがパタンとしまる……響は高く其處らへ響渡ツた。學生は唇を噛みこぶしを握ツて口惜しがツたが爲方しかたが無い。悄々しを/\と仲間の後を追ツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自然の力あまりありて人間のたくみを加へざる處なれば、草といふ草、木といふ木、おのがじし生ひ榮ゆるが中に、蘆薈、無花果いちじゆく、色紅なる「ピユレトルム、インヂクム」などの枝葉えだはさしかはしたる
あまり 琴に造り
して來た樣な物だとつぶやき/\本町へ歸る途中とちうも長三郎思ひなやみし娘がこと言はぬもつらし言も又恥しゝとは懷中ふところそだちの大家の息子むすこ世間せけん見ず胸に餘て立歸るもあまりはやしと思ふより如何したことと兩親が問ば先刻せんこく音羽まで參りましたが腹痛ふくつうにて何分なにぶん心地こゝちあしければ王子へ行ずに立歸りしと答へて欝々うつ/\部屋に入り夜具やぐ引擔ひきかつぎ打臥うちふししが目先に殘るは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むし地味ぢみ移氣うつりぎこゝろ際限さいげんもなくひとつをふには年齡ねんれいあまり彼等かれら冷靜れいせい方向はうかうかたむかしめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
幼君えうくんきつとならせたまひて、「けつしてづることあひならず一生いつしやう其中そのなかにてくらすべし」とおもてたゞしてのたまふ氣色けしきたはむれともおもはれねば、何某なにがしあまりのことにことばでず、かほいろさへあをざめたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
身體からだ容子ようすへんつたことを心付こゝろづいたからである。十ねんあまりたなかつたはら與吉よきちとまつてからくせいたものとえてまた姙娠にんしんしたのである。おしな勘次かんじもそれには當惑たうわくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)