題目だいもく)” の例文
さてはや、念佛ねんぶつ題目だいもく大聲おほごゑ鯨波ときこゑげてうなつてたが、やがてそれくやうによわつてしまふ。取亂とりみださぬもの一人ひとりもない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
○「南無妙法蓮華経なむめうほふれんげきやう々々々々々々々なむめうほふれんげきやう」と一心いつしんにお題目だいもくをとなへてゐるといかだはだん/\くづれて自分の乗つてゐる一本になりました。
これも従来はほとんど骨董的こっとうてき題目だいもくとして閑却され、たまたまこれを研究する好事家こうずかは多くの学者の嘲笑ちょうしょうを買ったくらいである。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
夫婦ふうふ毎夜まいよおな火鉢ひばち兩側りやうがはつて、食後しよくご時間じかんぐらゐはなしをした。はなし題目だいもく彼等かれら生活せいくわつ状態じやうたい相應さうおうした程度ていどのものであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
取扱わるる題目だいもくは、ことごと高尚こうしょう純潔じゅんけつなものばかり、そして他人に示すよりも、私自身の指南車しなんしゃとしてよいものばかりであった。
其人そのひといま新聞しんぶん題目だいもくとなつて世人よのひといぶか旅路たびぢこゝろざしたといふ、その行先ゆくさき何地いづこであらう、その目的もくてきなんであらう。
しかしその市のくる処、すなわち町ずれはかならず抹殺してはならぬ。僕が考えには武蔵野の詩趣を描くにはかならずこの町はずれを一の題目だいもくとせねばならぬと思う。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かみしろくなった、のしょぼしょぼとしたじいさんの乞食こじきは、いつまでもそこにって題目だいもくとなえていましたが、おばあさんは、まったくねむってしまったようにをふさいで
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それでお題目だいもくを書いて、手にかけた者の死骸の側へ置いたのか、大した心掛だな、親方」
御身おんみ過去くわこ遠々とほ/″\より女の身であつたが、このをとこ(入道)が娑婆しやばでの最後で、御前おまへには善智識ぜんちしきだから、思ひだす度ごとに法華經の題目だいもくをとなへまゐらせよ。と、二首の歌も書かれてある。
各々おの/\その題目だいもくについてほか先生方せんせいがたはなされることになつてをりますから、わたし第一だいゝち美術びじゆつ歴史れきし考古こうこかんする博物館はくぶつかんうち、たゞ考古學こうこがくかんする博物館はくぶつかんのおはなしをこれからいたしませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「いい題目だいもくです。皆さんどうです?」と私が申しました。
手術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
題目だいもくをこそ——
如是 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
懇意こんいわか青年せいねん心易立こゝろやすだてはな遠慮ゑんりよのない題目だいもくは、是迄これまで二人ふたりあひだ何度なんどとなく交換かうくわんされたにもかゝはらず、安井やすゐはこゝへて、息詰いきづまつたごとくにえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あとでくと、夜汽車よぎしやが、箱根はこね隧道トンネルくゞつて鐵橋てつけうわた刻限こくげんには、うち留守るすをした女中ぢよちうが、女主人をんなしゆじんのためにお題目だいもくとなへると約束やくそくだつたのださうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしこゝよりほかのがれるところはない鉄砲てつぱうち殺されるかそれとも助かるか一かばちか○「南無妙法蓮華経なむめうほふれんげきやう」とお題目だいもくをとなへながら流れをのぞんで飛び込みました。
やがて、さようちまえって、太鼓たいこをたたいてあわれなこえ題目だいもくとなえたのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
よ』といふ警語けいごいまむかしかはりなく、あたかちからとがいまむかしかはりのないやうに、全校ぜんかう題目だいもくとなり、目標もくへうとなり、唱歌しやうかとなりるのを御覽ごらんになりましよう。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
派手を競い、華美をつくし、見ているのも足労くたびれるほど沢山、目印を各講中ごとに押立てくるが、そのどれもがかわらないのは、気狂いかと思うほど無中で太鼓をたたいてお題目だいもくをど鳴ることだった。
はなし題目だいもくで、やゝともすると小六ころくくち宿やどりたがるものは、かれ未來みらいうしたらからうと心配しんぱいであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一聲ひとこゑたからかに題目だいもくとなへもへず、法華僧ほつけそうをどらしてうみとうぜり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
南無妙法蓮華経なむめうほふれんげきやう妙法蓮華経めうほふれんげきやう。とお題目だいもくとなへながら雪の中にひました。