音信おとづれ)” の例文
わすれはせまじ餘りなさけなき仕方しかたなりと利兵衞をうらみけるが吉三郎はもとより孝心かうしんふかければ母をなぐさめ利兵衞殿斯の如く約束やくそくへん音信おとづれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本気ほんき沙汰さたではない、にあるまじき呵責かしやく苦痛くつうけてる、女房にようばう音信おとづれいて、くわつつてちがつたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
畫工は猶當時の言を記し居りて、我にその約をまざりしを謝したり。君に別れて羅馬に歸りしに、故郷の音信おとづれありて、直ちに北國へ旅立つことゝなりぬ。
なにゆゑに間は四年の音信おとづれを絶ち、又何の故にさしもおもひに忘れざる旧友と相見てべつを為さざりしか。彼が今の身の上を知らば、この疑問はおのづから解釈せらるべし。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼女かのぢよたのしんであとのこつた。さうして新生涯しんしやうがいゆめみながらかれからのたよりをくらした。一にち、一にちつてく。けれどもそののちかれからはなん端書はがきぽん音信おとづれもなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
せめては師の君訪ひ来ませと待てど、立つ名は此処にのみならで、憚りあればにや音信おとづれもなく、とえし中に千秋を重ねて、万代よろづよいわふ新玉あらたまの、歳たちかへつて七日の日きたりき
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
余所よその国なら、極寒の時稀に見る寒気だが、この土地ではこれが最初の春の音信おとづれである。
家を治めて居りました処が、夭死わかじにを致しましたけれども、田舎は堅いから娘を嫁付かしづけますと盆暮にはきっと参りますが、此方こちらでは女房が死んでからは少しも音信おとづれをしない、けれども
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
見知らぬくに音信おとづれの様に、北上川の水瀬みなせの音が、そのシツトリとした空気を顫はせる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
春は再び花園にめぐつて、紅色の花の香りはやはらかく煙つたのであるが、戦場からは何の音信おとづれもない。宮殿の中は冬のやうに静かに、憂ひのみのうちに幾夜/\を更して居るのです。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
音信おとづれも、幾月を、絶入りてこそ歎けども、これに濡れたる袖ぞとは、良人つまの御眼に掛けられぬ、御手紙は、生きての記念かたみ、死ぬまでは、何とも知らぬ御秘密のありと思へばなほ更に
移民学園 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
音信おとづれも無し、影も無し。たゞ水先みづさき小判鮫こばんざめ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ために、音信おとづれおこたりました。ゆめところがきをするやうですから。……とはへ、ひとつは、し、不思議ふしぎいろ右左みぎひだりひとはゞかつたのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昌次郎方へつかはさず養育やういくなしたるが此者商賣しやうばいの都合により江戸へ出其後たえ音信おとづれもなさざりしにさすが古郷こきやうのなつかしくや有りけんはからず此度越後寶田村へ立戻たちもどり住居をなせしにより此を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其所そこへ別荘をたてると申して出ました切り手紙を一通送ってよこさず、まるで音信おとづれがございませんから、悋気ではございませんが、万一ひょっとほか増花ますはながあってわたくしあきが来て見捨てられやしないかと
音信おとづれも無し、影も無し。たゞ水先みづさき小判鮫こばんざめ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
音信おとづれして、恩人おんじんれいをいたすのに仔細しさいはないはず雖然けれども下世話げせわにさへひます。慈悲じひすれば、なんとかする。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひと半鉦ばんとほあかり、それゆめえて、あかつきしもきかさぬる灰色はひいろくもあたらしき障子しやうじあつす。ひとり南天なんてん色鳥いろどり音信おとづれを、まどるゝよ、とれば、ちら/\と薄雪うすゆき淡雪あはゆき
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こゝはおさつしをねがひます。——心易こゝろやすくは禮手紙れいてがみ、たゞ音信おとづれさへ出來できますまい。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……すなはかぜこゑなみおとながれひゞき故郷こきやうおもひ、先祖代々せんぞだい/\おもひ、たゞ女房にようばうしのぶべき夜半よは音信おとづれさへ、まどのささんざ、松風まつかぜ濱松はままつぎ、豐橋とよはしすや、ときやゝるにしたがつて、横雲よこぐもそら一文字いちもんじ
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
工學士こうがくしから音信おとづれして、あれは、乳香にうかうであらうとふ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)