電光いなづま)” の例文
汝は汝の信ずるごとく今地上にあるにあらず、げに己が處を出でゝする電光いなづまはやしといへども汝のこれに歸るに及ばじ。 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その鋭利えいりなる三尖衝角さんせんしやうかくそらきらめ電光いなづまごと賊船ぞくせん右舷うげん霹靂萬雷へきれきばんらいひゞきあり、極惡無道ごくあくむだう海蛇丸かいだまるつひ水煙すいゑんげて海底かいていぼつつた。
うよりはや天狗てんぐさんは電光いなづまのように道場どうじょうからしたとおももなく、たちまちするすると庭前ていぜんそびえている、一ぽんすぎ大木たいぼくあがりました。
それはやつぱり白金プラチナの時計だつた。それを見た刹那、不安ないやな連想が、電光いなづまのやうに、信一郎の心を走せ過ぎた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
と言つて、丑松は制止おしとゞめるやうにした。其時、文平も丑松の方を振返つて見た。二人の目は電光いなづまのやうに出逢であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
此時ゆくりなく自分の眼前に、その沈黙した意味深い一座の光景が電光いなづまの如くあらはれて消えた。続いて夜の光景、暁の光景、ことに、それと聞いて飛んで来た娘つ子の驚愕おどろき
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
ひとやゝもすれば、その最期いまはこゝろかるゝ! それを看護人かんごにんぬるまへ電光いなづまんでゐる。
キクッタは電光いなづまのやうにそれを拾ひ上げると、二三歩前へ進み出で、穂尖ほさきを大熊の胸につきつけ、石突きを地面に当てがひ、柄をしつかり握つたまゝ、そこへうづくまりました。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
けてられじとするあつかひも他人たにんなんかんじもなくちがつて見合みあはすまなこ電光いなづま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五六歩歩くと、智恵子の柔かな手に、男の手の甲が、の葉が落ちてさはる程軽く触つた。寒いとも温かいともつかぬ、電光いなづまの様な感じが智恵子の脳を掠めて、体が自らかたくなつた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「全く恐ろしいことでした……」滑稽作家はその男の頭を見ながら、お愛相あいさうのやうに一つうなづいてみせた。「ところが、その一刹那に私の頭にある考へが電光いなづまのやうにひらめきました。 ...
身を翻へして退くはずみに足を突込む道具箱、ぐざと踏み貫く五寸釘、思はず転ぶを得たりやと笠にかゝつて清吉が振り冠つたる釿の刃先に夕日の光のきらりと宿つて空に知られぬ電光いなづま
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
頭の上へきらめくはがねがあっても、電光いなづまの如く斬込んで来た時は何うしてこれを受けるという事は知っているだろう、仏説ぶっせつにも利剣りけん頭面ずめんるゝ時如何いかんという事があって其の時が大切の事じゃ
かしは突裂つんざく雷火いかづち前駆さきばし電光いなづま
魔女 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
早手風はやて、飛ぶ電光いなづま
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さてしばらく𢌞めぐりて後、このもの電光いなづまのごとく恐ろしく下り來りて我をとらへ、火にいたるまで昇るに似たりき 二八—三〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かぜごとく、電光いなづまごときたりし海蛇丸かいだまるは、また、かぜごとく、電光いなづまごとく、黒暗々こくあん/\たる波間はかんかくれてしまつた。
いやはなしませぬはなされませぬおまへさまころしては旦那だんなさまへみませぬといふはまさしく勘藏かんざうか、とおたかことばをはらぬうちやみにきらめく白刄しらは電光いなづまアツと一聲ひとこゑ一刹那いつせつなはかなくれぬ連理れんり片枝かたえは。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おゝ、これが電光いなづまはれようか?……おゝ、戀人こひびとよ! 我妻わがつまよ! そなたいきみつつくした死神しにがみも、そなた艶麗あてやかさにはたいでか、その蒼白あをじろ旗影はたかげはなうて旗章はたじるしあざやこのくちびるこの兩頬りゃうほゝ
すると、その一刹那すてきないゝ考へが電光いなづまのやうに頭のうちを走つた。
「それが、彼奴きやつが実行するのなら、無論見付けない事は無いだすが、彼奴の手下にあまが一人居やして、そいつが馬鹿に敏捷すばしつこくつて、丸で電光いなづまか何ぞのやうで、とても村の者の手には乗らねえだ」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
かしは突裂つんざく雷火いかづち前駆さきばし電光いなづま
早手風はやて、飛ぶ電光いなづま
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
苦しみをかろめんため、をりふし罪人つみびとのひとりその背をあらはし、またこれをかくすこと電光いなづまよりも早かりき 二二—二四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けれどその影の敏捷びんせふなる、とても人間業にんげんわざとは思はれぬばかりに、走寄る自分のそでの下をすり抜けて、電光いなづまの如く傍の森の中に身をかくして了つた。跡には石油をそゝいだ材料に火が移つてさかんに燃え出した。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
わが語りゐたる間、かの火の生くるふところのうちにとあるひらめき、俄にかつ屡〻ふるひ、そのさま電光いなづまの如くなりき 七九—八一
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
俄にひらめ電光いなづまが、物見る諸〻の靈を亂し、いと強き物の與ふる作用はたらきをも目より奪ふにいたるごとく 四六—四八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
たとひジョーヴェ終りの日にわが撃たれたる鋭き電光いなづまを怒れる彼にとらせし鍛工かぢを疲らせ 五二—五四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
き雲もうすき雲も電光いなづまも、またかの世に屡〻處を變ふるタウマンテのむすめも現はれず 四九—五一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
このとき忽ち一の光かの大なる林の四方に流れ、我をして電光いなづまなるかと疑はしめき 一六—一八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
三伏の大なるしもとの下に蜥蜴籬とかげまがきへ、路を越ゆれば電光いなづまとみゆることあり 七九—八一
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)