間違まちがい)” の例文
初め赤羽主任は、村山巡査の手帖を受け取った時、感電被害者の井神陽吉の身元を一見するのが目的であったことに間違まちがいはなかった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何所どこへまいるにもいつもみこと御随伴おともをした橘姫たちばなひめがそうもうされることでございますから、よもやこれに間違まちがいはあるまいとぞんじます。
サア気をもんで私に武者振付むしゃぶりつくように腹を立てたが、私もあとになって余り洒落しゃれに念が入過いりすぎたと思て心配した。随分間違まちがいの生じやすい話だから。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
くわえると、大概は山へ飛ぶから間違まちがいはないのだが、怪我けがに屋根へ落すと、草葺くさぶきが多いから過失あやまちをしでかすことがある。樹島は心得て吹消した。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
物を知らないと色々の疑いが起りますし、とんだ間違まちがいも出来ます。鶏が死なないから人間も大丈夫だろうなんぞとそんなものを食べたら大変です。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この間不意と銭湯の帰道で出会であわし、いやとも云われず家へ上げたのが間違まちがいのもとで、その後はぬしある身だからと断ってもずうずうしくやって来るので
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(探偵小説……小説としても……事実としても……何だか間違まちがいダラケのような危なっかしい気がしますなあ。ホントの犯人は別に在りそうな気が……)
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其反対の年には少ないのであろうと思われる、少くとも此小窓裏の狭い雪渓では、そう考えても間違まちがいはなさそうだ。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「そいつあ行って見なけりゃ、ちょいと分らねえ。何なら電話でいてみるんだ。だが大体たいてい間違まちがいはないよ。空は日本中どこへ行ったって続いてるんだから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
以上の如く考えて来ると、花柳病の予防及び絶滅と結婚とを一つに組み合わして問題とされたことが、失礼ながら平塚さんたちの間違まちがいでなかったかと思います。
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
なにかの多分たぶん間違まちがいです。』とアンドレイ、エヒミチはかたちぢめてう。『間違まちがい相違そういないです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
三十円のものは口銭こうせんや経費に二十円って五十円で買うつもりでいれば何の間違まちがいはないものを、五十円のものを三十円で買う気になっていては世の中がスラリとは行かない。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
マリヤンは先ず筆記されたパラオ古譚詩のノートを見て、其処に書かれたパラオ語の間違まちがいを直す。それから、訳しつつあるH氏の側にいて、H氏の時々の質問に答えるのである。
細面ほそおもての色白で、パッチリした眼、少し高い鼻、引締ひきしまった唇、これだけを見て居ると、優れた芸術品にあるような魅力を感じさせますが、うした造化の間違まちがいかこの一番立派な顔へ
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もしもかかる事実じじつを以て外国人に云々しかじかくわだてありなど認むるものもあらんには大なる間違まちがいにして、干渉かんしょうの危険のごとき、いやしくも時の事情をるものの何人なんぴとも認めざりしところなり。
たたかいの神さまかもしれない。……しかし。なんだか日本人を憎みすぎている。そして白人をえらく考えすぎているのじゃないかしら? それは間違まちがいだ。東洋人だって偉いんだ。仏陀ぶっだも東洋人だ。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
とっさん、なんで叔父さんを鉄砲でったかなア、江戸にいる叔母さんだのおえいという従弟いとこが聞いたら、どんなに怨むか知れねえから、し叔母さんが来たら、多助が間違まちがいて打ったと云うから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
然し支配人は兎に角宝石に間違まちがいのなかったのを喜んで、騒ぎ立てる社員を一先ず制して、自分の部屋に帰り、念の為再び金庫を開いて調べてみると、支配人が大急ぎで金庫に投げ入れた宝石の一つ
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
この馬鹿馬鹿しい間違まちがいが、実は両品川対面のいとぐちとなったのだ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「なにか間違まちがいでもおきたのじゃないかな」
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「むむ、必然きっとだ。間違まちがいはない。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この御方おかたは中津の御家中ごかちゅう、中村何様の若旦那で、自分は始終そのお屋敷に出入でいりして決して間違まちがいなき御方おんかただから厚く頼むと鹿爪しかつめらしき手紙の文句で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
、三、五……幾度いくたびくりかえしてもこれに間違まちがいのないことがわかったときに、わたくしはすべてをみことけました。
無暗むやみな者が採りますと、どんな間違まちがいになろうも知れませんから、昔から禁札きんさつが打ってあるのでございましょう。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そういう段取だんどりになれば、私は間違まちがいなく、闇の迷路めいろをうまくり通ってきたことになるのである。
あるい公書こうしょごときものに詐欺さぎ同様どうよう間違まちがいでもしはせぬか、他人たにんぜにでもくしたりしはせぬか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
慣れぬ人に料理法を教ゆるは思い掛けぬ処にて間違まちがいを生じやすし。お登和嬢もその意をりょう
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
さぞ辛い事だろうと、気の毒な心持になったのが、そもそも間違まちがいのはじまりです。人は見かけによらないという事がありますが、この女ほど見かけによらないのもまずすくなう御在ます。
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この「筋の通った蒐集研究をする」これは最も賢明で本当の仕方であるから、相応に月謝さえ払えば立派に眼も明き味も解って来て、間違まちがいなく、最も無難に清娯せいごを得る訳だから論はない。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私達は今度の旅行の困難をおもんばかって、なまじ案内者などは雇わず、前もって大山村の宇治長次郎に、気の合った者を一人連れて、二十五日の朝九時迄に間違まちがいなく魚津の停車場に来ていてくれと
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
気楽ならいけれども。与次郎のは気楽なのぢやない。気がうつるので——例へばなかを流れてゐる小川の様なものと思つてゐれば間違まちがいはない。あさくてせまい。しかしみづ丈は始終変つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
孝「へい/\間違まちがいでござります」
「それは間違まちがいだ‼ 誤解だ‼」
謎の頸飾事件 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
馬鹿にしちゃかん、と言って、間違まちがい原因もとを尋ねたら、何も朋友ともだち引張ひっぱって来たという訳じゃあなかった。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
帆村探偵は、理屈のうえではたしかにそうなるから間違まちがいないと信じながらも、あまりに事の意外なのに、夢ではないかと、いくたびも考えなおさずにはいられませんでした。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
で、竜宮界りゅうぐうかいのみを竜神りゅうじん世界せかいおもうのはおおきな間違まちがいで、竜神りゅうじんはたら世界せかいは、かぎりもなく存在そんざいするのである。が、しかし神々かみがみにとりてなによりもうれしいのは矢張やはりあの竜宮界りゅうぐうかいである。
そこでバターが一面に塗れましたら両方の端からグルグルと二寸位の幅にまいて行って真中まんなかでピタリと合せてたたみます。ちょうど帯を双方から畳んで行く心持でなさると間違まちがいがありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
間違まちがいなく所要の沢に下ることは言うくして行われないことであろう。
八ヶ峰の断裂 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
故意こいならず犯罪はんざいすことがいともわれぬ、ひと讒言ざんげん裁判さいばん間違まちがいなどはありべからざることだとはわれぬ、そもそも裁判さいばん間違まちがいは、今日こんにち裁判さいばん状態じょうたいにては、もっともありべきことなので
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
要するに世間から云えば、僕らのうちほど静かにととのった家庭は滅多めったに見当らなかったのである。あのくらいひとの悪口を露骨にいう松本の叔父でさえ、今だにそう認めて間違まちがいないものと信じ切っている。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はてな、間違まちがいではなかろうが、……何しろ、きみは、ちっともその方に引っかかりはないのでしたね。」
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とっちめたつもりでいるのだろうが、それはたいへんな間違まちがいだぞ。あっはっはっ
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
金作が「旦那方に間違まちがいがあっては済まない、少し待ったぞ」
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
のちに、何もも打明けてわたくしに言いなさった時の話では、しかしまたその間違まちがいえんになって、今度出会った時は、何んとなく両方で挨拶あいさつでもするようになりはせまいか。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「飛んだ事を! 夫人おくさん、廉平がここにるです。して、して、そんな間違まちがいはさせんですよ。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああさっきのお百姓がものの間違まちがいでも故道ふるみちには蛇がこうといってくれたら、地獄じごくへ落ちても来なかったにと照りつけられて、なみだが流れた、南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、今でもぞっとする。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
場合によれば、表向き、治兵衛をここへ呼んで逢わせるもかろう。あのめしいた人、あの、いたいけな、鬼も見れば角がなごむ。——心配はあるまいものの、また間違まちがいがないとも限らぬ。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(いや、中で間違まちがいがあるとならんので。)
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)