)” の例文
と入る。たもとすがって、にえの鳥の乱れ姿や、羽掻はがいいためた袖を悩んで、ねぐらのような戸をくぐると、跣足はだしで下りて、小使、カタリと後を
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さや、夜鳥も啼かず、藪かげのとなりの寺もしんしんと雨戸したれ。時として川瀬のおとの浪のと響き添ふのみ。それもただ遠し、気疎けうとし。
今にも窒息ちっそくせんず思いなるを、警官は容赦ようしゃなく窃盗せっとう同様に待遇あしらいつつ、この内に這入はいれとばかり妾を真暗闇まっくらやみの室内に突き入れて、またかんぬきし固めたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
通りみちは、どこを見ても、皆窓の戸をして寝ているかと思ううちばかりで、北風に白くさらされた路のそこここに、てついたような子守こもりや子供の影が、ちらほら見えた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
用心口ようじんぐちしてお寢間ねまもどたまひしが再度ふたゝびつてお菓子戸棚くわしとだなのびすけつとのびんとりいだし、お鼻紙はながみうへけておしひねり、雪灯ぼんぼり片手かたてゑんいづれば天井てんぜうねづみがた/\とれて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れば四囲はかたむるに鉄を以てし、二また鉄をそそぎありて開くべくも無し。帝これを見ておおいなげきたまい、今はとて火を大内たいだいに放たせたもう。皇后は火に赴きて死したまいぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この入りつる格子はまださねば、ひま見ゆるによりて西ざまに見通し給へば、このきはにたてたる屏風も、端のかたおし畳まれたるに、まぎるべき几帳きちやうなども、暑ければにや打掛けて
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新橋停車場しんばしステエションの大時計は四時をすぐること二分、東海道行の列車は既に客車のとびらして、機関車にけふりふかせつつ、三十余輛よりようつらねて蜿蜒えんえんとしてよこたはりたるが、真承まうけの秋の日影に夕栄ゆふばえして
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
肩に手を掛けて押すように石段をあがって、書斎に引き返した甲野さんは、無言のまま、扉に似たる仏蘭西窓フランスまどを左右からどたりと立て切った。上下うえした栓釘ボールトかたのごとくす。次に入口の戸に向う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一家いっか総出そうでの時は、大戸をして、ぬれ縁の柱に郵便箱をぶら下げ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
影深き胸の黄昏たそがれ密室みつしつの戸はしもせめ
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
人はおそれて戸をせど
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
このさや、夜鳥も啼かず、藪かげのとなりの寺もしんしんと雨戸したれ。時として川瀬の音の浪の音と響き添ふのみ。それもただ遠し、気疎し。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
白糸がたたずみたるは、その裏口の枝折しおり門の前なるが、いかにして忘れたりけむ、戸をさでありければ、渠がもたるるとともに戸はおのずから内にひらきて
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婢は格子をし固めて内にりけるが、しばらくは音も為ざりしに、にはかに物語る如き、あるひののしる如き声のしきりに聞ゆるよりあるじの知らで帰来かへりきて、とらへられたるにはあらずや、と台所の小窓より差覗さしのぞけば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
周囲にさくを結いたれどそれも低く、錠はあれどさず。注連しめ引結いたる。青くつややかなるまろき石のおおいなる下よりあふるるをの口に受けて木の柄杓ひしゃくを添えあり。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さき鐘掛けてすがしきこのはひり戸はしにけりそよぐ木の影
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
往来どめ提灯ちょうちんはもう消したが、一筋、両側の家の戸をした、さみしい町の真中まんなかに、六道の辻のみちしるべに、鬼が植えた鉄棒かなぼうのごとくしるしの残った、縁日果てた番町どおり
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さき鐘掛けてすがしきこのはひり戸はしにけりそよぐ木の影
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と引入れて、門の戸はたとしければ、得右衛門はおどおどしながら、八蔵を見て吃驚びっくり仰天
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
父われに冴ゆる月夜を戸はしてふみよみにけり女童めわらはこの子
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
北も南も吹荒ふきすさんで、戸障子をあおつ、柱をゆすぶる、屋根を鳴らす、物干棹ものほしざお刎飛はねとばす——荒磯あらいそや、奥山家、都会離れた国々では、もっとも熊を射た、鯨を突いた、たたりの吹雪に戸をして
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内蒙古春おぼろならず早やい寝て駱駝が宿は月にしたり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
落葉を透かして、山懐やまふところの小高い処に、まだ戸をさないあかりが見えた。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このとぼそ晝もしつつ寒けさよ日は光りつつ一木ひとき白樺
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
……その女の案内で、つい向う路地を入ると、どこも吹附けるから、戸をしたが、怪しげな行燈あんどんあおって見える、ごたごたした両側の長屋の中に、溝板どぶいたの広い、格子戸造りで、この一軒だけ二階屋。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このとぼそ昼もしつつ寒けさよ日は光りつつ一木ひとき白樺
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
山国はすでに雪待つそとがまへ簾垂りたり戸ごとしつつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだ寒く硝子の障子めてたまるほこりの黄に濁りつつ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだ寒く硝子の障子めてたまるほこりの黄に濁りつつ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ざうの色まろらかにおもひしぬれ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)