“錦絵:にしきえ” の例文
“錦絵:にしきえ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花8
永井荷風6
夏目漱石5
島崎藤村4
長谷川時雨4
“錦絵:にしきえ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史28.6%
芸術・美術 > 絵画 > 日本画2.0%
文学 > 日本文学 > 小説 物語0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
近頃ちかごろ評判ひょうばん浮世絵師うきよえし鈴木晴信すずきはるのぶ錦絵にしきえをそのままのうつくしさ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その美女おふじの姿は今に鈴木春信一筆斎文調すずきはるのぶいっぴつさいぶんちょうらの錦絵にしきえに残されてある。
さて、祖母としよりの話では、古本屋は、あの錦絵にしきえを五十銭からを付け出して、しまいに七十五銭よりは出せぬと言う。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大榎の女はさながらの錦絵にしきえになって、火照ほてったようなその唇は、その晩のことばを口にするのであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかしそう云えば、私は錦絵にしきえいた御殿女中の羽織っているような華美はでな総模様の着物を宅の蔵の中で見た事がある。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
だがその芝居は、重吉の経験した戦争ではなく、その頃錦絵にしきえに描いて売り出していた「原田重吉玄武門破りの図」をそっくり演じた。
十文字の立ち腹を掻切かっきって、大蘇芳年たいそよしとしの筆のさえを見よ、描く処の錦絵にしきえのごとく
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しめやかなランプの光の下に、私は母と乳母とを相手に、暖い炬燵こたつにあたりながら絵草紙えぞうし錦絵にしきえを繰りひろげて遊ぶ。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
その一枚摺錦絵にしきえ富嶽三十六景ふがくさんじゅうろっけい諸国滝巡しょこくたきめぐり、諸国名橋奇覧しょこくめいきょうきらん
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そこにも変わり者の隠居がいて、江戸の時代から残った俳書、浮世草紙うきよぞうしから古いあずま錦絵にしきえの類を店にそろえて置いている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ルツェルンには戦争と平和の博物館というのがあって、日露戦争の部には俗悪な錦絵にしきえがたくさん陳列してあったので少しいやになりました。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
稲葉家のあるじ、お千世の姉さん、暮から煩って引いている。が、錦絵にしきえのお孝とて、人の知った、素足を伊達だておんなである。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当時とうじ鈴木春信すずきはるのぶが一枚刷まいずり錦絵にしきえから、子供達こどもたち毬唄まりうたにまではやされて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あたかも錦絵にしきえを見るようなもので、その色彩は人の眼を射るにかかわらず、その背後には何物もない。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
このあたりには今も明治時代の異国情調が漂っていて、ときによると彼自身が古い錦絵にしきえの人物であるような錯覚さっかくさえ起るのであった。
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自分の買ってもらう玩具おもちゃを喜んだり、錦絵にしきえを飽かず眺めたりする彼は、かえってそれらを買ってくれる人をうれしがらなくなった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そんな物のなかから、むしばんだ古い錦絵にしきえが出たり、妙な読本よみほんが現われたりした。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
錦絵にしきえから飛んで出たような囃子はやしの子たちの百羽の銀鳩ぎんばとが一斉に鳴くように自由に生きいきと声をそろえた ほう いや のかけ声
小品四つ (新字新仮名) / 中勘助(著)
種彦たねひこの小説『田舎源氏いなかげんじ』の挿絵さしえならびにその錦絵にしきえは共に国貞の描く所にして今日こんにちなほ世人に喜ばる。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
で、この平さんが、古本屋の店へ居直って、そして買戻かいもどしてくれた錦絵にしきえである。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし、岸本の心を引いたのは一陽斎豊国とよくにの筆とした一枚の古い錦絵にしきえであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その艶気つやけのある勇肌いさみはだがトンと国貞あたりの錦絵にしきえにありそうであった。
武者絵むしゃえ錦絵にしきえ、二枚つづき三枚つづきの絵も彼のいうがままに買ってくれた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
低い土地であったから、むかしの錦絵にしきえに見るようなわけには行かなかったかも知れない。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
めずらしい花の形、横に浮き出している精巧なローマ文字——それはよく江戸土産みやげにもらう錦絵にしきえ雪駄せったなぞの純日本のものにない美しさだ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なかにも忘れられないのは古い錦絵にしきえで、誰の筆か滝夜叉姫たきやしゃひめの一枚絵。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
いったいひとり荒岩に限らず、国見山でも逆鉾さかほこでもどこか錦絵にしきえの相撲に近い、男ぶりの人にすぐれた相撲はことごとく僕の贔屓ひいきだった。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころは、まだ写真術が幼稚だったし、新聞の号外もまだ早く出なかったから、私たちに目から教えたものは、やはり木版ずり三枚つづきの錦絵にしきえだった。
故郷の家で、お祖母様ばあさまのお部屋に、錦絵にしきえ屏風びょうぶがあった。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
当時の両国は、江戸錦絵にしきえなどに残っているように大したもので、当時今の両国公園になっている辺は西両国といって、ここに村右衛門という役者が芝居をしていた。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
古い錦絵にしきえ——芝居の絵を沢山に張った折本おりほんを、幾冊かだしてくれた。
すると小宮君が歌麿うたまろ錦絵にしきえを葉書にったのを送ってくれた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは絵はがきや錦絵にしきえの美しさではなくて、どうしても油絵の美しさである。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は日清戦争の錦絵にしきえは見ていても本物を見るのはその時が初めてであった。
三筋町界隈 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
両国の「大平だいへい」に売っている月耕げっこう年方としかた錦絵にしきえをはじめ、当時流行の石版画せきばんえの海はいずれも同じようにまっさおだった。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
翁の影太く壁に映りて動き、すすけし壁に浮かびいずるは錦絵にしきえなり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
錦絵にしきえ姉様あねさまだあよ、見ねえな、みんな引摺ってら。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
燈籠の中味は、背景も人物も何もかもが切りぬいた錦絵にしきえなのである。
文政年間葛飾北斎かつしかほくさい『富嶽三十六景』の錦絵にしきええがくや、そのうち江戸市中より富士を望み得る処の景色けいしょくおよそ十数個所を択んだ。
何も豊国とよくに国貞くにさだ錦絵にしきえばかりには限らない。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
田圃道を歩きながら、おばあさんは錦絵にしきえのような話をはじめる。
じつは東京名所という錦絵にしきえの間違いだということがわかった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その頃この広小路のすが凧売りの錦絵にしきえが出来ていたと思った。
凧の話 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
したがって、絵双紙の方が主であるから、どこの店にも一枚絵、二枚続き、または三枚続きの錦絵にしきえを始めとして、子供のおもちゃ絵や千代紙のたぐいが店一ぱいに懸けられてあった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
メニュウには、ほとん錦絵にしきええがかれています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
節子の手箱の底には二枚続きの古い錦絵にしきえも入れてあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
——人も立ち会い、抱き起こし申す縮緬ちりめんが、氷でバリバリと音がしまして、古襖ふるぶすまから錦絵にしきえがすようで、この方が、お身体からだを裂く思いがしました。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
太田道灌の「富士の高根を軒端にぞ見る」という歌は、余りに言い古されているとしても、江戸から富士を切り捨てた絵本や、錦絵にしきえや、名所図会ずえが、いまだかつて存在したであろうか。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
殊に豊国橋から見ると、その両岸に、まだ錦絵にしきえ時代の倉と家があり、一本の松が右岸の家の庭から丁度ちょうど円屋根の右手へそびえ立ちはなはだよき構図を作っているのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
彼は二年間の貯蓄の三分の二を平気でなげうって、錦絵にしきえを買い、反物たんものを買い、母やおととや、親戚の女子供を喜ばすべく、欣々然きんきんぜんとして新橋を立出った。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
平吉はまた背を向けた。お高はまた重んもりと負ぶさった。平吉は引返した。そして、蒲団ふとんの上に帰ったところで、お高の手にした書物が目の前へ来た。それは極彩色の錦絵にしきえであった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おめえの敵と、口ではいっているものの、歌麿の脳裡のうりからは、亀吉の影はうに消し飛んで、十年前に、ふとしたことから馴染なじみになったのを縁に、錦絵にしきえにまで描いて売り出した
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
この向島も全く昔のおもかげは失われて、西洋人が讃美し憧憬する広重の錦絵にしきえに見る、隅田の美しい流れも、現実には煤煙ばいえんに汚れたり、自動車のあお黄塵こうじんまみ
亡び行く江戸趣味 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
それはまるで錦絵にしきえの情緒じゃないか。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
「ナニ、同じようなもので。わしどもは江戸のは錦絵にしきえで見ましたが、あちらの方が何を申しても規模は大きいには大きいことでござりましょうが、道中の本家はやはりこの島原だそうで、見物もおびただしいことでござんすわい」
胸のおもいは火となって、上手が書いた金銀ぢらしの錦絵にしきえを、炎にかざして見るような、おもてかっと、胡粉ごふんに注いだ臙脂えんじ目許めもとに、くれないの涙を落すを見れば、またこの恋も棄てられず。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
最後の場面でおつたが取り落とした錦絵にしきえ相撲取すもうとりを見て急に昔の茂兵衛のアイデンティティーを思い出すところは、あれでちょうど大衆向きではあろうが、どうも少しわざとらしい、もう一つ突っ込んだ心理的な分析をしてほしい。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
勿論安い事は驚くべきものでした、家へ持って帰ってながめて見るになかなか味があるのです、その絵は人形を抱いた娘の肖像で、錦絵にしきえとしてはかなり末期の画風のものでありましたが、非常に簡単な手法が一種の強さを持っているのでした。
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
外のものは兎に角と致して日本一お江戸の名物と唐天竺からてんじくまで名の響いた錦絵にしきえまで御差止めに成るなぞは、折角せっかく天下太平のお祝いを申しに出て来た鳳凰のくびをしめて毛をむしり取るようなものじゃ御座いますまいか。
三月三十日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「古い穴の中へ引き込まれて、出る事が出来なくなって、ぼんやりしているうちに、紫色むらさきいろのクレオパトラが眼の前にあざやかに映って来ます。げかかった錦絵にしきえのなかから、たった一人がぱっと紫に燃えて浮き出して来ます」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほしいのは——もしか出来たら——偐紫にせむらさき源氏雛げんじびな、姿も国貞くにさだ錦絵にしきえぐらいな、花桐はなぎりを第一に、ふじかた、紫、黄昏たそがれ桂木かつらぎ、桂木は人も知った朧月夜おぼろづきよの事である。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
色は浅黒かったが、細面の顔に三日月形の眉毛がいかにも婀娜あだっぽく、一重瞼ひとえまぶたの情をふくんだ目附は、彼に錦絵にしきえの枕草紙をすぐ思い出させ、赤瀬春吉は既にこのほどから、どうにも押えきれないおせいの幻影につきまとわれ、もうだめだと観念していたのである。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
私の言うままに、良い加減にそうだと答えたものなのか私は知らないが、古い錦絵にしきえの滝夜叉姫と踊り屋台に立ったお鶴とは全く同一おんなじだったように思われて、踊り屋台を見なかったにもかかわらず二十年後の今もなお私はまざまざと美しい絵にしてそれを幻に見ることが出来る。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
何でも徳川様瓦解がかいの時分に、父様おとっさんの方は上野へへえんなすって、お前、お嬢さんが可哀かわいそうにお邸の前へ茣蓙ござを敷いて、蒔絵まきえの重箱だの、お雛様ひなさまだの、錦絵にしきえだのを売ってござった、そこへ通りかかって両方で見初めたという悪縁じゃ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おれか。おれは石屋の坂で。」と宗太は少年らしい目をかがやかしながら、「山口(隣村)から見物に来たおじさんがおもしろいことを言ったで——まるで錦絵にしきえから抜け出した人のようだったなんて——なんでも、東下あずまくだりの業平朝臣なりひらあそんだと思えば、間違いないなんて。」
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お屋敷方でも滅多めったにこんな名木めいぼくは見られますまい。」と種員も今は銜煙管くわえぎせるのまま庭の方へ眼を移したが突然思い出したように、「先生。こういう盆栽なんぞはいかがなものでしょう。当節じゃやはりひな人形や錦絵にしきえなんぞと同じように表向おもてむきには出せない品なんで御座いましょうか。」
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私は忘れません、母に連れられ、乳母うばに抱かれ、久松座ひさまつざ新富座しんとみざ千歳座ちとせざなぞの桟敷さじきで、鰻飯うなぎめし重詰じゅうづめを物珍しく食べた事、冬の日の置炬燵おきごたつで、母が買集めた彦三ひこさ田之助たのすけ錦絵にしきえを繰り広げ、過ぎ去った時代の芸術談を聞いた事。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)