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酣
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たけなわ
ふりがな文庫
“
酣
(
たけなわ
)” の例文
また宴席、酒
酣
(
たけなわ
)
なるときなどにも、上士が
拳
(
けん
)
を打ち
歌舞
(
かぶ
)
するは極て
稀
(
まれ
)
なれども、下士は
各
(
おのおの
)
隠し芸なるものを奏して
興
(
きょう
)
を
助
(
たすく
)
る者多し。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それを言えば
愚痴
(
ぐち
)
になってしまう。彼は一言もそれについてはいわなかった。ただ、宴
酣
(
たけなわ
)
にして堪えかねて立上がり、舞いかつ歌うた。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
興も
酣
(
たけなわ
)
で、べつな客と
主
(
あるじ
)
のわらい声が大どかにながれ、数寄屋の孤客にはいつ目通りを与えるのやら、気にとめているふうもなかった。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
然
(
しか
)
るに酒
酣
(
たけなわ
)
に耳熱して来ると、温鍾馗は二公子を白眼に
視
(
み
)
て、
叱咤
(
しった
)
怒号する。それから妓に琴を弾かせ、笛を吹かせて歌い出す。
魚玄機
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
縁日はいまや賑さを
酣
(
たけなわ
)
に、人のざわめき、商人の呼び声、そそる見世物小屋の鳴もので乱軍中の突貫の声に取囲まれているよう。
美少年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
花聟と花嫁は宴
酣
(
たけなわ
)
に至らずして外の室に移されてしまう。この始めの酒宴で日本のように三々九度というような
交盃
(
こうはい
)
の式はない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
紅
(
くれない
)
を
弥生
(
やよい
)
に包む昼
酣
(
たけなわ
)
なるに、春を
抽
(
ぬき
)
んずる
紫
(
むらさき
)
の濃き一点を、
天地
(
あめつち
)
の眠れるなかに、
鮮
(
あざ
)
やかに
滴
(
した
)
たらしたるがごとき女である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ところが、宴
酣
(
たけなわ
)
なるに及んで、久保田先生は、もう大分酔って居られたが、「おいおい、ボクに、カツレツとって呉れよ」と
仰有
(
おっしゃ
)
るではないか。
食べたり君よ
(新字新仮名)
/
古川緑波
(著)
酒
数行
(
すうこう
)
、
主客
(
しゅかく
)
ともに興
酣
(
たけなわ
)
となり、談論に花が咲き、元気とか
勝気
(
かちき
)
とかいさましい議論の風発せるあいだに、わが輩は退席せんとして玄関に出た。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
それから信州が尽きて美濃に入っては、気候もいよいよ春の
酣
(
たけなわ
)
なる様子となって、始めて普通の人間世界に出た気がした。
鳴雪自叙伝
(新字新仮名)
/
内藤鳴雪
(著)
後で、知ったことですが、これは中堂へ火が掛かったのであって、ちょうどその時戦争の
酣
(
たけなわ
)
な時であったのであります。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
欧洲大戦の正に
酣
(
たけなわ
)
なる頃、アメリカのイリノイス大学の先生方が寄り集まって古代ギリシアの兵法書の翻訳を始めた。
変った話
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
飾磨
(
しかま
)
郡増位山随願寺の
会式
(
えしき
)
で僧俗集まり宴
酣
(
たけなわ
)
なる時、薬師寺の
児
(
ちご
)
小弁は
手振
(
てぶり
)
に、桜木の小猿という児は詩歌で座興を助けるうち争論起り小猿打たる
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
上家をはじめ他の人達がよく注意して居れば勿論こんな馬鹿馬鹿しい
胡魔化
(
ごまか
)
しにはかからないが、すこし
戦
(
たたかい
)
が
酣
(
たけなわ
)
になって来ると、よくこれが行われる。
麻雀インチキ物語
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
日清戦争はますます
酣
(
たけなわ
)
となって『日本新聞』からは沢山の記者が既に従軍したが、なお一人を要するという時に居士は進んでこれに当ることになった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
秩父
(
ちちぶ
)
連山雄脈、武蔵アルプスが西方に高く
聳
(
そび
)
えて、その背後に夕映の空が金色にかがやいている、それから東南へ山も森も関東の平野には今ぞ秋が
酣
(
たけなわ
)
である
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
声に応じて、
種々
(
いろいろ
)
な料理が運び込まれ、酒宴は
酣
(
たけなわ
)
になる。姫は暗然と俯向いたまま、なにひとつ口にしない。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
五月七日、幸村は最後の戦場を天王寺附近と定め、城中諸将全部出でて東軍を誘致して決戦し、一隊をして正面の戦
酣
(
たけなわ
)
なる時迂回して背後を衝かしめんとした。
大阪夏之陣
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
鴉片戦争も
酣
(
たけなわ
)
となった。清廷の
譎詐
(
きっさ
)
と偽瞞とは、云う迄もなくよくないが、英国のやり口もよくないよ。
鴉片を喫む美少年
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ノブ子が日本に到着する以前から初まっておりました欧洲大戦は正に
酣
(
たけなわ
)
となっておりまして、聯合国側と
独逸
(
ドイツ
)
側と、いずれも絶体絶命のところまで押し詰め合って
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
歓楽が漸く
酣
(
たけなわ
)
になろうと言う時、不意に切支丹坂の方から、澄み切った夜の空気に響き渡って、凛々と聖なる歌と尊い祈りの声が、いとも高らかに聞えて来たのでした。
新奇談クラブ:01 第一夜 初夜を盗む
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ここに
山部
(
やまべ
)
の連
小楯
(
おだて
)
が播磨の國の長官に任命されました時に、この國の人民のシジムの家の新築祝いに參りました。そこで盛んに遊んで、酒
酣
(
たけなわ
)
な時に順次に皆舞いました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
この代金はしめて七円あまりであった。日華のいくさはようやく
酣
(
たけなわ
)
であったけれど、まだまだ物価の安い時勢であった。私はその時この瀬戸物屋の主人から渋い印象を受けた。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
興
酣
(
たけなわ
)
なる
汐時
(
しおどき
)
、まのよろしからざる処へ、田舎の
媽々
(
かかあ
)
の
肩手拭
(
かたてぬぐい
)
で、
引端折
(
ひっぱしょ
)
りの
蕎麦
(
そば
)
きり色、
草刈籠
(
くさかりかご
)
のきりだめから、へぎ盆に取って、上客からずらりと席順に配って
歩行
(
ある
)
いて
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
酒
酣
(
たけなわ
)
ニシテ詩ヲ賦シ筆ヲ下スコト縦横、大篇
立
(
たち
)
ドコロニ
就
(
な
)
ル。
駿発
(
しゅんぱつ
)
一座ヲ驚ス。子寿指シテ余ニ告ゲテ曰クコレ房州ノ
鱸子彦之
(
ろしげんし
)
ナリト。予心
窃
(
ひそか
)
ニコレヲ奇トス。乃チ
与
(
とも
)
ニ交ヲ訂ス。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
秋も
酣
(
たけなわ
)
なる十一月下旬のある夜、××楼の二階で、「怪談会」の例会が開かれた。
暴風雨の夜
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それは兎も角、無言の酒宴は、今や
酣
(
たけなわ
)
と見えました。言葉を発するものこそありませんけれど、室内はグラスの触れ合う
響
(
ひびき
)
、
衣
(
きぬ
)
ずれの音、言葉を
為
(
な
)
さぬ人声などで、異様にどよめいて来ました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
私が或る特殊な縁故を
辿
(
たど
)
りつつ、
雑司
(
ぞうし
)
ヶ
谷
(
や
)
鬼子母神
(
きしもじん
)
裏
陋屋
(
ろうおく
)
の放浪詩人
樹庵次郎蔵
(
じゅあんじろぞう
)
の間借部屋を訪れたのは、
恰
(
あたか
)
も秋は
酣
(
たけなわ
)
、鬼子母神の祭礼で、平常は真暗な境内にさまざまの見世物小屋が立ち並び
放浪作家の冒険
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
ジオンの
戦
(
たたかい
)
は
酣
(
たけなわ
)
なるに我は用なき
兵
(
つわもの
)
なれば独り内に坐して
汗馬
(
かんば
)
の東西に走るを見、
矢叫
(
やさけび
)
の声、太鼓の音をただ遠方に聞くに
過
(
すぎ
)
ず、我は世に立つの望み絶えたり、また未来に持ち行くべき善行なし
基督信徒のなぐさめ
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
遼陽の攻撃戦が
酣
(
たけなわ
)
なる時、私は雨の夕暮に
首山堡
(
しゅざんぼう
)
の麓へ向った。その途中で避難者を乗せているらしい支那人の荷車に出逢った。左右は一面に
高粱
(
こうりょう
)
の畑で
真中
(
まんなか
)
には狭い道が通じているばかりであった。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「戦今や
酣
(
たけなわ
)
さ。イヨ/\チョッカイから正々堂々の陣に入った」
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
この二三日ですっかり秋色
酣
(
たけなわ
)
になった。
日記:11 一九二五年(大正十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ああ、だが、今は今は歓楽の
酣
(
たけなわ
)
である。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
闘いは、
酣
(
たけなわ
)
となった。
越後の闘牛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
宴
酣
(
たけなわ
)
の頃私は起き上り
アイヌ神謡集
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
之を
喩
(
たと
)
えば熟眠、夢
方
(
まさ
)
に
酣
(
たけなわ
)
なるのとき、
面
(
おもて
)
にザブリと冷水を注がれたるが如く、殺風景とも苦痛とも形容の
詞
(
ことば
)
あるべからず。
人生の楽事
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
典膳が、師一刀斎についた年は、弘く天下を観ると、ちょうど、羽柴秀吉の中国軍が、いまやその攻略に、
酣
(
たけなわ
)
なる頃だった。
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「若いうちは七分五厘まで引きました。
押
(
お
)
しは存外今でもたしかです」と左の肩を
叩
(
たた
)
いて見せる。
舳
(
へさき
)
では戦争談が
酣
(
たけなわ
)
である。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
例の如く文人、
画師
(
えし
)
、力士、俳優、
幇間
(
ほうかん
)
、
芸妓
(
げいぎ
)
等の大一座で、酒
酣
(
たけなわ
)
なる
比
(
ころ
)
になった。その中に枳園、富穀、矢島
優善
(
やすよし
)
、伊沢
徳安
(
とくあん
)
などが居合せた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
季節は
酣
(
たけなわ
)
の春であった。四條の
西壬生
(
にしみぶ
)
の壬生寺では、壬生狂言があるというので、洛内では噂とりどりであった。そうして嵯峨の嵯峨念仏は、数日前に終わっていた。
血ぬられた懐刀
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
一千年前に死んだ呉青秀の悪霊と、現代に生きている正木博士の科学知識との
闘争
(
たたかい
)
は今
酣
(
たけなわ
)
なんだ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
義元の酒宴
酣
(
たけなわ
)
である頃信長の兵は田楽狭間を真下に見る太子ヶ根の丘に在った。田楽狭間は桶狭間へ通ずる一本道の他は両側共に山で囲まれて居る。こうなると義元は袋のなかの鼠である。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
烏啼天駆
(
うていてんく
)
といえば、近頃有名になった奇賊であるが、いつも彼を刑務所へ送り込もうと全身汗をかいて
奔走
(
ほんそう
)
している名探偵の
袋猫々
(
ふくろびょうびょう
)
との何時果てるともなき一騎討ちは、今もなお
酣
(
たけなわ
)
であった。
奇賊悲願:烏啼天駆シリーズ・3
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
城の他の部分で攻防戦の
酣
(
たけなわ
)
なる模様。下手は断崖につづける
望楼
(
ものみ
)
の端、一個処、わずかに石を伝わって昇降する口がある。上手の扉から金の国(支那)の商人が従者を伴れて、這うように出て来る。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
丸屋の嫁お雪を殺した下手人は、秋
酣
(
たけなわ
)
になっても見当が付きません。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
が、年々春も
酣
(
たけなわ
)
になると、おなじ姿の
陽炎
(
かげろう
)
が立つといいます。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
戦いこれから
酣
(
たけなわ
)
になる。
或良人の惨敗
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
奥の八畳の座敷に、二人の客があって、酒
酣
(
たけなわ
)
になっている。座敷は極めて殺風景に出来ていて、床の間にはいかがわしい
文晁
(
ぶんちょう
)
の
大幅
(
たいふく
)
が掛けてある。
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
と、思い、敢えてやり過しておいて、戦い
酣
(
たけなわ
)
と見るや、退路を
断
(
た
)
って、包囲をちぢめて来たものにちがいない。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
焔
(
ほのお
)
のように紅い
櫨
(
はぜ
)
紅葉、
珊瑚
(
さんご
)
のような梅もどき、雁来る頃に燃えるという血よりも美しい鶏頭花、楚々たる菊や
山茶花
(
さざんか
)
の花——庵室の庭は花咲き乱れ秋
酣
(
たけなわ
)
の眺めである。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
酣
漢検1級
部首:⾣
12画
“酣”を含む語句
酣酔
秋酣
半酣
沈酣
酣睡
酒半酣
酣燈社
酣酔楽
酣酔狼藉
酣醉
酣鍋
酣飲